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「なんとでも言ってよ。君たちに言われてボーダー辞めるくらいの生温い気持ちでやってないの、こっちは。」
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…玉狛支部のとある部屋の一角、窓の空いたそこから身を乗り出し、少女は今日も夜明けを見つめながら風を受ける。
「琴華~、おはよ。朝ご飯できたって。」「ん、おはよう迅さあん。すぐ行くね」
少し時間が経ち、街は朝を迎えた。
朝六時、迅は琴華の部屋に行き、朝食が出来たことを知らせる。扉が締まると、琴華は目を擦りながら下に降りる。
「んー、おはよ~ございます、レイジさん」「ああ、おはよう。」
下に降りると、レイジの作った美味しそうな朝食が琴華の目を奪う。そそくさと椅子に座り、ぱん、手を叩いた。
「いただきまあす!」
一口掬い、口に入れる。はふはふと熱がりながらも琴華は味わう。やはりいつも通りの美味しさだと喉を鳴らす。
「ん、おいしい!やっぱレイジさんのご飯はハズレ無しですね~?」「はは、冗談が上手いな。」
そんな他愛もない会話を交わしていると、後ろの扉が開く。顔を覗かせたのは、いつもより少し寝癖の多い小南だった。
「んうぅ~…おはよぉ琴華ぁ…」「おはよぉ こな」
小南も椅子に座り朝食を食べ始める。琴華も食べ進めていると、琴華の携帯がヴーヴー、とバイブ音を鳴らして震えた。
「ん、琴華、電話鳴ってるよ」「あれ、ほんと…誰からだろ」
応答ボタンを押して携帯を耳に当てる。
「もしも〜し、開出です…」『琴華』「、ッ……」
琴華は持っていた箸を落とす。携帯からは聞き慣れた重圧感のある声が聞こえた。なんで、どうして、それだけが琴華の頭を埋める。
「きど、さん、」『今直ぐ本部へ来い。』
「あ、あぁ〜…わたし、いま寝起きで…」『私にその手は効かん。おまえのことを何も知らないとでも思っているのか。』
ギリ、と一つ歯ぎしりをして、琴華は電話を切った。落とした箸を拾い机の上に置くと、立ち上がって服を着替えに部屋へ戻る。
「え、琴華?!あんた食べないのー、?!」「…あー、あれは城戸さんに呼び出されたね。」「もーあんのバカ…!今日せっかく一緒にいれるのにー!」「はは、仕方ないよ。 」
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ボーダー本部、上層部室の前に琴華は立ち、コンコンと扉をノックする。扉を開けば、琴華は目を見開く。珍しくも、上層部が全員揃っていたからだ。
「…はは、なんの冗談でしょうね、城戸さん。わたし、なんかしましたっけねえ。」「無駄話をしに来たわけではあるまい。忍田君、話してくれ」
忍田に投げ掛けると、忍田は立ち上がり琴華の元に行き一つの資料を手渡す。琴華は首を傾げながらもその資料を読む。
「昨日、黒トリガーの反応があった。突然現れた為、我々上層部は大わらわでな。本物を確認する暇などない。」「…私に行け、ってことでしょ?普通に言ってくださいよ」
琴華は ねぇ、と呟いてから城戸に目線をやり、軽く睨む。城戸はため息をつくと、琴華に向けて言葉を発す。
「その通り。それを奪いに行ってもらう。…玉狛にな。」「…は?あんたボケるの 早いですよ。」「おまえは玉狛支部所属、だから都合がいいと言っているんだ」
琴華は訳が分からない、という顔で城戸の顔を見る。頭にハテナを浮かべる琴華に城戸は言葉を続ける。
「…明日夜、玉狛支部に迅の誘いで黒トリガーが玉狛に来る。」「…その時に奪え、と。」「ああ、生死は問わん。」
その言葉に、琴華は反応する。
「じゃ、林藤さんを通してくれます?あんたの命令を聞くのも昔お世話になったから。」
「…でも、聞ける命令にも限度ってもんがある。」
先程よりも強く睨むと、城戸は林藤に目をやる。
「…林藤支部長」「琴華~、行くかぁ。」「やり方は?」「ふ、おまえの好きなように。」「…ッもう、林藤さんったら最高!」
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…夜八時、琴華は換装体で人を待っていた。トリオンでものを作ったり、色々して遊んでいた。
「…お、琴華?」「あ、ようやく来ましたね。遅いんですよ」
( 迅さんの予知はあたり…か、 )
孤月を二つ構えた太刀川が、琴華を見つけて目を見開く。後ろから風間、出水が出てくる。
「…琴華、そこを退け。今頃、噂の“ 近 界 民 ” が玉狛に着いている頃だろう。」「え、近界民? 」「なんだ、聞いてないのか。迅に誘われてはいる黒トリガー、近界民なんだよ。」
「…琴華、おまえはおれ達と同じだと信じているぞ。」
風間の言葉にぴく、と琴華の身体が揺れる。少し黙った後に、薄ら笑いを浮かべて、太刀川達の前に立ちはだかる。
「あー…」
「悪いんですけどぉ…玉狛支部の隊員になるコなら、わたしはそのコの後輩として、そのコを守らなきゃならない…」
手からスコーピオンを出し、長細い形に変えて、太刀川達の前にたちはだかる。
「と、いうわけで…ここは、通す訳には行きませんね。」「…おいおい琴華、冗談キツイぜ?」
ゆっくり、琴華の方へ歩を進める太刀川。近くなると、二人共動かなくなり、膠着状態となる。沈黙を破ったのは琴華だった。
「…ふふ、舐めないでくださいよ、わたし、貴方より強いんですか…ら!」
持っていたスコーピオンを放り投げ、手にトリオンを浮かべる。
「太刀川!!」「メテオラ」
近距離で放たれたメテオラは太刀川のトリオン体を破壊した、と思われたが、すんでのところで避けた。
「ちぃ…当たらずか…」「…ふっ、どうやら本気のようだ」
太刀川はしまっていた孤月を出す。琴華も自分の周りに何個もトリオンを浮かべる。太刀川が向かおうとした時、風間が太刀川を引き留める。
「待て太刀川。…琴華、“蒼 穹”はどうした」「え?」「蒼穹はどうしたと聞いている。何故使わない?」
“蒼 穹” 。琴華が持つ黒トリガーだ。琴華の師匠が遺したとされるそのトリガーは、琴華にしか使えず、琴華が握ることで力が倍増される。まさに、琴華の為の黒トリガーである。
「え、そりゃあ…秘密ってやつですよねぇ」
途端、琴華が強く地面を踏む。違和感にいち早く気づいたのは、太刀川だった。
「…ッ出水!枝刃だ!下!」「んな、っ!」
出水が横に避けると同時に、地面からスコーピオンが飛び出す。
「っぶねぇ…!」「ちぇ、」「太刀川さぁん…そろそろ仕掛けましょっか?」「あぁ…そうだな。」
太刀川は孤月を抜き、出水は掌にトリオンを浮かべた。琴華は口角を上げ、にやりと笑う。
「やってみろってんだ。」
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「ちっ、この…、! 」「おいおい琴華ぁ、体力切れか?若いのに」「こちとら負ける訳にはいかないんでね…!」
苦戦していた琴華は、背後から黒いなにかを取り出す。近くにいた出水が、一番にそれがなにか気づいた。
「太刀川さん!」「蒼竜」
それが振りかざされると、蒼い光線のようなものが太刀川へ一直線に向かう。
「ッはぁ…?」
直に当たったそれは、太刀川の換装体を真っ二つに割った。
「…蒼穹…!」 「…これはダメだな。三上」『はい』「おれと出水を連れて緊急脱出だ」『分かりました』
通信が切れると、風間はゆっくりと琴華の方を向く。
「…琴華」「はい?」「次は狩る。それまで待っていろ」「…楽しみにしてま〜す」
……To be continued