テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ゆうな
232
178
41
#みじかめです、!
夢仁羽
104
もう空が明るくなってきた。
隣では、裸のおじさんがいびきをかいて寝ている。
(こいつ……片付けくらいしてほしい)
落ちている服や物などを片付けて、バスルームへ向かう。
触られたところを、何度も、何度も洗う。
自分の中にある他人の物を掻き出す。
どれだけ洗っても消えない嫌悪感を抱きながら、時間が過ぎていく。
新しい服に着替えて、ソファーに座る。
時刻は、もうすぐ6時になろうとしていた。
「ん? おはよう、ロゼくん」
ベッドの方から、おじさんが気だるげに身体を起こした。
「おはよう! もう6時だよ〜、今日もお仕事がんばれ!」
明るく声をかけると、おじさんは嬉しそうに目を細めた。
「ロゼくんにそんなことを言ってもらえるなんて♡ 頑張るよ」
おじさんは忙しく着替えてカバンからゴソゴソと封筒を取り出す。
「あっ! これ、いつもよりたくさん入れといたから」
「さすが〇〇さん、太っ腹!」
「私は太ってなんかないぞw」
「そんなんじゃないって」
「それじゃ、またよろしくね」
「うん! ありがと〜」
おじさんが部屋を出ていき、静かになった空間でポツリと呟く。
「遊びに行くか」
ここの近くには、俺みたいにこの街で暮らしてる人達が集まって、情報を交換しあったりしている場所がある。
同年代の子も多くて、楽しいところだ。
ーーー
「おーい、久しぶり」
いつもの溜まり場に顔を出すと、集まっていた仲間たちが一斉にこちらを振り返った。
「うぇ! ロゼじゃん、めずらし」
「死んだんかと思ったw」
「もー、勝手に死んだことにしないでw」
たわいもない雑談に花が咲く。その中で、一人の女の子が思い出したように声を潜めた。
「そういえばこないだ、向こうの公園で小学生が誘拐されそうになったらしいよ〜」
「ほんとにお前は情報が早いな」
隣の男子が感心したように言うのを聞きながら、やっぱりあの時はやばい状況だったんだな、と改めて再認識する。
「ほぼ毎日警察の方達とお話してますからね」
「ドヤ顔で言うもんじゃないでしょ」
一歩引いて見ていた男子が、さらに別の情報を口にした。
「そういやこないだ、向こうの河川敷で食べ物配ってたよ」
「あんなの私たちをおびき寄せて補導したいだけだよ! 何回もやられたな」
みんなの言葉を聞きながら、俺は一呼吸置いて切り出した。
「誘拐の話なんだけど……俺、丁度そのおじさんと待ち合わせててさ。やばい客を引いちゃった」
「うわ〜、どんまい」
「写真とかないの? 私たちもハズレ引きたくないし」
「全然送るから、他の子にも警告しといて」
「了解」
こんな感じで、やばい客の情報はみんなで共有して、被害がないようにしている。
不条理な街だけど、これもある種の絆だと思う自分がいる。
「警察が見回りに来てるぞー!」
不意に、遠くから誰かの叫び声が響いた。
「やばっ! またねー」
「ロゼ、じゃあな」
「はーい」
集まっていた人たちが、一気にクモの子を散らすようにいなくなっていく。
俺も急いでここから離れないと。
どこへ行こうか迷ったけれど、どうしてもあの時の男の子のことが気になって、公園へ行ってみることにした。
ーーー
公園につくと、まだ朝方だからか人の姿はない。
ベンチでは、酔いつぶれたサラリーマンが小さな寝言をつぶやいているだけだ。
「さすがに、こんな朝早くにはいないか……」
俺はネカフェで時間を潰すため、元来た道を戻ろうとした、その時。
「誰もいないっすね」
すぐそこから、警察と思われる二人組の話し声が聞こえた。
まだこちらには気づいていないけれど、見つかると色々と厄介だ。
「まぁ、そろそろ通勤通学する人が多くなるから、気を引き締めてね」
もうそんな時間か……。
警察もうろついているし、人が増えれば増えるほど見つかりやすくなるだろう。
俺は帽子のつばを深く被り、警察に背を向けて走り出した。
どうか見つかりませんように、と心の中で祈りながら。
ーーー
Side:ななもり
俺は今、警察署のモニター室で、必死に監視カメラの映像に張り付いている。
あの公園は住宅街が近く、あまりカメラが設置されていない。そのため、ゆたくんから教えてもらった情報を頼りに、時間を遡って地道に探している状態だ。
今の時代、AIなどを使うと検索は早いが、まだ精度はそこそこ。最終的には人間の目で確認するしかない。
早送りの映像を凝視していた、その時。画面の隅に映った人影に、思わず声を上げた。
「あっ、この子……!」
大通りのカメラに、ゆたくんが言っていた特徴にそっくりの子が写っていた。髪型も服装も一致している。
その子を画面上で追いかけ、周辺の他のカメラに切り替えていくと、確かに公園に向かう道を歩いているのが分かった。
さらに時間を進めて再生する。
すると、その子が、今度は男性と親しげに話しながら歩いていく姿が捉えられていた。
「今回の件、この男性が関与している可能性が極めて高そうです。そして、その隣を歩いている子が、助けてくれたという子でしょう。こちらでも、引き続き足取りを追ってみます」
背後に立つ上司へそう報告を告げ、俺は一度交番へと戻ることにした。
一刻も早く、あの男を捕まなければいけない。
あの「ロゼ」という子の身の安全を確保するためにも。
コメント
6件
最高すぎるよ~ ちょっましでロゼくんをはやく助けたいんだけど✨ あのリクエストよかったら心音くんをいじめていた奴らがきて親と一緒に殴られるのを書いてほしいです‼️(いじめっこがいない場合は親だけで❗️) よかったらお友達になりませんか?
おお、第16話、読み終えたよ。今回はロゼの日常と、ななもり刑事の捜査が交差する、なかなか緊張感のある回だったね。 まず、冒頭の朝のシーン。あの「嫌悪感を抱きながら洗う」描写がすごく生々しくて、ロゼの置かれてる過酷さがひしひしと伝わってきたよ。それでいて客の前では明るく振る舞うんだから、そのギャップに胸が締め付けられる。 溜まり場での情報交換の場面もよかったな。「不条理な街だけど、これもある種の絆」っていうロゼの台詞が、この世界のリアルな厳しさと、それでも生き抜く強さを感じさせてくれた。 そしてななもり刑事がついにロゼを特定したところで終わるのが、もう続きが気になって仕方ないよ!助けた小学生も、ロゼも、どうか無事でいてほしいと願わずにはいられない。更新待ってるね!