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「悠一がいない…」
「どうかしたか?」
「うんん、なんでもない」
「収録中に悪かった。2回目だな」
「うん、悠一の時もこんな感じだったね」
悠一どこに行ったの?
成仏、してないよね、
まだありがとうもさよならも何にも言えてないのに。今度こそは全部、全然言いたい。
「悠一、探しに行けよ」
「え…?兄さん?何言ってるの?」
「全部知ってる、シズクが入院してる時から幽霊が見えてること。俺は見えてないけどな」
「兄さん、スゴすぎるって。」
それと同時に私は病室から飛び出していた。
悠一がいそうな場所、好きな場所。
そんなのひとつしか思い浮かばない。
私と悠一が再開した場所。
あの海と夜空が綺麗に見える高台。
「悠一!ここじゃなかった?悠一!どこ?!」
「シズク?よくここがわかったな」
「悠一…!」
「俺と一緒過ごして後悔しなかったか?」
「当たり前、後悔するハズない…」
「それは良かった。」
「何泣いてんだよ」
「最後くらい泣かせなさいよ、」
「ほほー、それは思わせぶりですか?」
「そんな訳ないでしょ…私は、小さい時から悠一が大好きなのっ!」
「…それ、本当か?」
「こんな時に嘘つかないわよ、…」
「そりゃ残念、俺が死ぬ前に聞きたかったな…、」
「っ…」
「好きだシズク。」
「うぅ」
「泣くんじゃねーよ。はぁ、キスくらい出来たら後悔ねぇんだけどな…」
「あ…」
それは空気が触れたような感覚でなんだかとても暖かかった。
夜空の一番星が煌めきを増したその時、悠一はその場には居なかった。
妬ましいくらい夜空も、夜空を反射させる海も綺麗で悠一に対する思いが溢れた。
1年後、私の小説は1000万部を超える大ヒットを記録した。
声優界では異例のことで多くのニュースに取り上げられた。
「今日は人気声優の雨乃シズクさんに起こしいただいています。」
「はーい、声優の雨乃シズクです!」
「シズクさんといえば声優界では異例の1000万部を記録した作家さんで、高校生とは思えない文章能力で多くの年齢層に人気なんです!さてそこで―」
取材にバライティ、朝のニュースのゲスト。高校には通えていない。
卒業まであと2ヶ月。そろそろ成長したいところだ。
8年後。
「それでは新郎新婦のご入場です!」
私は今日、結婚する。
入籍発表をした時は世間がザワついていた。だって私の結婚相手はあの宮瀬深琴なのだから。
人気声優同士の結婚。それに私たちは小説家としてもそこそこの知名度で新聞でもネットニュースでもトップを決めていた。やりすぎだとは思ったが人生に1度のことだ。
「シズク、ここなんだけど…」
「あ、そこはね」
「披露宴の最中でも仕事ですか!」
「木下さん、今日は出席ありがとうございます。」
「そりゃうちの看板声優ですし、っていうかなんで台本の確認してるんですか!」
「明日から仕事なので」
「今くらい楽しみましょうよ…」
「充分楽しいです。」
「さすが仕事脳ですね、」
「ありがとうございます」
「シズク褒められてない」
「え?」
「シズク、結婚おめでとう。幸せになれよ、」
「っ…」
今聞こえたのは悠一の声だと信じたい。
私の目からは涙が零れていた。
「シズクさん!?」
「シズク?!」
大丈夫だよ、悠一。私はもう幸せだから。悠一にあげる分の愛も全部深琴にあげるから。良かったらまた遊びに来てよ。おばあさんになった私を迎えに来てね。
終わり