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『ごめんね。ママに、らるちゃんにはちかよらないでっていわれたんだ。』
ある日突然、みんながこう言った。それから、私は独りぼっちになった。私は、何が何だか分からなかった。
私は、音石 らる(おといし らる)現在中学3年生。中高一貫の女子校に在学していて学校に行っていたら、絶賛中だるみの時期だろう。両親は音楽に精通しており、その影響で私はよく歌を歌っている。ピアノもやっているし、ドラムもやっている。サックスもやっている。ギターもやっている。音ゲーも大好きだ。父親はそこそこ有名なボカロPで、音ゲー配信なんかもしてる。母親はバンドをやっていた時期があり、最近はYouTubeに歌をアップしてそれなりに稼いでいる。もう少しで登録者が3万人だそうだ。両親の収入はこの通りあまり安定しているわけではないので私もバイトをしている。
話は幼稚園に行ってた頃に遡る。私は4歳の時、転園した。全ての始まりは、ここからだった。
引っ越したので両親の職業も理解されず、伸びやかに、歌うように育ってほしいと付けられた『らる』という名前も『どうかしてる名前』と言われ、でもまだ関わってくれる人はいた。でも、私の声の高さに気づいた瞬間、皆離れていった。『あの子は可愛子ぶっていい子ぶって猫をかぶっている』と、誰かのお母さん。『じゃあ近づけない方がいいわね』と、その子の友達のお母さん。子供って残酷だ。親に従順で、自分で考えたことを捨てて親の言うことを素直にきくんだから。疑問も持たずに。親が正しい、そう思い込んでいる。
『ねぇ、あーちゃん、いつもみたいにわたしとあそぼうよ』
『ごめんね、あやめ、ママにらるちゃんにはちかよらないでって、いわれたんだ。なんか、みんなママからそうやっていわれてるみたい。』
それは、私の一人称が最初に『わたし』になったことと、この高い声と私の好みと関係している。
皆は自分のことを『あやめ』とか『ゆい』とかいうように自分の名前で呼んでいた。今は知らないけど、その頃は。でも私は、前に住んでいたところのご近所さんが全員私より年上で皆一人称が『私』『僕』『俺』で通っていた幼稚園も少人数で年上と接する機会がとにかく多かったせいか私は、『わたし』だった。それを大人に気に入られようとして、私は優秀ですって言ってるみたいって思われた。そしてこの高い声だ。別に高くしているわけではない。父方の家系だ。おばあちゃんも人より凄く声が高い。お父さんも『高音厨音域テスト』は合格する。私も小さい頃父親とやった『こうおんちゅうおんいきテスト』も合格した。(高音厨音域テストと内容は同じだが言葉が優しくなっている。今も勿論『高音厨音域テスト』には合格できる。ただ、『低音厨音域テスト』のこんにちは初音ミクだよ〜のよがまず出ないけど←多分こっちが原因?)なぜか可愛子ぶってると思われた。それから私はとにかく音符やピアノのような柄を好んだ。大人に『私は賢いですよ』って媚を売ってるみたい、と思われたようだ。私の周りには音楽があるのが普通だからそうなっただけだ。水玉やリボンよりよっぽど近くにあっただけだ。大人の偏見は怖い。
まず私は、自分の声を恨んだ。そして声を出さなくなった。いや、正確には「出なくなった」。それまで大好きだった歌も歌わなくなってしまった。