朝。涼ちゃんは静かに目を覚ますと、枕元にいない𓏸𓏸を探す。
ふと隣のベッドを見れば、𓏸𓏸がぐったりしたまま眠っていた。
その顔色は優れず、呼吸もどこか苦しそう。
いつも世話をしてくれている𓏸𓏸が、今は何もせず眠っている――
そのことが、涼ちゃんの胸に微かな痛みを呼んだ。
静かな手つきで、涼ちゃんはそっと𓏸𓏸の肩に掛け布団を寄せる。
そしてまた、自分の世界に戻るように、窓の外をじっと見つめ始めた。
やがて𓏸𓏸はふらっと目を覚ます。
熱っぽく体が重い。体温を測ると、ちゃんと発熱している。
それでも天音は、涼ちゃんのことを真っ先に思い出す。
「……ご飯と、お薬……」
重たい体を引きずって、いつも通り涼ちゃんの食事や薬を用意した。
たとえ自分がつらくても、涼ちゃんにだけは忘れずに。
涼ちゃんはやはり黙ったままだったが、
その姿と、𓏸𓏸のしんどそうな背中――
心のどこかに、それがちゃんと焼きつく。
(𓏸𓏸、がんばってる……僕のこと……)
ふだん言葉にはしない。反応もできない。
でも、涼ちゃんの心の奥にやさしい想いが静かに芽生えはじめていた。
𓏸𓏸はゼリーを一口食べさせ、水もコップのそばに置き、
今まで通り一つ一つノートに記録する。
「昨日はね、おかゆちょっとだけ減ってたよ。ありがと。」
小さな声でそう微笑む𓏸𓏸に、
涼ちゃんは何も返さず、ただ目だけそっと動かした。
「大丈夫。明日も一緒に、起きようね」
初めて――
その言葉が、ほんのり涼ちゃんの心に染みていったような気がした。