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※こちらはプリ小説の方の作品の改正版です

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第二章:隔離病室









あれから数日



私は毎週土曜、あの病室へ母のお見舞いついでに通っている




花壇に咲いている勿忘草(わすれなぐさ)の花弁がカーテンを撫でる



病院の花壇に咲いてるなんて、めずらしいな…


なんて、少し思ったりもしたが、



風に巻き上げられた青い花びらが病室よりはるか上へ、上へと昇っていく



青く、深く、どこまでも続いていく空へ向かって



そして、そんな美しい病室にいる、


話すことのできない少女が今日も__

















嫌そうな顔をして見つめている




『また来たんですか、ムス…』



「もう…また嫌そうな顔…」



「そんなに私が来るのが嫌?」




……少しいじわるな質問だったかもしれない



でも、明らかにムスッとした顔


その小さな顔の表情がよくわかるほどに


顔中のシワというシワが寄せ合っている



そんなにしかめっ面にならなくても……



そんな儚い願いなど、叶うはずもないだろう



なぜなら、私が彼女を止めたから



私が彼女の思いを、死んでしまいたいと願う意思を


打ち切ってしまったから







彼女はもう…、消えてしまいたかったのに



…私にとってはいいことだったかもしれない


病院の人たちにもそうだ


実際感謝された


だが、それが彼女にとってはいけなかった



願っても、願っても、思いが届かないのはつらい



どれだけ思っても、思っても、想っても…、


叶うことのないことなんて、嫌になる



私だってそうだ


…私は、歌手になりたい


だが、私には才能がないようだ


どれだけ採用試験を受けても落ちる



どれだけ、願ったとしても、思いは届くことなく朽ち果てる



……なんて憐れなことなのだろう



…私と彼女は似ている


故にほおっておけないのだ


……一人だったのだろうか、ずっと、ずっと_



両親にも見放され、願ってもいない病気を与えられ



その割には願っていた、死、という名の星を掴めずにいる



私もこんなことは思いたくない、だが、




神とは、なんて他人事で、自分勝手なのだろう



こんな、何もしていない幼女の人生まで変えてしまう


もし、この世に神というものがいたのなら、私は一生、彼女の代わりに恨むだろう。憎むだろう。




_そう、勝手ながら守ってあげないとなんて、責任感が湧いたのは言うまでもないだろう




「……私ね!陽影といれて嬉しいよ!!」



『急になんですか……』


『……そう、ですか…』



ペンを走らせたり、スケッチブックをめくったり、


会話とは到底思えないぎこちのない会話だが、私にとってはそれが一番嬉しいことだった



彼女の返事は、そっけないものだったが、少し俯き、顔を赤らめていたことは秘密にしておこう



これは私だけの宝物である



そんな可愛らしい陽影に今日の出来事を話す



これはいつものルーティーンである



そして、はじめは険しい表情をしていたものの、段々会話が進むにつれ、表情を柔らかくしていく



これも、いつものことである



…人見知りなのかもしれない、それはそうだろう



ずっと、病室に一人だったのだから



……寂しかったろう、悲しかったろう



まだ12歳の少女だ



無理もない



そんな陽影に私は、本当の妹のように接していた











数日後__





今日も、病室へ向かう




_だが、少し早く着いてしまった



陽影を驚かせるわけにもいかないので、少し廊下で待つことに




…少しだけ、廊下の鏡に反射して、病室の中が見えた



変化していることが1つだけ、そこには見えた



陽影が、何か書いていた



ノートのような、スケッチブックよりも少し小さめの大きさの



だが、ただでさえ身体が小さい陽影が書いているので、大きく見えてしまう



私はそのまま様子を伺うことにした



………だが、いつまで経っても書く手は止まらない



それどころか、何ページもめくっていく



時にペンは止まり、動き出し、止まったりを繰り返す



何か考え事をしながら書いているかのように



さすがに埒が明かないので、仕方なしに声をかけることに









「ねぇ…!何してるの?」


私は陽影に近づき、書いていたノートらしきものを覗く



『!?』


陽影はいかにも驚きましたって顔で私を見つめた



その拍子に、持っていたノートが空中を舞う



「…?」



私は興味本位に、ノートを手に取る



その時、陽影は可愛らしく慌てるような仕草をしていたが、気になる気持ちが勝ってしまい、知らんぷりしてしまった



その、少し古びたノートの表紙には書かれていた






“作詞ノート”と



可愛らしく、クマの手描きイラストが描かれている



陽影が描いたのだろうか…?



幼子が描いたような色がところどころはみ出したりしている



とても明るい表紙だ



私は止めようとする陽影の手を逃れ、ノートを開く



ページの一面には、”I-dea”(アイデア)と書かれたページと



1ページを埋め尽くすほどのずらりと並ぶ曲の歌詞があった



これを見てしまった後の陽影の表情など、一生忘れることはないだろう



正直、こんな顔ができるのかと疑うほど険しい顔をしていた



見るなと言わんばかりの睨み具合で私を見ていた



「これは……」



『………』



当然、陽影は黙り込んでしまう



イメージ的には、親に0点のテストが見つかったときのような展開だ



だが、数分間の沈黙を破るかのような仕草で、スケッチブックに文字を書き始めた



『これは、去年の私の誕生日にお母さんがくれたノートなの』



『このスケッチブックもね』



『私は作詞が好き』



『作詞なら、言葉にできない私の気持ちを吐き出せるから…』



「…どういうこと…?」



『………』




駄目だ、また私はいけないことを聞いてしまった



いつもこうだ、何も考えず、口走る



そうして、一人になってきた



私が謝ろうとしたとき、陽影が文字を書き始めた



『私の親は、私に興味がないの』



『だから、ここに来てくれるのは誕生日の日だけ』



『すぐに帰るけど…』



『掛けてくれる言葉は暴言ばかり…』



『…もう嫌なの、』



『親を怒らせるの』



『私がお母さん達の邪魔をしてる、怒らせてる』



『だから、貴方みたいな人は初めてで、どう接すれば正解なのかわからなかった……』




陽影は全てを話してくれた



私は静かに頷くことしかできなかった



気づいたら、空は茜色に染まり、私と陽影を照らす



「そっか…、話してくれてありがと…!」



「…私が思うに、正解なんてないと思う。」



「だから、わかるまで、ずっとここに来るよ!」



「一生分からなくてもいい、気づいたって言わなくてもいい。」



「自分がわかればいいんだから!」



そう、私は声をかけ、ニコッと笑う



陽影は何も言わなかったが、目を大きく見開いていた



その瞳はキラキラと輝いて見えた



これから、陽影がもっと笑ってくれたら、と私は思う



「あ!それと!」


『…?』



「また作詞ノーと見せてね!」



私はにこやかに伝えた



陽影は、渋い顔をしていた



が、心なしか嬉しげな表情が見えたのは気の所為だろうか…?



















勿忘草(ワスレナグサ)

春の花


意味:私を忘れないで。誠実な友情。


画像





次回:第三章.作詞ノート


NEXT➸♡60


(私の作詞(黒歴史)を物語に書きます…)

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コメント

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おぉ✨️私もボカロPとシンガーソングライターになりたいんだよね〜

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