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その後、アークは気を失って眠ってしまった。寝ている彼を襲う趣味はないので、布団をかけておく。
ネテルは寝ようと思ったのに、うまく寝付けなかった。色々考えてしまい、頭が痛いからだ。本当はこの気持ちを墓場まで持っていくつもりだった。
机の引き出しの隅からタバコの箱を取り出す。そのままベランダの窓を少し開けて、タバコに火をつける。口に咥えて、はぁと息を吐く。紫煙が立ち上った。
これは頭が痛い時によく効く対処法だ。ほとんどタバコは吸わないが、気分が悪くなった時の気晴らしのために使う。気分が落ち着いて、楽になるのだ。
とはいえ、現実は迫り来る。
アークとの関係は両親に知られてはいけない。身分が違いすぎて、激怒されることは間違いない。兄は知っているかもしれないが、両親に言わないだろう。
兄自身も隷女を好いているし、両親とも仲が悪い。特に父は毛嫌いしている。ネテル自身が奴隷を好きになってしまったことを言ったら、自分にも危害が加わり喧嘩になりかねない。
そのため父は、正妻の間に生まれたネテルを次期国王にするだろう。もしそうなるのならば、隣の国であるトルーク王国の姫と結婚しなければいけなくなる。
好きでもない女と結婚し、そして国の安定を保つ。そんな人生はまっぴらごめんだ。
「クッソ……」
机を強く叩き、木でてきた椅子に座った。そして、アークのことについて考える。
彼と初めて会った時、とても真面目な奴だと感じた。ネテルは真面目で話をしっかり聞く人が好きで、アークはまさに好きな性格ドンピシャ。顔もとても好みだ。
ネテルは圧倒的にシャイで無口だ。あの時は成り行きで気持ちを伝えることができた。しかし普段は気持ちを伝えるのが苦手で、いつも暴力と暴言に走ってしまう悪い癖がある。素っ気ないように思われてしまうので、直そうとしているが全く直らない。
彼は恋愛においても不器用なのだ。
はぁっとため息をついていたら、扉の隙間から手紙が入ってきた。それを拾う。
父親からの手紙だ。一体何が書いてあるのだろうか。もしかしたら、今現在取り掛かっている街興しフェスのことだろうか。
街興しフェスは年に二回行われる祭りのような物。夏頃と冬頃の両方に行われ、王族の官房が代表となって行われる。
ネテルは兄の代わりにフェスの場所を確保し、色々な店を回って交渉する。そうしなければ、フェスで開かれる店がなくなってしまう。
彼はこういう社交辞令が苦手である。だから交渉を失敗したのを父が根に持ち、説教されるのではないかと身構えた。しかし、中を開くと全く違うことが書いてある。
「まじかよ……」
全ての文章を読んで絶望的な気持ちに陥った。これでは眠れそうにない。睡眠薬を飲むしかないだろうか。
書いてあった内容は、一ヶ月後の朝9:00にこの家を出発して隣の国トルーク王国へ行くこと。馬車を使って、トルーク王国の姫に会いに行くらしい。
トルーク王国とは、我々の住むワグノフ王国と同盟を結んでいる国だ。争い事に強く、彼らがいることにより軍事力が増しているのは言うまでもない。
もし戦争になれば、こちらが負けてしまうのは目に見えている。交渉により、手を組んでいるというわけだ。
ネテルは手紙を机に置いて、タバコを何本も吸う。怒りのあまり、タバコの数が増えていく。
「くっ……これを断ったら、戦争になりかねない。もしアークと共に家を出てしまったら、ワグノフは陥落。人身売買のことがバレて、父は捕まってしまう。もしくは正妻ではなく、他の妻の子供でもいいと思うが……確か息子は他にもいたはずだ」
父は大の女好きで、昔から女と淫らなことをしているのを見て育ってきた。ネテルはその行為を見るのが大嫌いで、いつも怯えていた。
確か貴族の女はもちろん、庶民の女ともしたと言っていた。だから子供はたくさんいて、貴族の間に男も生まれているはずだ。
そいつが次期国王になれるようにし向けば、家を出ても陥落はしないだろう。
目を細めて、歯を噛み締めた。
「でも、どうやって説得しよう……先が思いやられる。俺はアークのことを愛しているんだ。だからいつか、あいつの両親から金を奪った『アイツ』をしばきに行きたい」