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「世羅、やめろ!」
そのとき、別の警官が飛び込んできた。世羅よりもだいぶ年上。上司なのかもしれない。彼は本気で怒った顔をしていた。また余に恨みを持つ者かと思ったが、違った。
「三分ほど前から見ていた。無抵抗の女子高生をリンチしていたがどういうことだ? 柔道オリンピックメダリストさえ破ってみせた超人的なおまえが。殺す気か?」
「警部殿、お言葉ですが、あの女子高生を見てください。あいつはおれとは比べものにならないくらいの超人です。おれが本気で一時間以上攻撃してもビクとも――」
世羅が口ごもったのは、地面の上でのたうち回っている余を見たから。
「全身が痛くて涙が止まらない。あちこち骨折してるかも。音露、もう死んじゃう!」
「おい、ネロンパトラ! おまえそんなキャラじゃねえだろ? 都合よく女子高生になるな!」
「都合よくって、正真正銘の女子高生ですけど」
世羅に警部と呼ばれた男が真っ青になった。
「警官が職務中に無抵抗の女子高生に暴行して大ケガを負わせた? クビでは済まんぞ! とんでもない不祥事として報道までされてしまうぞ!」
「だからあいつは大ケガなんてしてません」
「まだ言うか? そもそも虫も殺せない顔したあの子がおまえに何をしたというのだ?」
「おれの目の前でおれの家族全員を焼き殺したんです! おれの妻子には何の罪もなかったのに!」
「妻子っておまえ独身だよな? 家族全員殺された? ここに来る途中でおまえの妹さんとすれ違ってあいさつされたぞ」
「いやあの、さっきのは前世の話で……」
「世羅、いい加減にしろ!」
警部が世羅を一喝した。声だけなら魔王の余より迫力がある。
「前世? そんな訳の分からない理由で一般市民を暴行することが許されると思っているのか? まさかおまえ、警官でありながら違法薬物に手を出しているのか?」
世羅は否定したが、警部は問答無用とばかりに首根っこを押さえて引きずるように世羅を連れて行こうとする。