テラーノベル
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今日は絶好調の日だ。事件現場に突っ込んでは怪我人を救助し、警察官とのチェイスをかわし、ついでに倒れている警察官をピックして署前で治療した。
「はいこれで治りましたよ。暫くは安静にしていてください、では。」
「どうもーでも無免許ねー。」
一部の人だけでなく警察官全員から請求書を拒否させるようになり、この街の財政難を危惧していたがぺいんは気にするなと言っていた。
「『ぐち逸今手空いてるー?』」
「『はい空いてます、仕事ですか?』」
「『868にクスリ売りに行ける?』」
「『了解です。北の生成所で大丈夫ですか?』」
「『うんそこ集合で。』」
DEPの仕事にもすっかり慣れて売人としての役割を任される事が多くなった。868とはいつの間にかコの字拠点で取引するのがお決まりになっている。
「今日はケインさんじゃないんですね。車ボロボロですが大丈夫ですか?」
「あんな無茶な運転するからだよ。」
「マーくんが急げって言ったんじゃん!」
「そもそもトピくんのせいで時間ギリギリになったんだし!」
「あのー、種類と数確認してもらっても?」
言い合う2人を見てるのは面白いが放っておくと日が暮れてしまう。割って入ってモノとお金のやり取りを済ませた。
「そういえばぐち逸さんさっき怪我人担いで警察に追われてませんでした?」
「今日は何回も追われてますね。」
「個人医さんいつも大変そうっすね、逃げれてるんですか?」
「まぁ一流ですから。」
「さっすがぐち逸先生!僕達も後で大型やるのでよろしくお願いしますね!」
ふざけ合いながら車に乗る2つの背中を見送って少し作るかと生成所に向かった。
今日は絶不調の日だ。チェイスはシートベルトが千切れて事故ダウン、大型対応はFFしてしまった直後に自分もやられ、大人しく牢屋対応しようとしたら間違えてレッサンをプリズンに送ってしまった。
「はぁなんで今日はこんなダメなんだ…迎えに行かなきゃ。」
ヘリではミスらないよう慎重に運転して緊張しながら着地成功、中に入ると数人が刑務作業をしながら楽しく談笑中だ。
「お迎え来たー!ぺいん先輩珍しい、こんなミス。」
「ごめんレッサン手が滑った。」
「ぺいんさん、私に罰金の請求が2回飛んできてるんですが。」
「うっそ!?ごめん!払うねケイン今日何番?」
「働きすぎなんじゃないですか?少し休んでは。」
「ご心配どうも、とりあえず今日はそうしようかな…」
帰りはレッサンに運転を頼み、本署に着いたら早々に退勤してぐち逸に電話をかけた。
「はい空架です。」
「ごめんぐち逸今日さ、早めに帰って来れたりする?」
「大丈夫ですよ。何時頃ですか?」
「あのー、もしできれば今すぐ…」
「…分かりました、5分ぐらいで帰れると思います。」
何かあったのかと大急ぎで帰っていたが家に着く直前に個人医通知が鳴った。幸い近くだったので治療してから帰ったらリビングのソファーで項垂れていたぺいんと目が合うやいなや、抱きつかれた。
「ぐちーつー!!おかえり、無理言ってごめんね。」
「いえ私こそ遅くなってしまって。どうしたんですか?」
「今日何もかもミスってなーんも上手くいかなくてさ、慰めてほしくて。」
「其れは…大変だったんですね。お疲れ様です。」
「ぐち逸は来た現場全部逃げ切れてたでしょ、無線でめっちゃ騒がれてたw」
「今日は運が良かったです。」
「運じゃなくて実力でしょ。はぁーー俺警察向いてないのかなぁ…」
「そんな事無いですよ、ちょっと調子が悪かっただけ。何か温かいものでも食べましょう。」
「もうちょっとこうしてたい。」
抱きついている腕に更に力が込められる。ぐち逸は少し悩んでおずおずと片手を背中に回し、もう片方の手でぺいんの頭を撫でた。
「他に私にできる事ありますか。」
「できる事?」
「はい。 私はいわゆるその、メンケアというものをあまりした事が無いので分からず。できる事があったら教えてください。」
「んー…じゃあさ、1回離して。よいしょっと、はいここ座って?」
「ここ、って膝の上ですか?いや重いですし、その…///」
「重くないよ、ぐち逸ほっそいじゃん。ほらおいで。」
腕を引っ張られて誘導されるがまま、ぺいんの足に跨って向かい合わせで座った。頬を撫でると顔を赤くするぐち逸をお構い無しに抱き締める。
「こうするともっとくっつけて良くない?はぁぐち逸あったか〜落ち着く…」
「あの、これって本当にメンケアなんですか?」
「俺が元気になるからメンケアだよ。そういう所も可愛いねぇぐち逸は♡」
ぺいんがぐち逸を撫でるとぐち逸もぺいんを撫で、強く抱き締めると抱き締め返してくる。お互いを愛でて愛でられ、大分癒えたがそれでも落ちていた気分は完全な元には戻らなかった。
「ね、もし嫌じゃなかったらもう1個お願いして良い?」
「はいなんでしょう。」
「えっとね…キスしてほしいなぁ。」
「!…してほしい、て言うのはその、そういう事ですか?///」
「流石察しがよろしくて。ぐち逸からしてほしいな?」
「ぁーえっとー、その…///これもメンケアですか?」
「うん、してくれたらすっごく元気出るしまた明日から頑張ろって思える。でも嫌だったらハッキリ断ってね。」
「……じゃああの…目、閉じてください///」
「してくれるの!?はい、お願いします。」
ぐち逸は大きく息を吐き目をこれでもかと固く閉じてゆっくり顔を近付ける。ほんの少し唇が触れ一瞬怯んだが、再びしっかりと口付けた。
「…こ、これが限界です///」
「うわ、めっちゃ嬉しいし幸せ…すっごい元気出た!ぐち逸ほんとに大好き、ありがと。」
そこからぐち逸はずっと顔を赤らめて俯きがちになり、寝るまで目が合う事は無かった。
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