テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「まずは制服に着替えていただきます」
律に案内され、更衣室に入った華は、支給された制服に袖を通した。
着替えて出てきた瞬間、律が眉をひそめる。
「……ネクタイ、逆についてます」
「えっ……あ、すみません!」
慌てて直そうとするが、指先がもつれてなかなか結べない。結局、律が手を伸ばし、器用に整えてくれた。
「これで大丈夫です」
「ありがとうございます」
しかし、研修はそこからも失敗続きだった。
受付カウンターでは深く頭を下げすぎて台にぶつけ、電話応対では取次ぎ先を間違え、館内案内ではお客様を逆方向へ導いてしまう。
「桜坂さん、もっと慎重にしてください」
「……はい。申し訳ございません」
律のぶっきらぼうな叱責に、華は小さく肩を落とした。
――教育係としての初日から、前途多難を思わせる光景だった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!