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301
縁en
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収録の合間。
仁人は少し離れたところから、勇斗と柔太朗が話しているのを見ていた。
楽しそうだった。
何を話しているのかは聞こえない。
でも、勇斗が楽しそうに笑っていることだけは分かる。
柔太朗が何か言うたびに笑って、
時々肩を寄せるくらい近い距離で話している。
仁人は無意識に視線を逸らした。
見ていたら、余計に苦しくなる気がした。
でも、気づけばまた見ている。
自分でも嫌になるくらい。
・・・
しばらくして、やっと二人きりになる。
勇斗はいつも通りの顔で仁人を見る。
勇斗「仁人、さっきから静かじゃない?」
仁人「そう?」
勇斗「うん。なんか考えてる顔してる」
仁人「別に何も」
勇斗「またそれ言う」
少し笑いながら言う勇斗。
その普通の態度が、なぜか余計に苦しかった。
仁人「……さっき」
勇斗「ん?」
仁人「柔太朗と何話してたの」
勇斗は少し驚いたように目を開く。
勇斗「え?」
仁人「いや、別に」
言葉ではそう言うのに、顔には全部出ていた。
勇斗「普通に話してただけだよ」
仁人「……楽しそうだった」
勇斗「楽しかったよ」
その返事が、思った以上に刺さる。
仁人「そっか」
短く返す。
でも、胸の奥は全然納得していなかった。
勇斗「何?」
仁人「何が?」
勇斗「いや、絶対なんかあるじゃん」
仁人は黙る。
言いたくない。
言ったら面倒なやつだと思われる気がした。
でも、もう限界だった。
仁人「……勇斗ってさ」
勇斗「うん」
仁人「誰にでもああいう感じなの?」
勇斗は少し考える。
勇斗「どういう感じ?」
仁人「距離近いし、楽しそうに笑うし」
声が少し震える。
勇斗は黙って仁人を見る。
仁人「……俺にもするじゃん」
勇斗「うん」
仁人「でも、柔太朗にもするんだ」
その言葉を口にした瞬間、
自分でも分かった。
自分が何を気にしているのか。
勇斗「仁人」
名前を呼ばれる。
優しい声。
それが余計に苦しい。
仁人「……ごめん」
勇斗「なんで謝るの」
仁人「分かんないけど」
仁人「なんか、嫌だった」
勇斗「何が?」
仁人は俯く。
もう隠せなかった。
仁人「勇斗が、俺以外と楽しそうにしてるの」
沈黙。
言ってしまった。
もう戻せない。
仁人「……誰とも話さないでほしいとか思った」
仁人「そんなの無理なの分かってる」
仁人「仕事だし、メンバーだし」
仁人「でも……嫌だった」
声が震える。
勇斗「仁人」
仁人「自分でも重いって分かってる」
仁人「でも止められない」
涙が落ちる。
仁人「勇斗が誰かといるだけで、不安になる」
勇斗は何も言わない。
ただ、仁人を見る。
仁人「……俺だけ見ててほしいって思う」
やっと出した本音。
勇斗「そんなに?」
仁人「……うん」
仁人「自分でも引くくらい」
勇斗は少しだけ笑う。
でも、その笑顔の意味を仁人は分からなかった。
勇斗「仁人って、そんな顔するんだ」
仁人「……笑わないで」
勇斗「笑ってないよ」
仁人「絶対、面白がってる」
勇斗「そんなことない」
そう言いながらも、
勇斗はどこか嬉しそうだった。
仁人「……ずるい」
勇斗「何が?」
仁人「俺がこんなになってるのに、普通にしてるところ」
勇斗は少しだけ近づく。
勇斗「じゃあ、どうしてほしいの」
仁人は答えられない。
本当は分かっている。
でも言葉にしたら、もっと醜くなる気がした。
仁人「……分かんない」
勇斗「分かってるくせに」
仁人は顔を上げる。
でも勇斗は、それ以上何も言わなかった。
ただ、仁人の全部を見透かしているみたいな目をしていた。
コメント
1件
収録の合間の何気ない景色から、仁人の重くて繊細な感情がひしひしと伝わってきました。「俺だけ見ててほしい」と零したときの震えと、勇斗の「そんなに?」という返しの温度差が切ないです。最後の「分かってるくせに」で二人の距離がぐっと変わった気がして、続きが気になりました。素敵な作品をありがとうございます。