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「ええ、また数時間後に」
ガチャ、とドアが音を立てる。
焦った様子で出ていってしまったので、僕一人になってしまった。
「は…?」
未だに理解できない。あの行動の意図は何だったのか。いや、意図なんてある訳ない、ただの挨拶に過ぎない行為なのだから。でも考えないなんて考えられない。挨拶に過ぎないのに。挨拶に過ぎないのに!!
「はぁ…?」
例えこの場に居ないとしてもこの言葉遣いは無いだろと思うがそんなことはもう知らない。僕は悪くないのだから。逆に被害者だろう、こればっかりは。
いや、でもソ連様は悪いことなんてしてないよな?まず“悪い“って何だ?“悪い“の定義なんて聞いたことがない。誰かを傷つけた時それを“悪い“というなら僕は別に傷ついてない。いや嬉しいとも思わなかったけど…!
「はぁ…!?」
冷静になれるのは唯一の特技だと思っている。いや、思っていたの方が正しいのかもしれない。
ソ連様がいる前ではなんとか顔に出てないことを祈ろう…
「…初めてだったんだけどなー、」
冷静になろうとして冗談紛いに声に出してみるが逆に羞恥を加速させてしまう。
…先程ほんの少しだけ触れた唇はまだそれを憶えている。少し手を当てると、乾燥した唇が肌に擦れる。
こんな有様では父さんに合わせる顔がない、なんて、僕の勝手か。
ソ連様も言う通り本当不器用だよな。
「なにしてんだろ、僕…」
『本当にな』
「、うわっ!?…すみません、って、え…!?」
『ボールペン貸してたから戻ってきてきたんだよ、』
「…出社してからじゃ駄目だったんですか…?、すみません」
さっきから失言にも程があるだろ、僕。どうやらいつもの本音と建前が何処かに行ってしまったらしい、戻さなくては…
『これは俺が悪い。ドア開けてから気づいてな… 』
“ドアを開けてから気づいた“という割には独り言に文句をつけてくる。
完全に開き直ったなこの人…
『…今日のことは無かったことにしよう』
「そうですね、それが一番です」
これで今日3回目の別れ。毎日のくだらない別れにこんな複雑な感情を抱いたのは初めてだ。
…これを実行するのも。
「少し座っていただけませんか?」
『ん?ああ』
「…失礼します」
意を決して頬に口付けをする。こんなガサガサな唇では申し訳ないほど柔らかくて、綺麗な頬に。
「…今度からは口ではなくて頬にしていただけるとありがたいです」
ソ連様が固まっているので僕も固まる。口ではないと失礼に当たるのだろうか?… どこまでも不思議な地だな、ここは。
なんて現実逃避する。
僕が謝るより前に、ソ連様が立ち上がった。
『…下手くそ』
左頬に一回、右頬に一回、そして口、は少し音を鳴らしただけで触れなかった。
『これが本物だ、さっきのは出来心』
まぁ本当はキスするんだけどな、と笑われる。
『じゃあな、初めて奪って悪かった』
そう聞こえた直後、ドアが大きく音を立てる。
「…数時間後にまた会うとか考えたくもない」
頬の赤みを抑えるべく、とりあえずシャワーを浴びて寝ることにした。