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#関西弁
萩原なちち
99
「では、また明日」
「あ……明日?」
「はい。明日も、ご迷惑じゃなかったらお店に行きます。今度は一人で」
「……はい。お待ちしてます」
ゆうたさんが見えなくなるまで、大きく手を振る。
昼間はすぐに目を逸らされてしまったけれど、今は俺が見えなくなるまで手を振り返してくれた。よかった……昼間の失態、なんとか取り返せたぞ!
安堵したのも束の間。帰宅してスマホを見ると、ゆうたさんからLINEが届いていた。
『今日はありがとうございました。とても嬉しかったです。びっくりしてしまって、すぐにお返事できなくてすみません。僕は女性が好きなので、いつきさんのこと、恋愛対象には見られません。ごめんなさい』
待てよ! 俺、速攻でフラれてんじゃん!!
告白して一時間も経ってないんだぜ!?
「……ぜってぇ諦めねぇ」
指が勝手に動く。
『わかりました。まずはお友達としてお付き合いしてくださると嬉しいです。あと、起業に興味があるので、今度ゆっくり相談に乗ってもらえませんか?』
『もちろん、僕でよければ』
『では明日、閉店時間にお迎えに行きますね?』
『お誘い早すぎませんか?(笑) わかりました、お待ちしております』
よし! ゆうたさんが笑っている姿が目に浮かぶ。
俺の持ち味はスピードだ。ゆうたさんの中の俺への熱が冷めてしまう前に、勝負を決めなきゃ。一気に畳み掛けてやる。
♢♢♢
「……こんばんは。お店、忙しかったですか?」
翌日。閉店後少ししてお店に飛び込む。
「あ、いつきさん。すみません、バタバタしてしまって」
「あ、じゃあ鍵閉めときますね」
「すみません、ありがとうございます!」
必死なのを悟られないよう、外で待とうと思っていたけれど、三十分経っても一向に彼が出てこない。看板はとっくに「CLOSE」になっている。もしかして早く帰った? 約束を忘れられた?
焦ってドアを開けると、そこには山積みの段ボールを抱えて階段を上がるゆうたさんの姿があった。
二階が、倉庫になっているのか。
「お手伝いしますよ」
スーツの上着を脱ぎ捨て、ワイシャツの袖をまくり上げる。
「うわ、服ってこんなに重いんだ……」
他にもやることは山ほどあるだろうに、これをずっと一人でやっていたのか。本当にえらいな、ゆうたさんは。
「えっ! いつきさん、ありがとうございます!」
「いえ。これ、こっちに置けばいいですか?」
「はい、本当に助かります」
俺が荷物を積んでいくのを、ゆうたさんが楽しそうに笑って見ている。
……うわ、可愛い。告白した後だから、余計に愛おしくてたまらない。
「……いつきさんって、大きいですね。僕、もうちょっと背が伸びる予定だったんですけど」
隣に並んだゆうたさんが、僕の肩あたりを見上げながらポツリと呟いた。
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