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『発覚』
何処にいる。何処に。
汝は何方に在りか。
都に在りしは承知している。
十七年来、汝が転生せし事をも承知している。
忌まわしき結界を潜り探し続けておるのに、汝の気配が薄くて見当ぬ。
憂さ晴らしに隷属を振るわせても、気持ちは晴れぬ。
何処におる。何処に。
せめて、汝の血があるのならば──。
血。血。血。
一滴の血があれば、何処にいても見つけ出せるというのに。
あな口惜しや。
※※※
『危機〜クロユリ〜』
「あっ……」
突然倒れたから目眩かなと思ったけど、これは違う。
地面そのものが赤子がむずがるように揺らいだ。
これは地震だ!
「きゃ、じ、地震っ!?」
姉の声に続くように女性達の不安げな声が、ざわざわと揺れる木々に同調するようだった。
ガタガタと公会堂の窓枠が揺れる音がする。不気味だ。
私も不安で胸がドキドキしていると耳元で「環様っ大丈夫ですかっ」と葵様の声がした。
肩を強く揺さぶられハッとした。
「え、えぇ。だ、大丈夫です」
「顔に傷がっ。すぐに治療をしなくては。今、地震が発生しましたが、さほど揺れは大きくない。大丈夫、僕がいます。どうか落ち着いてください」
きびきびとした態度の葵様にほっとする。
顔の傷も大丈夫。このぐらいの傷ならすぐに治ります。地震もへっちゃら。
と──言おうと思ったけど私は何も言えなかった。
それは不気味な気配を感じ取ったからだ。
地震は確かに小さなもので揺れはもう収まりつつある。
今は体が揺れた余韻と不安だけを残しているだけ。なのに──妙な不安感から、地面に触れた手を離すことが出来なかったのだ。
空気がなんだかピリピリする。
全身の産毛が逆立つように、とても気持ち悪い。心臓が素手で鷲掴みにされているようで、鼓動が勝手に暴れ狂う。
「っぅ……手の平から感じるこれは……なに。地中奥深く、何かがいる……?」
「環様、顔色が真っ青です。大丈夫ですか? すぐにここを移動しましょう」
葵様が心配そうに私の顔を覗き込むが、答えられない。私の意識はこの地面に縫いつけられている。
手の平から地中のずっと奥深く、鳴動しながら土竜のように、こちらを目指す何かが居るのがわかる。
その正体が気になってどうしようもない。自分でも訳がわからない。
地震があったせいで姉達は「環は放っておいて、危ないから避難しましょう」と騒いでいる。
なんで誰もこの禍々しい気配に気が付かないのか。
なんで、どうして、と思ったとき。
私が触れていた地面の土が、ぼこっと上へと押し上がった。
その瞬間、私は隣にいた葵様を思いっきり姉達の居る方へと突き飛ばして、自分も素早く後ろへと体を引いた。
すると私達がいた空間に、まるで茶色い温泉が吹き出すかのように、土が上へと高く吹き上がった!
誰かの悲鳴が庭に響きわたる。
ぶわぁっという音を立てて土が地面からボコボコと噴き上げ、土塊が次々とグシャリと芝生の上に落ちる奇怪な光景。
地震で地中に埋まった水道管が、破裂したかのようだと思いながら私は後ずさる。
土埃が舞う中、私は地面に開いた穴を見つめる。土の噴出は直ぐに収まったが、その穴からギチギチと金属を擦り合わせるような、歪んだ音を聞いて声をあげていた。
「これは──妖! 皆逃げてっ!!」
次の瞬間。穴からごそりと八本の赤黒い節足を持つ、赤子の大きさの蜘蛛がのそりと這い上がって来た。
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