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茈桃
地雷さん🔙or自衛
キャラ崩壊大
ご本人様関係ありません
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『大嫌いな君に、恋をした。』
――お前なんか大嫌いだ。
そう言い続けた俺が、一番お前を失いたくなかった。
# 01 顔も見たくない
桃と茈は、昔から仲が悪い。
顔を合わせれば言い合い。
隣に座れば喧嘩。
どちらかが黙れば、もう片方がわざとちょっかいをかける。
周りからは「仲がいいんだか悪いんだか分からない」と言われるけれど、本人たちにその自覚はない。
……いや。
正確には、桃だけは気づいていた。
自分が、茈のことを好きだということに。
桃「……茈、そこ邪魔」
茈「は? お前が勝手にぶつかってきたんだろ」
桃「俺、ぶつかってないけど?」
茈「記憶力終わってんのかよ」
桃「はぁ!? 茈にだけは言われたくないんだけど!」
朝から教室に響く声。
クラスメイトは、また始まったという顔でふたりを眺めていた。
桃「もういい! 茈なんか大嫌い!」
茈「奇遇だな。俺もお前なんか大嫌いだわ」
桃「ふんっ!」
桃は勢いよく顔を背けた。
……本当は。
そんなこと、思っていない。
大嫌いなんて、嘘だ。
むしろ、好きで好きで仕方がない。
茈が誰かと楽しそうに話しているだけで気になる。
茈が自分以外の人に優しくしていると、胸の奥がもやもやする。
茈が自分の知らないところで笑っていると、少しだけ寂しくなる。
こんな気持ち、知らなければよかった。
桃「……ばか」
小さく呟いた声は、誰にも届かなかった。
ただひとり。
隣の席に戻ってきた茈を除いては。
茈「……何がだよ」
桃「っ、聞いてたの!?」
茈「聞こえただけ」
桃「忘れて!」
茈「やだね」
桃「最低!」
茈は、口元だけで笑った。
その笑顔を見るたび、桃は思う。
――ああ、やっぱり好きだ。
# 02 知らない顔
昼休み。
桃は、廊下の向こうにいる茈を見つけた。
茈の隣には、別のクラスの女子がいる。
何かを話しているらしく、女子は楽しそうに笑っていた。
そして、茈も。
ほんの少しだけ、笑っていた。
桃「…………」
胸が、きゅっと縮む。
別に、茈が誰と話そうが自由だ。
自分には関係ない。
そもそも、ふたりは恋人でも何でもない。
それなのに。
桃「……やだな」
気づけば、そんな言葉がこぼれていた。
瑞「桃くん?」
後ろから声をかけられ、桃は慌てて振り返った。
瑞「どうしたの? 茈ニキのこと見てた?」
桃「み、見てない!」
瑞「え〜? めっちゃ見てたじゃん」
桃「見てないってば!」
瑞は、桃の顔をじっと見つめた。
瑞「……桃くんってさ」
桃「な、何」
瑞「茈ニキのこと、好きなの?」
桃「…………は?」
頭が真っ白になった。
瑞「だって、茈ニキがほかの子と話してるとき、すっごい顔してたよ?」
桃「そ、そんなわけないじゃん!」
瑞「ふーん?」
桃「俺があんなやつ好きになるわけないし!」
声が大きくなった。
近くにいた生徒が、ちらりとこちらを見る。
桃は慌てて口を閉じた。
瑞「……そっか」
瑞はそれ以上、何も聞かなかった。
けれど。
桃には分かっていた。
自分の顔が、きっと真っ赤になっていることも。
自分が、嘘をつくのが下手だということも。
そして何より。
茈のことを好きだという気持ちを、もう隠しきれなくなっていることも。
# 03 大嫌いの理由
その日の放課後。
桃は、ひとりで帰ろうとしていた。
いつもなら茈と一緒に帰る。
喧嘩をしながら。
くだらない話をしながら。
それが、当たり前になっていた。
けれど今日は。
桃「……先、帰ろ」
鞄を持ち、教室を出ようとした。
茈「おい、桃」
呼び止められた。
桃「……何」
茈「一緒に帰んねぇの?」
桃「今日はいい」
茈「……は?」
桃「じゃあね」
茈の返事を待たず、桃は歩き出した。
本当は、一緒に帰りたい。
いつもみたいに隣を歩きたい。
けれど、今日の茈の笑顔を思い出すと、どうしても胸が苦しくなる。
自分以外の誰かに向けた笑顔。
自分以外の誰かと過ごす時間。
それを見て、嫉妬している自分が嫌だった。
桃「……俺、何やってんだろ」
廊下の角を曲がったところで、足を止める。
その瞬間。
茈「……お前、最近変じゃね?」
桃「うわっ!?」
いつの間にか、茈が後ろに立っていた。
桃「な、何でいるの!?」
茈「お前が逃げるからだろ」
桃「逃げてない!」
茈「じゃあ、こっち見ろよ」
桃は、顔を上げられなかった。
茈「……桃」
いつもより少し低い声。
茈「俺、何かした?」
桃「…………」
茈「怒ってんなら言えよ。理由も分かんねぇまま避けられんの、普通に腹立つ」
桃「……別に」
茈「別に、じゃねぇだろ」
桃「……っ、うるさい!」
桃は顔を上げた。
桃「茈には関係ないじゃん!」
茈「……は?」
桃「俺が誰と帰ろうが、誰と話そうが、茈には関係ないでしょ!」
言ってから、後悔した。
それは、自分がずっと気にしていたことそのものだったから。
茈は、しばらく黙っていた。
やがて、小さく息を吐く。
茈「……そうだな」
その言葉が、胸に刺さった。
茈「お前がそうしたいなら、もういい」
茈は、桃の横を通り過ぎた。
桃「……っ」
引き止めたかった。
違う、と言いたかった。
本当は、関係ないなんて思っていない。
茈だから、気になるのだ。
茈だから、苦しいのだ。
けれど。
桃「…………ばか」
また、言えなかった。
# 04 いなくなるのは嫌だ
翌日から、茈は桃に話しかけなくなった。
朝の挨拶も。
授業中の小さな言い合いも。
放課後の帰り道も。
全部、なくなった。
桃が話しかければ、茈は普通に返事をする。
けれど、必要以上に関わろうとはしなかった。
それだけのことなのに。
桃には、世界が変わってしまったように感じられた。
桃「…………」
昼休み。
桃は、ひとりで弁当を食べていた。
いつもなら、隣で茈が何かしら文句を言ってくる。
「それ、うまそう」とか。
「一口よこせ」とか。
そんな、どうでもいい会話。
今は、それすらない。
桃「……つまんない」
自分で言って、自分で悲しくなった。
こんなことになるなら。
あのとき、ちゃんと言えばよかった。
本当は一緒に帰りたい。
本当は、茈がほかの人と笑っているのが嫌だった。
本当は。
桃「……好きなのに」
ぽつりと呟いた瞬間、目の奥が熱くなった。
桃は慌てて顔を伏せた。
泣きたくなんてない。
茈のことで泣くなんて、絶対に嫌だ。
けれど。
桃「……っ、やだ」
声が震えた。
茈がいない。
いつも隣にいた人が、急に遠くなってしまった。
それが、こんなに苦しいなんて。
放課後。
桃は、教室に残っていた。
茈が帰ったことは、知っている。
今日はもう会えない。
そう思ったら、どうしても立ち上がれなかった。
桃「……茈のばか」
何度も呟く。
大嫌い。
大嫌い。
大嫌い。
そう言い続けていれば、少しは楽になれると思った。
けれど。
桃「……大好き、なのに」
とうとう、涙がこぼれた。
そのとき。
茈「……桃?」
聞き慣れた声がした。
桃は、勢いよく顔を上げた。
茈が、教室の入口に立っていた。
桃「……っ、何で……」
茈「忘れ物」
茈は机の上からノートを取った。
それから、桃の顔を見た。
茈「……お前、泣いてんの?」
桃「泣いてない!」
茈「いや、泣いてんじゃん」
桃「見ないで!」
桃は顔を隠した。
恥ずかしかった。
こんな顔を、茈に見られたくなかった。
茈「……桃」
桃「……何」
茈「俺、そんなに嫌われてんの?」
桃「…………っ」
違う。
違うのに。
桃「……嫌いじゃ、ない」
茈「……は?」
桃「嫌いじゃないってば!」
桃は、顔を上げた。
桃「……茈がいないの、嫌だった」
茈は、何も言わなかった。
桃「話しかけてくれないのも、一緒に帰れないのも……嫌だった」
桃「……俺、茈と喧嘩するの、好きだったんだよ」
声が震える。
桃「茈が俺に構ってくれるのが、嬉しかった」
桃「……だから、ほかの子と楽しそうにしてるの見て、嫌だった」
もう、止められなかった。
桃「……好きだから」
桃「茈のことが、好きだから……!」
言ってしまった。
ずっと隠していた気持ち。
誰にも知られたくなかった秘密。
茈は、しばらく黙っていた。
桃「……ごめん」
桃は、俯いた。
桃「気持ち悪いよね。こんなの……忘れていいから」
茈「……何でそうなるんだよ」
桃「……え?」
茈「俺が、お前のこと嫌いだと思ってんの?」
桃は、ゆっくり顔を上げた。
茈は、少しだけ困ったように笑っていた。
茈「……俺だって、ずっと好きだったんだけど」
桃「…………は?」
茈「お前のこと」
桃「……え?」
茈「何回言わせんだよ。好きだって」
桃の顔が、一気に赤くなった。
桃「……う、嘘」
茈「嘘じゃねぇよ」
桃「だって、茈……!」
茈「お前が俺を避けるから、俺も距離置いたんだよ」
桃「……っ」
茈「正直、結構傷ついた」
桃「……ごめん」
茈「……もういい」
茈は、桃の前にしゃがんだ。
そして、そっと顔を覗き込む。
茈「……泣くなよ」
桃「……茈のせいじゃん」
茈「はいはい。俺のせいでいいよ」
桃「……ばか」
茈「お前もな」
桃は、涙を拭いながら笑った。
久しぶりに。
茈の隣で、笑うことができた。
# 05 大嫌いな君へ
それから数日。
ふたりの関係は、少しだけ変わった。
相変わらず喧嘩はする。
言い合いもする。
けれど、以前より少しだけ素直になった。
茈「桃、今日一緒に帰るぞ」
桃「……命令?」
茈「嫌ならいいけど」
桃「……嫌じゃない」
茈「ん」
桃「……茈」
茈「何?」
桃「……手、繋いでいい?」
茈は、ぴたりと足を止めた。
茈「…………は?」
桃「だ、だから! 嫌ならいいってば!」
茈「……いや」
茈は、桃の手を取った。
茈「嫌じゃねぇよ」
桃「…………っ」
指が絡む。
たったそれだけなのに、胸がいっぱいになった。
桃「……茈」
茈「ん?」
桃「……好き」
茈は、少しだけ目を見開いた。
それから、桃の手を握り直す。
茈「……俺も」
桃「……ほんと?」
茈「何回確認すんだよ」
桃「だって……嬉しいんだもん」
茈「……そっか」
茈は、少しだけ笑った。
茈「じゃあ、何回でも言ってやる」
桃「……え?」
茈「好きだよ、桃」
桃は、顔を真っ赤にした。
桃「……っ、ばか!」
茈「何でだよ」
桃「……好き!」
茈「知ってる」
桃「……もう!」
茈は笑いながら、桃の手を引いた。
夕暮れの帰り道。
ふたりの影が、並んで伸びていく。
桃「……ねぇ、茈」
茈「ん?」
桃「俺、これからもたぶん、めんどくさいよ」
茈「知ってる」
桃「すぐ嫉妬するし、不安になるし……」
茈「うん」
桃「……それでも、いいの?」
茈は足を止めた。
そして、桃の目をまっすぐ見つめた。
茈「……お前だから、いいんだよ」
桃「…………っ」
茈「ほかの誰でもねぇ。お前がいい」
桃は、ぎゅっと茈の手を握った。
桃「……俺も、茈がいい」
もう、大嫌いなんて言わない。
……なんて。
桃「……でも、茈のばか!」
茈「はぁ!? 何でだよ!」
桃「何となく!」
茈「お前なぁ……!」
いつものように言い合いながら、ふたりは歩き出した。
大嫌いだったはずの君。
顔も見たくないと思っていた君。
けれど本当は。
誰よりも近くにいてほしかった。
誰よりも、自分を見ていてほしかった。
だから、これからは。
大嫌いの代わりに、何度でも伝えよう。
「……茈、大好き」
「……俺もだよ、桃」
――END――
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suicide@3作連載中
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けいか🎼
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#からぴち
コメント
4件
お姉ちゃん最高👍️
わあ、完結おめでとうございます…! 第6話、胸がぎゅっとなる展開の連続でしたね。桃が「嫌いじゃない」ってやっと声に出せたシーン、そして茈が「ずっと好きだった」って返した瞬間、本当にホッとしました。大嫌いの裏側にこんなにまっすぐな好きが隠れていたんですね。最後の帰り道で言い合いしながらも手を繋いで歩く二人が愛おしいです。素敵な物語をありがとうございました!