テラーノベル
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小鳥のさえずりで目が覚めた。
樹の身体には毛布がかけられている。
昨日のことを思い出して少し恥ずかしくなった。
『ピンポン』
家のチャイムが鳴った。恐る恐るドアを開けるとそこには、
「大丈夫だった?」
「はい、東屋さん、昨日はすみませんでした、」
丁度このタイミングで来たのが少し複雑だった。
「全然大丈夫だよ。そういえば、」
彼女はケータイの画面を樹に見せた。
そこには「事件の犯人が逮捕された。」という刑事のメッセージが入っていた。
「え?本当ですか!?」
早く見つかってよかったという思いと、また何もできなかった無力感が同時に存在した。
が、驚きに満ちた樹とは反対に東屋の顔は深刻だった。
「本当には本当だけど。正しくいえば半分本当、だね」
首を傾げた樹は詳細を聞いた。
「同一犯じゃない…ってことですか?」
「まあそういうことだね。組織的なものだったらしい。」
それならバツ印の意味もわかる。
偽造だ。
決して愉快犯などの類ではなく、同じ印をつけることで誰かが捕まってしまったときに「犯人は一人」という偽造ができる。
つまりは犠牲を最小限に抑えるための行動だったのだろう。
「ん?」
何かが頭の中でつっかえた。
「だったらなんで東屋さんや刑事さんはそれを知ってるんですか?」
「売ったんだよ。たまたま捕まったやつが薄情だったんだね。」
「じゃあその人から残りの犯人は教えてもらえるじゃないですか!」
すると東屋は残念そうに言った。
「言わないんだ。」
「…え?」思わず聞き返した。
「誰の指示で、とか。誰と一緒にっていう質問だけはまったく答えないんだ。…いや、答えれないと見るのが正しいだろうね。」
「それってどういう?」
「『誰が指示役か』って聞いた時震え出すの。」
「動機は何だったんでしょうかね。」
尋ねると「あくまで推測だけど」と言われた。
「お金だと思うよ。」
?が脳内を埋め尽くす。
被害者のお金は一切盗まれていなかった、冷静に考えて絶対違うだろう。
が、東屋が言っているのが余計に不思議だった。
「お金は盗まれてなかったんですよ?怨恨じゃ…?」
「怨恨だったら命令する側にあるでしょ。」
確かにと頷くと東屋は樹に問う。
「西ヶ谷君、闇バイトって知ってるよね?」
「はい、最近巷で有名な犯罪の手口ですよね。」
「うん、私の読みだと同じように上の人からお金が出るんだと思ってる。
殺したらお金が出されます、的なシステム。」
「…?でもそれだったら直接奪ったほうが楽なんじゃ…?お金も独占できるし。」
疑問が残る樹のためにどこから持ってきたのかわからないミニホワイトボードを出した。
「まあ簡単に言えば『罪の重さ』と『金額』かな。」
『罪の重さ』と書かれた下に東屋は「殺人罪」と「強盗殺人」と書いた。
「いいかい、殺人罪の場合はこうだ。」
死刑、または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役 と書き入れる。
「そして強盗殺人は…こう。」
死刑、または無期懲役のみ と反対側に書いた。
「今回は捕まった人がばらしちゃったけど、一人が罪を負うなら軽いのは殺人罪だ。」
「なるほど、もし捕まっても比較的軽い刑になるんですね。」
「そう。これは『指示役』も『実行犯』も互いに理解してるんだ。」
指示役→殺してもらいたい、物は奪うなよ
実行犯→あくまでお金は指示役から貰う
「捕まった奴はスマホもケータイも全部捨ててるから指示役がわからないんだ。とりあえずはそいつを捕まえなきゃ始まらないね。」
「そうですね…。」
その時ケータイがけたたましく鳴った。
コメント
1件
読み終わりました。今回のエピソード、東屋さんの説明がすごく丁寧で「なるほど、そういう仕組みか」と腑に落ちる感じが気持ちよかったです。ミニホワイトボードまで出す演出、良いですね。樹くんの「また何もできなかった無力感」にもグッときました。犯人が組織的で、罪の重さを調整してるって構造、物語に深みが出てますね。続き、めっちゃ気になります…!