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今思えば、あの時だ、、、あの時から僕の人生の歯車は、
狂ってしまったんだ。
天人五衰にスカウトされてから、沢山の人間を手にかけて来た。
何人も、何十人も、何千人も殺した。
政府の要人も、関係のない一般人も、
みんな、みんな命乞いをするんだ
「たすけて」
「なんにもしてないのに、」
「どうか、娘だけは」
って、どんなに奇麗に丁寧に手間隙掛けて化粧されていても
涙でぐちゃぐちゃになって崩れているのに、
叫んで、泣いて、、、中には、
抵抗して僕に襲い掛かってくる人間もいた。
「この、、悪魔が!!!娘を、娘を返してくれ!!!!」
拳銃を持っている人間に生身の人間が立ち向かっても
歯など立たないと知っているのに立ち向かって来た彼は、彼女達は、
独りの人間などではなく”子供の親”として、僕に刃を向けた
其れが、今直ぐ泣き出して顔を覆い隠して仕舞いたく成る程に僕のこころを追い詰めた。
僕の両親は、、、、嘘でも良い親では無かった。
家の名誉だけを護る為に無理をさせて分単位で行動管理されたり、
顔も知らない誰かによって僕の此の瞳に
永久に十字架が刻み込まれた時だって、
まだ幼い僕を捨てて真っ先に逃げ蒸発した。
本当は両親から愛されたかった、護って欲しかった
そんな事を考えようと僕は、紛れも無い人殺し、悪魔だって現実を突き付けて来るのだから。
何時しか、人間を手に掛ける時、笑う様になった。
どんなに笑いたくなくても、どんなに苦しくても笑う事を辞められなかった。
そんな荒んだ精神を治してくれたのが、シグマ君だった。
彼は常識人で、真面目で、優しくて、その人柄に惚れて行って悶々とした日々を過ごしていた。
とある日、ずっともじもじして待っていても仕方が無いと
振られることを覚悟で、叶わないと分かっていても彼に告白した
今でも信じられないけど、
結果は成功で彼も僕を想ってくれていたらしい。
こうして始まった僕らの幸せな恋人生活は、
長く続く事も無く、刹那に終焉を迎えた。
お互いに束縛はしない約束で、
仕事がある日でも毎日電話したり、
仕事が無い日にはデートに行ってみたり、
僕らの関係は順調かの様に思えた。
_____________ドス君が、死ぬまで、
ムルソーでの色々の後、彼の関係者だけで葬儀が行われた
勿論其処には我が恋人も出席していて、
中には泣き出す人も居る位に重苦しく暗い雰囲気だった。
「ふふ、あは、」
突然の親友の死。
其れは治った筈のソレを再発させるには、
十分過ぎる物だったのだろう。
何とか堪えて居た笑いは、
彼の死に顔を見送ると共に限界を迎えた
「あははははは!!!!!はは!!!」
葬列者の人々の視線が、
葬式の場で親友の死に大爆笑している僕に釘付けになる
嗚呼、辞めてくれ、違うんだ、
「おい、洒落にならないぞ。辞めろ」
腹を抱えて笑いを続ける僕をギロリと睨み付けて、シグマ君がそう叱る。
分かってよ、とまれないんだ、苦しいよ、そんな顔、しないで
「ははははは!!!!!!」
叱られても尚、笑い続ける僕に会場の空気が凍り、彼の目線が失望や、嫌悪や憎悪に変わってゆく、、、
「良い加減にしろ!!」
そう叫んだシグマ君の声で会場が静かになる。
身体に大きな衝撃が走って気付いたら、
頬を抑えて尻餅を着いていた。
「来い!!お前に、失望した」
今までで一番悲しそうな顔をして、
彼は僕の後襟を掴み引き摺って会場から僕を追い出した。
そして他の誰でもない僕のせいで修羅場と化した会場は、
再び平穏を取り戻した。
「私は、お前がそんな酷いやつだとは、おもわなかった、
別れてくれ、もう声も聞きたくない」
僕に背中を向け、式場へと戻ろうとする彼の声は
震えていて涙汲んでいた。
ごめんね、僕のせいで、
そんな彼の去り行く背中を見届けられなくて、
チラリと見えた脚首に縋り付いた
「ちがうの、しんじて、すてないで、、、、」
振り返ったシグマ君は普段からは想像出来ないような冷淡な目線で蔑むように僕を睨みつけた。
「笑いながら良く言えたな。その笑顔が、気持ち悪いんだよ
じゃあな。」
厄介そうに脚をぷらぷらと振って手を追い払った後、
彼は式場に戻った。
その一言で初めて、笑っている事を自覚した。
嗚呼、何で笑っちゃうんだろう、
“普通”になりたい、笑わないように、
ちゃんと悲しめる様になりたい、、、
そうなれば、また元通りになれるかな、?
淡い希望を抱いて、僕は家に帰った
途中のコンビニで買ったカッターナイフを、握り締めて。
天人五衰解散後、
太宰治の誘いで武装探偵社の社員になった
確かに個性豊かな周りの人達に振り回される事が日常茶飯事だったが、それなりに楽しかった。
なのに、常に心の何処かで少し何かが足りない気がしていた
その気持ちを無視して
社員として仕事をこなしていた、ある日。
太宰治からこんな事を聞かされるまでは
其れは、仕事の大方片付いた昼下がりの事だった。
今は上司である太宰治からいきなり声を掛けられたのだ
「シグマ。ニコライが姿を消したらしいのだけれど、
探しに、行かなくて良いのかい?」
彼には私とゴーゴリの関係等、話していない。
だが、決して何時ものからかいでは無く、
やけに其れを信じざるを得なかった。
「別に良い。彼奴はヒョードルの葬儀ですら嗤っていたんだぞ?人を殺す時さえも嗤い続けて、もう顔も見たくない。」
私の呟く様な一言を聞いていた太宰治が、何かを察した様に顔を歪ませた。
一体、何なんだ?
「シグマ。今直ぐ行ってあげた方が良い。
君の事だから、正義感が勝って強く言ったのだろうけど。
其れは心の病だ。まだ間に合う」
そう言って半ば強引に少し早く退社させられてしまった
と言われても思い付く宛てなんて、、、、、、、、、昔、彼と交際していた時に同棲していた別荘。
確か、何時でもカジノに遊びに来れる様に其処にして
彼を置いて私が出ていってしまったから、もしかしたら、
ないと分かりつつ、そこら辺のタクシーを呼んで、例の別荘へと向かった。
財布の隅に仕舞っておいた少し錆びた鍵を数年ぶりに取り出し、鍵穴へと当てた
「ッッッッ、、、、、、、、、、、、何だ、この臭い、」
扉を開けた瞬間、鼻の奥をツンと刺すような刺激臭に思わず一歩退いてしまった。
これ、全部血液なのか、、、、、、?
曲がりそうな鼻を塞いで、重い足取りで臭いの根源であろう
私が使っていた書斎部屋へと足を踏み入れた。
「、、、、、、、僕、遂に幻覚が見えるようになったの、?
だって、声も聞きたくないって、」
予想は見事に的中し、眼を丸くした彼がぼーっと此方を見つめていた。
後ろを向いていて顔こそ見えなかったが首に刃先を充てがっていて、正に一触即発の瞬間だった。
「そうだ、やっぱり、そうだったんだ、
ねえ、見てよ!もう笑わなくなったよ!気持ち悪くなくなったよ!」
少し歓びを隠せないのか震えた声で彼は言う
何のことだか分からずそのまま呆然と彼を見つめていると彼が振り向く
私は、何も知らない純粋無垢な少年のように微笑む彼の顔を見て絶句した、
何故ならば口の端が糸で縫われていたからだ。
床には大量の血の斑点が遺されており、彼自身でやったのだと確信した。
「何で、こんな事をしたんだ、」
まだ、私は知らなかった、だからこんなことを言えたんだ。
彼の異常な程の笑う事への、憎悪を。
「、、、、、、、なんで、また、そんなかお、して、、、、もしかしたら、わらってた、?」
不安そうに此方を覗き込むゴーゴリの目は
既に焦点が合っておらず其れが更に今の彼の異常さを物語っていた。
「え、、、、、、、、あ、」
どう声を掛ければいいのか分からず、動揺していたのを察したのか、彼が頭を抱え出した
「う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!!
はやく、ハヤク、直さないと、直さないと、直さないと、直さないと」
急に咆哮を上げた彼は壊れた玩具の様に直さないと、と小声で繰り返す。
余りにも凄まじい異様さに唖然としていたが、
腕に徐に刃先を宛がい始め、遂には首に突き立てられやっと身体が動く
「なんで、どう、して、?やめて、、らくに、なりたいの、もう、わらいたくないの、、、
しんだら、わらわなくていいのに、」
顔を涙でぐちゃぐちゃにしながらも、そんな状態だとしても
笑い続ける身体にきっと嫌気が差していたのだろう
取り上げられたカッターナイフを奪い返そうと力無く抵抗していたが、
落ち着いたのか、徐々に抵抗を辞めた
「はやく、なおさせてよ!!!!なんでじゃま「ごめんな、、、ごめんな、ごめんな、」
声を荒げる彼を抱きしめた。
数年ぶりに触れた身体は、ほっそりとしていて今まで碌な生活を出来なかった様だった
驚いているのか、口を閉じた彼をただただ強く抱き締めた。
「私があんな事、言ったから、、、、どうか、愚かな私を、許してくれ、」
力無く抱き締め返されたのをただ、感じていた。噛み締めていた
「なあ、、、、もしも、私達がもう一度やり直せたら、、、、、、、、、何でもない」
此方に向けられた輝いた瞳に気付く事などなく、私は開き掛けた口を閉じる
「、、、、、、、、そっかぁ、」
ぽろぽろと溢れる涙は見ないふりをして、この場を去った。
もしこの時、やり直していても、何にも変わらなかっただろうな、
そう思い込まないと私はきっと、壊れてしまうだろうから、
葬式には顔を出せず、最後の姿だけ見せて貰って墓参りに来た。
彼の好きだったピロシキと花を添えて、黙祷をして、、、それから、それから、
「この、莫迦、、、、死んでも笑ってた、じゃないか、
どうせ、変わらないくらいなら、、、一緒に生きたかった、、」
墓石の前で座り込んで、一人泣き叫んだ。
誰でもない。私のせいで彼は死んだ
数年間ずっと、ずっと、笑ってしまっては自傷をして、無理矢理直そうとしていたから、
駆け付けた頃には出血多量で、手遅れだったようだ、
ごめんな、もっと早く気づけていれば、
「今、逢いに、行くからな、」
私を愛したのも、私が愛したのも、君だけだから
下がりきらない口角は其の儘に、それでも
一晩中、もうどうしようもない彼への愛を、泣き叫んだ。