テラーノベル
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ポツポツと地面に落ちてくる雨がアスファルトに沁みていく。
じわじわと濡らして、一面の色が濃くなった。
ネイルサロンの看板を店内に入れて、外を見る。
「雷、鳴らないですよね?」
レジで会計していた店長の白鳥さんが、んん?と此方を向いた。
白鳥さんはこのネイルサロン『LOFTY』のオーナー兼ネイリストで、元モデルの長身美人。十年以上常連のお客様もいるけど、年齢不詳。
二階のヘアサロン『NOBLE』のオーナーが旦那さまで、共同経営している。
そんなオーナーと私と、女性スタッフ三人の計五人で、ネイルとネイルスクールをしている。一応、雑誌に載るぐらい技術力も人気もあると自負している自慢のサロンだ。
「貴方、雷が駄目だったよね。車で送っていくから、着替えて待ってなさい」
「いいんですか」
「もちろん。嫌な時期になってきたね。梅雨に入ったら、雨ばっかで雷の様子を窺わなきゃいけないんだから」
白鳥さんはクスクスと笑いながら、私の不安な気持ちを和らげようとしてくれた。
着替えて裏口から駐車場に出たら、雨の音が更に酷くなっていた。
裏口の屋根に打ち付ける雨は、怖くない。
ただ一度、家の庭の木に雷が落ちてから、どうしても雷が駄目だった。
あれは小学校低学年の頃だろうか。
初めてお留守番をしていた日。
雨が激しくなり、犬小屋の中で震えているリュウを家の中に入れようと玄関を開けた時、目の前の桜の木に光が刺さるように落ちてきて、地面が震えふるほど大きな音とともに木が真っ二つになった。
粉々になった枝と煙、一向に止まない雷。
その後、雷が苦手と知り、雨の日に教室に閉じ込められたこともあり、すっかりトラウマだったりする。
「あら、ごめんなさいね。今日はもう閉店なのよ」
裏口の屋根の下も怖くて、ドアの中へ戻ると、白鳥さんがお客と話をしていた。
「指名するなら、予約とってからの方がいいわ。タイミング悪かったら、一時間待つなんてざらよ。さ、閉めるから出てちょうだい」
追い出すように捲し立てると、閉店作業に取り掛かった。
でもいつもお客には丁寧に対応するのに、今のは冷たい態度だったので少し驚いてしまう。
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