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24 - 第二十四話「ひとつのメロディ」

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2025年07月25日

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スタジオ――


ギターの弦が、静かに震える。

その音に、ピアノ、ベース、ドラムが順に重なり、部屋全体が“音”に満たされていく。


俺は、ギターを抱えたまま目を閉じた。

もう、怖くない。

ここにいるこの音が、俺を“今”に繋ぎとめてくれている。


ないこ(心の声):

「……思い出す。初めてみんなと音を合わせたときのこと。

 あの時も……言葉より、音のほうが先だった」


あの頃よりも、ずっと不器用で、

でもずっと、強い音を出せる気がした。


ふと、隣から初兎の声が聴こえる。


初兎: 「なぁ、ないこ。……いや、もう“俺”って言っていい?」


俺は黙って頷いた。


初兎: 「やっぱ、お前がギター弾くと、空気変わるんだよな。……ちゃんと、戻ってきたんだなって思う」


いふが笑いながらピックを口に咥えて、少し照れたように言う。


いふ: 「これでまた、新曲作れるな。お前の音、やっぱクセになるわ」


悠佑: 「次は“6人で歌う”やつ、やろう。お前の声、待ってたから」


いむ: 「お前が出した“最初の音”が、俺ら全員のスイッチ押したんだよ」


りうら: 「お前、音で殴ってくるタイプだったっけ?」


俺は苦笑して、肩をすくめた。


ないこ: 「……殴るつもりはないけど。……“ぶつけたい”とは思った」


その言葉に、みんながちょっとだけ真顔になる。


ないこ: 「逃げたのは俺だ。

 けど……それでも“残ってた音”に、俺自身が救われた。

 ――だから、次は俺が返す番だ」


りうらが、満足そうに笑って言った。


りうら: 「“返す”って、言えるなら、もう大丈夫だな」


その言葉に、ふと胸が熱くなる。

そうだ。俺はもう、大丈夫だ。



その日、俺たちは一曲の原型を作った。

タイトルは、まだない。

でも、それぞれのパートが少しずつ形になり、声と音が絡み始めた。


歌詞のないメロディ。

でも、その旋律は、俺たち“6人”の想いだった。


録音の途中、ピアノが止まる。

初兎が、ぽつりと呟いた。


初兎: 「なあ……お前、さ。今、幸せか?」


不意を突かれた。

でも、すぐに答えは出た。


ないこ: 「……わからない。でも、ここにいれるのは、嬉しいって思う」


たったそれだけの言葉が、今の俺のすべてだった。



スタジオの隅、モニターには“録音中”の表示が光っていた。

その下に、ファイル名が自動で入力されていた。


まだ仮タイトル。

けれど、それは“俺の始まり”を記録する、最初の音だった。




次回:「第二十五話:それぞれの場所で、それぞれの声で」へ続く

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