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大学近くにあるイタリアンレストランに入る。
ランチタイムには、学生や一般客で賑わうが、今日はスムーズに席に座ることができた。
「ここのランチ美味しいんです。おススメはですね……」
優菜が蓮さんにメニューについて説明をしていた。
目の前には、蓮さん、隣には親友の優菜がいる。
私にとって大好きな人と食事をすることは、幸せを感じる瞬間だった。
「蓮さんは、愛のどこが好きなんですか?」
料理が運ばれてくるまでの間、優菜が蓮さんを質問攻めにしていた。
「ちょっと、優菜」
私もさすがに失礼だと思い、止めに入る。
「そうですね、全て好きです」
彼は嫌な顔せず、恥ずかしげもなくそう答えた。
「それじゃ、ダメです。具体的に言ってください」
優菜も引き下がらなかった。
「優しいところ、可愛いところ、気を遣えるところ、美味しそうに食べるところ……。他にもありますが?」
私が恥ずかしくなって蓮さんの言葉を止める。
「いいな、めっちゃラブラブじゃないですか……」
頬杖をつきながら、優菜が険しい顔をしている。
「愛は蓮さんのどこが好きなの?」
「えっ?」
「俺もそれは知りたいです」
蓮さんも教えてくださいと言う。
「私も蓮さんの全てが好きです」
思わず、顔が赤くなる。
「だから、それじゃあ答えになっていないじゃん」
優菜が具体的に、と突っ込んできた。
「優しいところ、カッコいいところ……。他も全部好き」
細かいところまで伝えていたら、恥ずかしすぎてランチが食べられなくなりそう。
優菜が
「いいなぁ……!いいないいなぁ」
何度も繰り返していたのを覚えている。
三人で昼食を終え、蓮さんは仕事に戻り、私たちも次の講義へ向かうことになった。
「ごちそうさまでした!でも、本当にいいんですか?」
昼食代は、蓮さんが私たちの分まで払ってくれた。
「愛はともかく、私は払いますよ?」
優菜が財布を取り出す。
「気にしないでください。これでも社会人ですから。楽しかったです。また機会があったら行きましょう」
そう彼は伝えて、仕事に戻って行った。
大学に戻り、講義が始まるまで二人で席に座って待っていた。
「蓮さんめっちゃイケメンだった!正直、あんなにカッコいいとは思わなかったよ!すごく優しいし、私がいろんなこと聞いても、面倒くさそうに答えないし、マジ紳士!」
なぜか優菜のテンションが上がっている。
「愛と蓮さんを見てね、いいなって思ったのは本当だよ。私もいつまでもズルズル恋愛していないで、新しい恋をしてみようかな」
優菜は彼氏がいるが、彼のサークル活動のためすれ違いが多く、うまくいっていない。
「別れようって伝えてみる」
前々から「別れてやる」というのは彼女の口癖だったが、今日は本当に伝えるつもりなのかもしれない、そう感じた。
「私、優菜の味方だから。何かあったら言ってね」
私も人のことは言えないが、優菜も一人で抱え込んでしまうことがあるため心配だ。
「もちろんだよ、別れたら言うから!そしたら、飲みに付き合ってね」
「はいはい、わかりました」
そんな会話をしていた時、後ろから声をかけられた。
「ねえ、愛ちゃんと優菜ちゃん、聞きたいことがあるんだけど……」
話しかけてきたのは、同じ学年の藤原 真帆《ふじわら まほ》だった。
後ろには二人の女の子もいる。
彼女とは、ゼミ(クラス)は一緒だが、仲が良いわけではなく、ゼミの履修の時に、会話をする程度だった。
学内ではいつも三人でいるイメージだが、他の二人は違うクラスのため全く面識がない。
彼女は、容姿がよく性格も社交的だった。学内の男子が何人か告白をしたという話も噂で聞いたことがある。
「聞きたいことってなに?」
優菜が先に答えた。
優菜は彼女たちのことを嫌いだと前に言っていた。
理由は話すと思い出すから、話したくないと言って教えてはくれなかったが。
「さっき、大学の門の前にいて一緒にどこかに行った男の人って友達なの?すごくカッコいい人」
ドキッとした。
蓮さんのこと、見られてたんだ。
「私の彼氏だよ」
その瞬間
「えっ!愛ちゃんの彼氏なの?嘘でしょ?どうやって知り合ったの?騙されてない?大丈夫?」
彼女の酷い返答に、何も答えられずにいた。
「騙されてないよ。大丈夫」
作り笑いをしているが、ぎこちなくなってしまっている。
「彼氏なんだ。そっか。じゃあさ、今度紹介してくれない?」
どうして仲良くもない子に紹介をしなければならないの?
「なんで真帆ちゃんに紹介なんてしなきゃいけないの?あんまり私たち関わりないよね?」
優菜が助け船を出してくれた。
「いいじゃん!私、あの人のこと一目惚れしたの!」
私は作り笑いもできないほど、言葉を失った。
この子は、こんな性格をしていただろうか。
ゼミでは普通に会話ができていたはずなのに。
「いや、おかしいでしょ?人の彼に一目惚れしたからって紹介して欲しいって」
優菜はもっとものことを返答してくれた。
「いいじゃん、ケチ!」
「ケチ!?」
優菜と真帆ちゃんがケンカをしそうになったため、私も向こうの女の子も止めに入る。
「私、諦めないから」
そう言って彼女は遠い席に座った。
「何あれ?ムカつくんだけど。頭おかしいんじゃないの?」
優菜は完全に冷静さを失っているようだ
とはいっても、私もとても冷静とは言えなかった。
「真帆ちゃんさ、最近人気の先輩と付き合ったって聞いてたし。それも彼女がいたにも関わらず、アプローチを続けた結果付き合えたみたいな。まあ、あんな子と付き合う先輩もどうかしていると思うけど。男の人の前ではいい子だからさ。まあ、容姿は可愛いからね」
「蓮さんはあんな子なんか興味ないと思うけど、気をつけなよ?って言っても、どうしたらいいのかわからないけど」
私は、彼女みたいに容姿も良くないし、性格も明るい方ではない。でも、蓮さんは私の彼氏だ。それは譲れない。
「彼女の諦めない」を真剣に忠告として受け取っていなかった結果、あんなことに巻き込まれるなんてこの時は予想もしていなかった。