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第57話 「王者の春」
2022年4月。
センバツ優勝から数日後。
柳城高校に優勝旗が帰ってきた。
正門前。
全校生徒が集まる。
拍手。
歓声。
吹奏楽部の演奏。
まるで祭りだった。
優勝旗を持つ主将・佐伯。
後ろには塁や史陽たち。
生徒たちの視線が集まる。
「全国優勝校やもんな」
「テレビで見た!」
そんな声が聞こえてくる。
だが。
野球部員たちは少し居心地が悪そうだった。
昼休み。
塁は購買へ向かう。
すると生徒達が道を開ける。
「塁君!」
「頑張ってください!」
塁は戸惑う。
今までそんなことはなかった。
史陽も同じだった。
教室へ戻る途中。
女子生徒から声を掛けられる。
「優勝おめでとう!」
史陽は苦笑する。
「ありがとう」
以前の柳城にはなかった光景だった。
放課後。
グラウンド。
新一年生の入部希望者が集まっていた。
その数。
過去最多。
福間監督も少し驚いていた。
「優勝の影響やな」
部長が言う。
監督は頷く。
だが。
「強くなるかは別です」
いつもの福間監督だった。
新入生たちは憧れの目で選手を見る。
その中には。
塁や史陽の背番号に憧れて入ってきた生徒もいた。
柳城は変わり始めていた。
かつての古豪。
今は全国王者。
その日の夕方。
おっちゃんの店。
優勝祝いの新聞記事が壁一面に貼られていた。
「全国優勝かあ」
おっちゃんがしみじみ言う。
「啓介の代でも届かんかったのにな」
おばちゃんも頷く。
福間監督は黙ってお茶を飲む。
しばらくして。
おっちゃんが聞く。
「監督、次は春夏連覇か?」
店内が静かになる。
選手たちも耳を傾ける。
福間監督は少し考えた。
そして答える。
「そんな簡単なもんじゃないです」
甲子園優勝。
それはゴールではなかった。
全国の高校が柳城を倒そうとしてくる。
研究される。
追われる。
今までとは立場が違う。
店を出た帰り道。
佐伯が空を見上げる。
春の夜空だった。
「全国一か」
まだ実感はない。
だが。
夏まであと三か月。
挑戦者だった柳城は。
王者としての夏を迎えようとしていた。
第57話 終
#一途
shima7a
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コメント
1件
みぅだよ🤍🥀 「王者の春」、読んだよ…。 優勝してからの周りの空気、すごくリアルだったな。全校生徒の熱狂、後輩たちの「塁先輩!」って声、購買に行くだけでも道が開けるって、重みだよね。 でも、何より心に残ったのは福間監督の「強くなるかは別です」って言葉。勝ったあと、どうやって自分たちを保つか。むしろここからが本当の戦いだって匂わせてて、ぞくっとしたよ🌙 佐伯が空を見上げるシーン、まだ実感がないって…その、掴みきれない栄光の大きさと、王者としてのプレッシャーがちゃんと伝わってきた。うん、静かだけど重い春だね。続き、気になるよ…。