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遡る事、中学1年。
俺は、親の仕事の都合で東京へ引っ越して来た。
俺の名前は、降星爽。
仲が良かった友達とも、一緒の中学校へ行けなかった。
だだっ広い野原が広がる俺の地元には、小・中・高と1つづつあった。
大学は、ない。
上の学年に上がるにつれ、都会へ出たい人は
皆地元を離れて行く。
でも、俺は都会へ出たくなかった。
それなのに・・・
皆と別れるのが嫌で、何度も親を責め泣き倒した。
引っ越しが決まったその日から、今日まで親を 無視して来た。
そして、今日が新しい中学校の入学式。
凄く嫌だ!
嫌過ぎる!
晴翔・弘樹・剣聖・・・
お前らがいなくて、俺はやって行けるのか?
不安で押し潰されそうだ。
皆から貰った色紙を見ながら、心の中で話しかけた。
その色紙には、(爽!
離れ離れになるけど、元気でな!
また、いつでも旅行がてら帰って来い!
俺達は、いつでも此処で待ってるから!
寂しくなったら、電話して来い!
爽だったら、すぐ友達出来るよ!
東京で可愛い彼女ゲットしろ
俺達も、彼女欲しい!
俺達は、お前を応援してる!)
と書いてある。
そっか。
俺には、何かあったら帰れるHOMEがあるんだ。
暖かく迎え入れてくれる仲間達がいるんだ。
頑張らなくちゃな!
やっと冷静になれた。
「爽!」
1階から、お母さんの声が聞こえた。
仕方ない。
今日から口聞いてやるか。
「何?」
「やっと、答えてくれた・・・
降りてらっしゃい!
朝ご飯食べて、行きなさい!」
とお母さんは、大声で俺を呼んだ。
「はーい」
俺は、久しぶりに1階へ降りた。
今まで、ずっと両親の顔を見たくなかったし口を聞きたくかなったから全ての事を2階でしていた。
ご飯も、トイレも、テレビも、ゲームも、歯磨きも、 寝るのも。
どうしても2階にない物は、仕方なく1階へ取りに行きすぐに2階へ上がっていた。
「久しぶりね、爽
本当に、悪い事したと思ってるわ・・・
ごめんなさいね・・・
きっと、新しい中学でも楽しいわよ!」
「うん・・・
そうだな・・・
頑張る・・・」
と俺は、朝ご飯を食べながら低い声で言った。
「あなたは、すぐに色んな人と親しくなれるから
大丈夫よ!
自信持ちなさい!」
「今回は、違うんだ・・・
あいつらは、特別何だ・・・」
やっぱり、また弱音が出てしまった。
3人が応援してくれてるのに!
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
俺は、家を出て中学校へと向かった。
家から徒歩15分の、音葉中学校。
音葉中学校へ到着。
入学式は、11時半から。
「俺なら大丈夫!」
気合いを入れて、正門から校舎へ入った。
そして、指定された教室へ行った。
俺の席は何処だ?
確認すると、4列目の前から3番目だった。
「此処だな」
自分の席に座って、少しした頃。
隣の席に、髪の長い女子が座った。
可愛い・・・
俺は、その子に釘付けになった。
すると、その子は
「ん?
私の事気になる?
私榎本希
宜しくね!」
と笑顔で言った。
声も、可愛い・・・
「えっ
お、俺降星爽
宜しくな」
何だか恥ずかしくて緊張して、ぎこちなくなってしまった。
嬉しいのに、何でだろう?
「何で、そんなに緊張してるのよ!
降星って、珍しい苗字だね!」
「だって・・・
あぁ
今まで出会った事ないな
降星って苗字の人に
綺麗な髪の毛だな!
榎本、昔から髪長いのか?」
「私の事、希って呼んで!
ね!爽!
私、初対面の人でもグイグイいくタイプ何だ!
ありがとう!
そうだよ!」
今爽って呼んだ・・・
俺だってグイグイいくタイプだけど、彼女には無理かも・・・
「俺もグイグイ行くタイプだけど、君にはちょっ と・・・」
俺は、顔が赤くなるのを感じた。
「顔赤いよー
何で?
大丈夫だよー!
フレンドリーだったら、なおさら!」
「そ、それは・・・」
「それは?」
彼女が、返事を期待気味に待っている。
「の、の、希の事が好き!」
思い切って告白した。
「それって一目惚れって事?」
希の顔がバラ色に染まった。
「そうだ!」
少し2人の間に沈黙が流れた。
すると
「おい!
後10分で入学式だ!
移動しろ!」
と先生が皆に指示を出した。
「行こっか?」
「うん!」
結局希の返事は聞けなかった。
でも、ごめんなさいとは言われてないから大丈夫かな。
そして、体育館へと向かった。
席に着くと、通路を挟んで3個目の椅子に希が座っていた。
彼女は、俺に気付くと小さく手を振って微笑んだ。
俺もそれに手を振りかえして笑った。
入学式がスタート。
校長先生の話、長ー。
ふと希の方を見ると、彼女はあくびをしていた。
そりゃそうなるよな。
やっと終了した。
式自体は、1時間程度だった。
教室へ戻ると
「お前ら、入学おめでとう!
今日から1年間、このクラスの担任をする
笠原真太郎だ
宜しくな!」
少しして、先生が俺を呼んだ。
「降星、お前田舎から来たんだろ?
ちょっと皆に地元の事紹介してくれないか?
こいつらずっと都会育ちだから」
え・・・
俺が地元の事を紹介?
何を話せば良い?
戸惑っていると、希が
「私、爽の地元の話聞きたい!」
とテンションを上げて言った。
「本当に?」
「皆も聞きたいよね?」
希は、皆に聞いた。
「聞きたーい!」×39
ハ〜
しょうがない。
「分かった」
「やったー!」
希は、無邪気に喜んだ。
俺は、皆の前へ出た。
「えーと、初めまして、降星爽です
俺の地元は、だだっ広い野原が1面に広がっていました
東京みたいに、オシャレなお店何て1つもありませんでした
商業施設等も、勿論ありません
子供が少なく、高校生までで約20人程
小・中・高が、1つづつ
大学はありません
上の学年になるにつれ、都会へ出て行きたい人は地元を離れて行きました
買い物は、俺の家から山を2時間かけて降りてそれでもこじんまりしたスーパーしかなくそこで買っていました
どうしてもない物は、親が何時間もかけてあるいは泊まりがけで都会へ買いに行っていました
家にはテレビがなく、ラジオでした
電気屋さんは、俺の家から山を6時間かけて降りた先にあったので行くのが面倒臭く運ぶのも大変だったので大きな電化製品は諦めました
俺は携帯を東京に来てから持ちました
今話題の物・流行の物何て、耳に入って来ません
時代遅れになるのは分かっていました
誕生日の日には、隣町の旅館へ泊まりに行っていました
そこの食事が、凄く美味いんです!
皆にも食べさせてあげたいぐらい!
此処まで聞いててそんな何が楽しいの?と思うでしょ?
でも、俺はそこで大切な仲間が出来ました
何でも言い合える親友
だから、引っ越しする時皆と別れるのが死ぬ程辛かった・・・
皆から色紙を貰って、都会へ出て来ました
それを読んで、冷静になった時俺には何かあったら帰れるHOMEがあるんだと思えました
何もなかった所から全てがある所へ来て、違い
に驚き過ぎて目眩がしそうです
これから、色々教えて下さい!
宜しくお願いします!」
話せば話す程、止まらなくなっていた。
ちゃんと話せた!
パチパチパチパチパチ。
拍手が起こった。
「スッゲー!
俺達、都会人にとっちゃそっちの方が何か憧れるなー」
「色々案内してやるよ!
一杯、面白い場所あるぞ!」
等と言ってくれた。
「ありがとう!
席に戻って良いぞ!」
「はい!」
俺は、席へ戻った。
俺が席へ着くと、先生が
「今度は、皆でお互いに自己紹介しろ!」
と言った。
そして
「そーう!
地元の紹介、びっくりしたよー!
今度案内して欲しいな!
旅館にも連れて行って欲しい!」
希が、俺の肩に乗って来た。
「おーおー、希!
何にもないぞ!
来てもつまらないだけだと思うぜ
旅館ならいつでも連れて行ってやるぞ!」
こんな俺達を見て、周りは驚いている。
「お前ら、いつの間にそんな仲良くなった?
今日会ったばっかりだし、自己紹介だってしてないのに!」
そりゃそうなるよなー。
「知りたい?」
希は悪っぽく笑った。
「知りたい!」
「実はー
私達恋人同士なの!」
!
皆の前で、サラッとバラされてしまった。
「えーーーー!」
俺の予想通り、皆ひっくり返りそうになっていた。
「嘘だろ!」
1人の男子が、疑った。
「嘘じゃない!
入学式前、爽に告白されたの
時間が来ちゃって、返事が出来なかったけど受け入れるつもりだったから」
希は、疑いを晴らす為に懸命に説明した。
「そう何だ!
本当だ!」
俺も、皆を説得した。
「お前、中々勇気ある奴だな」
皆、認めてくれた。
「まぁなー
彼女と席が隣になって、スゲー嬉しかった!
これは、運命だと思った」
「そっか」
そして、少数のグループに分かれて自己紹介が始まった。
「じゃあ、私からね!」
希が名乗り出た。
「おう!」
「私榎本希
桜が大好き!
家は、代々花道家何だ!
結構、どんな人にでもグイグイ行くタイプだけど 気にしないでね!
宜しく!」
「へー!
花道家かー!
凄いな!」
「のんのん!家大きいんだろうなー」
「ふふ!
のんのんって!
そんな事ないよー」
「宜しくな!」×3
「宜しくね!」×2
次の人。
「俺高橋じゅりあ
こんなキラキラネームで顔が濃いから、良くハーフだと勘違いされる
でもザ関東人だから
趣味はゲーム
休みの日にはゲームセンターへ行ってる
現地で取れなくて泣きそうな子供・悔しがってる大人を見ると声をかけて取ってあげてる
俺、どんなに手強いクレーンゲームでも5回ぐらいしたら大体取れるんだ
これちょっと自慢
じゅりあ電話に出ないな・家にいないなと思ったらこの中学から1番近いショッピングモールにゲームしに行ってると思っといて!
宜しく!」
「私も顔見た時からずっとハーフかなと思ってた!
ゲームってクレーンゲームの事だったんだね!
家でやるゲームかと思ってた!
私も取って貰いたい!」
「おう!」
次の人。
「私木瀬音羽
小4から声楽を習ってるんだ
全然上手じゃないけど・・・
将来は歌い手になりたいなと思ってる
沢山の人を幸せにしたい!
宜しく!」
「凄い!
声楽何て!」
「音羽って今のお前にぴったりな名前だな!
丸で音楽をする事が分かってて生まれて来たみたいじゃん!」
「そんな!
2歳ぐらいから家で音楽が流れたら楽しそうに 歌ったり踊ったりしてたみたいなの!
確かにね!」
次の人。
「俺、松田裕介
小さい頃に、心臓・足が腐る病気になって心臓も足も自分自身のものじゃないんだ
心臓は移植して貰った心臓で、右足は義足
後大きな音が大の苦手
だから昔は外にさえ出れなかった
でも、今は大分落ち着いてるから
こんな俺だけど、宜しく!」
そう言って、彼は自分の右足のズボンをまくり上げた。
わー・・・
本物の義足初めて見た・・・
「え・・・
そう何だ・・・
大変だね・・・」
「裕介、お前今まで色々苦しかったし辛かったろ?
これから、俺がいや俺達がお前を守ってやるからな!」
「うんうん!」×4
「あぁ・・・
ありがとう・・・」
次の人。
「私、佐藤夢香
フィギアスケートしてるんだ!
凄く楽しい!
小学生の頃、練習中にバランス崩して頭から転けて大怪我した
それで、この道を諦めないといけないのかなと心が折れそうになった時じゅりあと出会った
彼が、私を暗闇から抜け出させてくれた・・・
そして、また復帰する事が出来たんだ!
宜しく!」
「へー!
凄い!
フィギアスケートって、あのフィギアスケート?
綺麗だよね!」
「そうだよ!
あのフィギアスケート!」
「て言うか、お前とじゅりあ実は恋人同士!
驚きだ!」
「実はな!
隠れカップル!
な!
夢香!」
「うん!」
そして、最後に俺。
「俺、降星爽
父親が大手業の社員で、優秀だったから東京の
本社に配属された
それで、俺は全力で単身赴任が良いって言ったけど、両親は聞き入れてくれなかった
大好きな故郷・親友と離れ離れになった
さっきも話した様に、田舎から来たから何も知ららない
でも、皆の自己紹介聞いて何とか仲良くなれそうな気がする!
宜しく!」
「それは、辛かったよな?
俺は、大きく引っ越しした事がないから親友と離れ離れになる辛さを分かってあげる事は出来ないけど、これから仲良くしような!」
「勿論さ・・・
ありがとう!」
これで、全員の自己紹介が終了。
「希・じゅりあ・音羽・裕介・夢香!
皆の事沢山知れて、嬉しかった!
今日、皆で一緒に帰らないか?」
俺は、皆に聞いてみた。
すると
「おぉ!
帰る!帰る!」
「うん!
初日から、皆と帰る何てワクワクする!」
等と乗ってくれた。
こうして、皆で帰る事になった。
皆、家どの辺なのかな?
そして、放課後。
「行こう!」
希が、俺達を呼んだ。
「うん!」×5
俺達は、集まって下校した。
「わー!
桜!
やっぱり、可愛い❤️」
外へ出るなり、希がはしゃいだ。
「さっきも言ってた様に、桜に目がないな
お前
よっぽど、好きなのが伝わって来る」
と俺は、希に言った。
「うん!
短い命だけどね・・・
また、その儚さが好き・・・」
「のんのんが付けてるブレスレット、凄く可愛いね!
何処で買ったの?」
と音羽が希のブレスレットに気付いて、目を輝かせた。
「これ?
これはね
お母さんから貰ったやつ何だ!
桜色が入ってて、お気に入り何だ!
今は、お母さんいないけどね・・・」
希は、ブレスレットを見て目を細めながら音羽の質問に答えた。
「そう何だ・・・」
「なぁ・・・
聞いて良いのか分からないけど、お母さんいないってどう言う事だ?」
と裕介が、ためらいながらも希に聞いた。
すると、希は
「良いよ・・・
あれから、もう何年も経つから・・・」
と言って話し始めた。
「8年前の秋、家族で花道の展示会の準備をしてたの
そしたら、急にお母さんが倒れた
勿論、展示会は中止になった
すぐに病院へ運ばれたから、命は助かったけど
その後の検査で病気が見つかった
すぐに治療すれば、100%助かるはずだった・・・
でも、医療ミスが発生して・・・
お母さんは、そのまま天国へ・・・」
希は、話している内に声が震えて来た。
「無理に思い出さなくて良いぞ・・・」
じゅりあが、そんな希の背中をさすった。
「ありがとう・・・
後1つだけ・・・
その医療ミスは、わざとだったの・・・
お母さんへの復讐だって・・・」
少しだけ落ち付いた希は、残りの言おうと思っていた事を言ってしまった。
「え・・・
復讐・・・
何かごめん・・・」
裕介は、希に謝った。
「ううん・・・
大丈夫だよ・・・」
そして。
「着いた!
此処、私の家!」
最初に到着したのは、夢香の家。
「ばいばい!」
「ばいばい!」×5
次に。
「此処が私の家!」
音羽の家に到着。
「皆、そこそこ近いな!」
「そうだね!」
「ばいばい!」
「ばいばい!」×4
それから、歩く事10分。
「着いたー!
此処、俺の家!」
じゅりあが指差した建物に、俺達はひっくり返りそうになった。
「嘘だろ!
お前の家、タワマン?」
裕介が、驚きの声を上げた。
「驚かせてしまったな
そうだ
このマンションの最上階」
「はー
スゲーな!
憧れるよ!
よっ!
金持ち!」
「恥ずかしいだろ
辞めろよ
「ばいばい!
「ばいばい!」×3
そして。
「此処、私の家!」
希の家に到着。
「・・・・・・」
え・・・
これが、家!?
「な、なぁ
本当に、お前の家か?
じゅりあのタワマンも凄かったけど、それ以上だな!」
俺は、裏声になって言った。
「そーう!
驚き過ぎ!
私の家だよ!
じゅりあのタワマンも、凄かったよね!」
「ほんと、圧倒される・・・
体の力が抜けそうだ・・」
「もー
裕介まで!」
「だって・・・」×2
「ばいばい!」
「ばいばい!」×2
俺・裕介の2人になった。
皆の家を1軒ずつ見て来て、もう日が暮れてしまった。
仕事から家へ帰る人達だろうか。
その中には、今から仕事へ行く人もいるだろう。
あるいは、何処かへ遊びに行った帰りだろうか。
車の交通量が増えて来た。
さっきより、人通りも多い。
「裕介」
俺は、落ち着いているとは言え心配になって裕介の名前を呼んだ。
「う・・・」
そしたら何と!
彼は、耳を塞いでうずくまっていた。
かなり、苦しそうだ。
俺は、大きな声を出しては駄目だと裕介に寄り添って
「おいおい!
大丈夫か!」
とささやいた。
裕介の顔色が、悪くなって行く。
「だ・・・い・・・じょ・・・う・・・ぶ・・・」
これは、絶対大丈夫じゃない!
「嘘付け!
お前、自己紹介の時今は大分落ち付いてるからって言ってたけどあれ皆を心配させない様に強がってたんじゃないのか?
俺、ちょっと見ちゃったんだ
入学式の時、マイクを使って大きな声で話す校長先生の話を聞いて顔をゆがめる生徒を
それでも、その生徒は我慢して聞いてた
それから、教室へ行って笠原先生が話してた時も同じ
だから、俺は皆の前で自己紹介する時音量を考えて話した
その生徒って、裕介だろ?
希達との自己紹介の時だって、元気が良くて声が大きい希・じゅりあの声に一瞬耳を塞いだろ?
でも、皆に合わせなきゃって途中から皆と同じ様に大きな声出したりはしゃいでた
お前、本当は落ち付いてないんじゃないか?
必死に隠そうと無理したんだろ?」
俺は、裕介に呼びかけた。
「爽・・・
お前、良く人の事見てるな・・・
うん・・・
あれは、俺だ・・・
お前の言う通り、全然落ち付いて何かないんだ・・・
むしろ、悪化してるらしい・・・
でも、どうしても中学へ行きたかった・・・
親の反対を押し切って、今日来たんだ・・・
校長先生・笠原先生・希・じゅりあの声には、耳が割れそうになった・・・
心配かけたくない一心で、普通に振る舞おうって無理した・・・」
裕介は、今にも消えそうな声で言った。
「そんな・・・
可哀想に・・・
お前、こん何で歩けないよな?
俺の背中乗れ
送ってやる
家、何処?」
「悪い・・・
お前の家の隣・・・」
え!
嘘!
「良いんだ・・・
気にするな・・・
て言うか、俺の家の隣って本当か?」
「あぁ・・・
爽の家の隣の表札に、松田って書いてある・・・
お前が引っ越して来た時、お前のお母さんが挨拶に来た・・・
息子は家を出たくないらしくてと、お前は一緒に挨拶に来なかったから知らなかったろ・・・」
「なるほど」
程なくして
裕介の目がトローンとし始めた。
「裕介?」
そして。
バタン!
その場に倒れた。
「おい!
裕介!
裕介!
裕介!」
いくら呼んでも、裕介は意識を失ったまま目を覚さない。
ヤバい!
どうしよう!
急がないと!
俺は、2人分の鞄を持って裕介を背中に背負った。
「裕介!
行くぞ!
大丈夫だからな!」
それから、全速力で彼の家へと走った。
走る事、10分。
「ハァハァハァ・・・」
ようやく、裕介の家に到着。
彼の言う通り、俺達は隣同士だった。
ピンポーン。
松田家のインターホンを鳴らす。
「はい」
「あのー
俺、隣の家の降星です
今日友達になった裕介が帰り道に倒れてしまったので、送りに来ました」
その後、向こうからは反応がなくその代わり勢い良くドアが開いた。
ガチャッ!
「まぁ!
裕介!
大丈夫?
やっぱり、体調崩したのね!
あなたは、本当に無理するんだから!」
とお母さんが、俺の背中の裕介を見るなり
驚きの声を上げた。
「お母さん!
裕介、学校では普通にはしゃいでました・・・
皆の前では、強がって落ち付いたって言って
ました・・・
本当は、皆の声がうるさ過ぎて耳が割れそうになってたのに・・・」
と俺は、説明した。
「そう・・・
この子、昨日までずーっと部屋に閉じこもってたのよ
なのに、いきなり学校行くって
そんなの絶対無理に決まってるのに・・・
行きたい気持ちは、強いのよね・・・
ただ、体が言う事聞いてくれない・・・」
お母さんは、眠る裕介を見て切なそうに言った。
「辛いでしょうね・・・」
「裕介は、どれだけ苦しまなきゃいけないのかしら・・・
心臓悪くして、右足失って耳が普通の人と違って・・・
あら・・・
ごめんなさい・・・
余計な事、喋ったわね・・・」
「いえいえ・・・
全部、裕介から聞いてます・・・」
お母さんは、俺から裕介を受け取った。
「ありがとう・・・
降星君・・・
大変だったでしょ?」
「はい・・・
そんな事ないです・・・
裕介が目を覚ましたら、爽がいつでも頼れって言ってたと伝えて下さい」
「うん・・・」
そして、俺は家へ帰った。
「ただいま」
「お帰り!」
お母さんが、出迎えてくれた。
「学校、どうだった?」
「うん
5人の友達が出来た
希・じゅりあ・音羽・裕介・夢香
皆、良い奴だ
ちなみに、裕介は隣に住んでるんだ」
俺は、裕介の事が心配で低い声で答えた。
「まぁ!
もう、友達が出来たの!
やっぱり、あなたは凄いわね!
今時、いきなり女子も男子も関係なく下の名前で呼ぶのね!」
「あぁ・・・」
「どうしたの?
元気ないじゃない?」
「学校帰りに、裕介が倒れたんだ・・・
さっき、家に送ったんだけど今も意識が戻ってないかもしれない・・・
俺、心配で心配で・・・」
俺は、泣きそうになってしまった。
「え・・・
そうなの・・・
大変ね・・・」
そんな事を言っていると
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
誰だろう?
まぁ、良いか。
「お母さん
俺、着替えて来るから出て」
「分かった」
そして、俺は2階へ上がった。
ガチャッ。
「・・・お邪魔します
松田裕介です
爽いますか?」
「松田君・・・」
お母さんは、驚いた。
「今日迷惑かけたお礼が言いたいんです・・・」
「もう、大丈夫なの?」
「はい!」
「爽!
松田君が、お礼を言いに来たわよ!」
お母さんの声が1階から聞こえた。
え・・・
裕介が?
「分かった!」
俺は、急いで着替えを済ませて1階へ降りた。
そこには、申し訳なさそうな表情を浮かべた裕介が立っていた。
裕介・・・
俺は、裕介を見るなり彼に抱き付いて行った。
「お前な・・・
心配させあがって!」
そして、号泣した。
「本当に、ごめん・・・
目の前であんな光景見たら、戸惑うし心配するよな・・・
もう大丈夫だから・・・
ありがとうな・・・」
裕介は、俺を優しく包んで謝った。
「良いよ・・・
そりゃ、驚いたよ・・・
どうしようかと思った・・・
大丈夫って・・・
お前、あれからすぐ意識戻ったのか?」
「あぁ・・・
道中の記憶全然ないけど、家まで運んでくれたんだろ?
重かったろ?」
「良かったー
そうだ
全然平気だった!」
俺は、心から安心した。
「ありがとう・・・」
「裕介
明日、学校行く?」
「行く・・・
皆と会いたい・・・」
「きっと、明日は今日以上に騒がしくなるぞ!
授業がいきなり6時間だからな
色んな音が溢れてるぞ
大丈夫なのか?」
「うん
良い事思い付いたんだ!」
「じゃぁ、明日一緒に行こうぜ!」
「おぉ!」
その夜。
「お父さん
俺、もう切り替えれたし友達出来たから大丈夫!
今まで、ずーっと無視して来てごめんなさい」
俺は、お父さんに謝った。
「それは、嬉しいな!
いいや
こっちの都合で、無理やりだったからな・・・
仕方ないと思ってたよ・・・」
「うん!」