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〚Part 1 貓〛
「クラピカ、しばらく一緒に俺の故郷に来てくれ。そんで療養しながら俺の勉強のサポートして欲しいんだ」
暗黒大陸での同胞の目を集めた際に激しく消耗をしていたクラピカは先日まで病床の身であったが十二支んの同僚の医師や自分を助けるためにオーラを分けてくれたレオリオの献身もあり故郷で仲間達の弔いをするまで回復することができた
「クラピカ、今のあなたにはしっかりとした休息が必要です→子」
「レオリオにはクラピカが無理をしないように監督をすることを条件に例の提案を受けましょう、ただしあなた自身は勉学にしっかり励んでください。定期的に私のお手製の特別テストを送りますから必ず期日までに返信すること。あとクラピカのメディカルチェックを毎日してあげてください→亥」
こうしてレオリオの「2か月ほど故郷にゆっくり帰りたい。空気のきれいなところだからクラピカの療養にもなるはずだ」の提案が受け入れられて、飛行機と鉄道を利用して二日程かけてレオリオの故郷へとクラピカは療養に出向くことになった
「うちにはおふくろが住んでんだけど、お前の話はしてあるからもし具合が悪くなったら声をかけてくれ」
最寄りの鉄道駅からタクシーに乗っていると住宅街が見えてきた
「この辺でおりっか」
クラピカは物珍しさにきょろきょろしながらレオリオについていくときれいにガーデニングを施された邸宅前でレオリオは足を止める
「おふくろは仕事か?鍵どこやったっけ」
どうもここがパラディナイト家らしい
「ふーただいま。懐かしの我が家だぜ」
「おじゃまします」
生活感のある玄関を観察しているとレオリオがクラピカのスーツケースをひきあげて、レオリオの自室に入るように案内される
「クラピカ大丈夫か?疲れてねぇか」
じっと見つめられて、どう答えるべきか迷ったがここは素直に答える選択をした
「長旅で、少し疲れてしまった・・・。休みたいのだよ」
レオリオはクラピカの額にキスすると「ベッドで寝ててもいいぜ。ちょっと熱だけ測ろうな」と体調を確認するためにジャケットから体温計を取り出した
「悪いんだけどちょっと地元のダチんとこ挨拶してきてもいいか?なんかあったら連絡してくれ」
最近やっとアドレスを教えたことがよほど嬉しいのかレオリオはクラピカの側を離れる時に「何かあったら必ず連絡を入れるように」と必ず言い残していく
レオリオが自宅に入った時から何かを探すように目線を動かしていることが少し気になったが、今は休ませてもらおうとクラピカはインナーに着替えると太陽の匂いがするベッドへ身体を落ち着かせた
暖かくふかふかのベッドがクラピカを眠りの世界へと導くには時間を要さなかった
随分深く眠っていたのだろう、少し意識がはっきりしてきた時に顔に不思議な感触を感じる
ふわふわ、ペロペロ
なにか、綿毛のようなものと湿った感触
「んっ・・・」
感触の正体が気になってクラピカは目を開けることにした
”にゃぉん”
「ネコ?」
目の前には一匹の赤茶色の毛並みを持つ猫が自分の顔を覗き込んでいる
”にゃーん”
クラピカは目を擦って身体を起こすと猫はクラピカのかぶる布団の上へと乗ってきた
「初めて猫を触るかもしれないな」
故郷には猫はいなかったし、村を出た後も猫を見かけることはあっても触ったことはなかった。大切に世話をされているであろう手触りの良いフワフワとした毛並みだ
「ここの家の猫か?」
猫がベッドにまで登っているあたり、パラディナイト家で飼育されている猫と考えるのが正解だろう。今まで二人の間でペットの話題が出たことが無かったためクラピカはこれまでレオリオが実家で猫を飼っていることを知らなかったのだ
「ふふっ、可愛いものだな」
猫の頭をゆっくりと撫でてやると気持ちよさそうに喉をならしてくる。ちょっと失礼、とその姿を写真に収めるとセンリツへ”無事についた、起きたら猫がいたのだよ”と写真とともに送信してみた
”みゃう”
猫はベッドから降りると部屋の棚の間に入っていき何かを咥えてくると、再びクラピカの手元に戻ってきた
「ネズミを模した、オモチャか?」
猫は狩猟動物だと文献で読んだことがあるから、ネズミのオモチャを持ってきて何かしらのごっこ遊びをしたいのだろう
「投げればいいかな?」
試しにポイッと放り投げてみると猫は嬉しそうにそれを取りに行き、またクラピカの手元に持ってくる
「なかなか楽しいな」
クラピカは布団から出るとベッドに腰かけて今度は違う方向にオモチャを投げてやったら猫は嬉しそうに探しに行った
しばらくそうしていると、猫は次に違う形状のオモチャを咥えてきた
「棒の先に紐がついていて、その先にネズミがついているパターンか?」
とりあえず棒を持ってゆらゆらと揺らしてみるとピョンッと猫は飛び跳ねてネズミにタッチしている
「これは、可愛いな」
思わず動画撮影をしてしまうくらいにはクラピカは初めての猫との遊びに夢中になっていた。センリツが以前に猫カフェへ時々訪れて猫に遊んでいただくことが最高の癒しと言っていたがその気持ちがとてもよくわかった。これはとても強力な癒し効果を持っている。猫もクラピカのことが気に入ったのか次々と新しいオモチャを出してきて、それを使って遊んでやって時間を過ごしていた。
部屋の中をよく見ると猫用トイレと水の器を用意されていて、この部屋が猫の住処のひとつなのだろうと予想できた
「私が拝借した丸いクッションはもしや猫のベッドか?」
部屋の主のレオリオに遠慮して使用しなかった枕の横の丸いクッション。太陽に干されてフカフカだったが自分は猫用の寝床で寝ていたかもしれないと思うと、部屋に一人なのに笑いがこみあげてきてしまった
「キミの寝床を使っていたかもしれない。すまないのだよ」
遊び疲れた猫はクラピカの膝の上でゴロゴロと気持ちよさそうにくつろいでいる
しばらくすると階下で物音がして猫はそれを聞きつけると膝から降りて階段を走って駆け下りていった
「誰か帰ってきたのか?」
しばらく世話になる者として挨拶と手土産を渡すべきだろう。脱いでいたクルタ服を羽織ると猫に続いてクラピカも階段を降りて行った
”ただいま~。いい子にしてたかい?”
聴こえてきた声は中年くらいの女性のものだ
「あの、こんにちは・・・」
寝ぐせのついた髪を軽く直すとクラピカは帰宅した家人を出迎えた
女性は猫の頭を撫でるとクラピカのほうを向く、どことなく顔立ちがレオリオを思わせる
「あら、あなたがクラピカね!遠いところよく来たわね~私はレオリオの母よ」
女性に軽くハグされてクラピカは少し驚いて猫のように背筋を伸ばした
「初めまして、クラピカと申します。こちらよろしければお召し上がりください」
手土産の中身は女性に大人気の持ち運びしやすい焼き菓子だ(センリツ談)
「気を使わなくてもいいのに、お腹はすいてる?ごはんの支度をするからもう少し待っていてね、先にお風呂入れましょうか。悪いけど、その子におやつをあげてくれる?」
案内されるままリビングについていき、猫と絶対に仲良くなれるというキャッチフレーズの棒状オヤツを手渡されると猫はすぐクラピカのところに飛んできた
ペロペロと手の中のおやつを一生懸命食べる猫のなんと可愛いことか
「ところで、うちの放蕩息子はどこに行ったんだい?」
猫がおかわりをおねだりしてくるので「もう終わりなのだよ」と宥めると夫人に声をかけられる
「地元の友人と会ってくるそうです。夕飯までには戻ると言っていました」
それから食事の支度をしてもらっている間にお風呂を進められて脱衣所に向かうと、扉の隙間からするりと猫はついてきた
「き、着替えを覗いたらだめなのだよ///」
猫に脱衣を覗かれるのはクラピカの人生で今までに経験の無いことだ。猫はクラピカが入浴している間も脱衣所の中に座り込んででくつろいでいる
クラピカが入浴を終えてバスルームの扉を開けると猫は待ってましたと言わんばかりに顔を出した
「だから恥ずかしいのだよ///」
髪を乾かしてリビングに戻るとソファーに座っているように促され、「この子と遊んでやって」と夫人に新たな形状のオモチャを手渡された
「クラピカは猫に慣れてるかい?」
夫人はキッチンに立ちながらクラピカに声をかけてくる
「いいえ、初めてです。猫に、遊んでもらうのは」
その返答が面白かったのか夫人は笑い声をあげていた
「その猫は息子がハンター試験に行く少し前に怪我していたのを見つけてね、朝の6時に叩き起こされて清潔なタオルを寄越せって言われた後に息子が動物病院の救急を探して助けた猫なんだよ。少し保護するつもりがうちの子になったってわけさ」
医者志望の彼のことだ、怪我をした猫を懸命に救助したのだろう
「キミはいい男に拾われたな」
”にゃーん”と猫がクラピカの脚に頬を摺り寄せてきた
「抱っこしてみるかい?」
夫人に教えてもらいながら猫を抱いてみる
「意外と重いのだよ・・・」
夫人はクラピカの頭と猫の頭を交互に撫でると「最近ぽっちゃりしてきちゃってね、いっぱい遊んでダイエットさせてやってね」と言うとキッチンへ戻っていった
そうしているうちに”ただいまー”とレオリオの声がしたので猫を抱いたまま玄関へ出迎えることにした
「レオリオ、母上が夕食の支度をしているのだよ」
レオリオは出迎えたクラピカと腕の中に抱かれた猫を見ると「あれ!?なんかお前ら仲良しになってる!?」と驚きの声をあげていた
レオリオは医学生らしくウガイと手洗いをしっかり済ませてから猫と触れ合った
「オーオー久しぶりだな、随分見ねぇうちにぽちゃっとしたか?」
夕食時は一度猫をサークルの中に入れて、夕食後にレオリオと洗い物をした後に再び猫と触れ合いの時間を過ごした
「肉球とはこんな感触をしているのか」
21時ごろになると猫が何かを要求するようにみゃぁみゃぁと鳴き声あげる
「クラピカ、ソイツに夜ごはんやってくれ」
ごはん、つまりキャットフードだろうか。猫に案内された先にあるキャットフードの容器には目印の線がつけられていたので目盛りの分を測ってフード皿の中に入れた
歯磨きをして部屋に戻るとクラピカは読書でもしようかと本を開いた
が
邪魔をするように猫は本に乗ってきた
「邪魔をしちゃいやなのだよ・・・」
「諦めろ、猫ってのはそういうもんだ。お前うちにいる間そいつの遊び相手になってやって、家猫だから外には出てかないようにはしてくれ。逃がしたらおふくろに俺が探して来いって追い出されるぜ・・・」
レオリオにブラッシング方法を簡単に教わるとクラピカは猫の毛並みを整えてやることにする
「クラピカ、俺はちょっとチードルのテキスト進めるわ」
レオリオが机に向かったのを見届けてクラピカは猫に「お勉強中だからな、しーだぞ」とブラッシングに励むことにした
「うっし、ここまでにしとくか」
想定よりも進められた満足感でテキストを閉じると、そういえば部屋がとても静かなことに気がついた
「お、寝てるし」
ベッドではクラピカと猫が寄り添って、ふたりまるくなって寝ていた
体格の大きい自分に合わせて広いベッドならクラピカと一緒でも十分ふたりとも足を伸ばして眠れる広さだ
部屋の電気を落としてレオリオもベッドに潜り込むとクラピカのまるい頭と猫のまるいあたまを撫でてやった
「こうしてると、猫が二匹みてーだな」
野生のカンか聴覚が優れているし、身のこなしもしなやかで素早い。機嫌が悪いとシャーッと毛を逆立てて怒る。ミルクが好きで熱いとフーフーと冷まして飲む
寒いと丸くなって自分の腕の中に潜り込んでくる
「おやすみ」
クラピカと猫を腕の中へ抱き込むとレオリオも夢の世界へと旅立った