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#女主
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新しい主様は変だけど優しい。
ロノの場合。
貴族のやつらはロクなもんじゃない。
俺は幼い頃、たくさんいる兄弟のために肉体労働をしていた時期がある。
今では料理担当になって様々な味を理解できるようになったが、昔は腐りかけのパン1個で1日を紡いだこともある。
体ももちろん鶏ガラ見てぇにガリガリで、肉体労働なんてできる体じゃなかった。
そんな過去があって、俺は人一倍、食事というものを重要視している。
食事をうまいと言ってくれる人の顔が好きだし、栄養をとってもらいたいと栄養学の勉強もした。
けれど貴族の奴はやれ肉がないだの、味が気に入らないと料理を床に投げつけたりする。
前の”アルジサマ”なんか、
味が薄いだの難癖つけてスープ皿ごと俺の頭に投げつけやがって….殴りつけてやろうと思ったけど、ベリアンさんに迷惑がかかるから黙って頭を下げるしかなかった。
今回の新しい奴…どんな奴なんだかな。
「…こちらが本日の昼食です。」
「ありがとう、ございます….いただきます。」
新しいアルジサマは女だった。年齢は….幾つぐらいだろうな?落ち着かないようで、料理が配膳される様子をキョロキョロと目で追ってる姿は少し小動物みたいだった。
………..けれど、
「….なんで食べないんですか。」
全く料理に手を付けない。
ベリアンさんの手前、毒なんて仕込んでない正真正銘の俺の自信作だ。
やっぱり食事に難癖つける気か?と思ってしまったら、俺の声は随分低く出てしまった。
「俺の…俺の料理に、何か気に食わないことがありましたか?」
いけない。ベリアンさんに迷惑がかかっちまう。
愛想良くしねぇと。
はやく「お好きなものに取り替えます」てっ言わねぇと。「気に入らないものはお下げします。」って言わねぇと。
あぁ、でも俺は、俺はそんなこと言うために料理を作ったんじゃ⎯⎯⎯⎯
「ご、ごめんなさい!!慣れてないものでして。マナーがわからなくて…あ、あの。そ、外側のフォークから使うんでしたっけ…?!」
小さく、掠れた声から発されたものは予想外の発言だった。美味しそうで、お腹もすいてるんですけど…
赤い顔で恥ずかしそうにアルジサマは言う。
美味しそうとは、思ってくれたんだな。
「…外側からであってます。フルーツやデザート用はショープレートの上側に置いてあるのを使ってください。….食べる順番ですけど、今日初回だし、好きな物から食べていいと…俺は、思います。」
俺の口からするりと発された言葉は優しい声で自分でも驚いてしまった。
アルジサマは安心されたのか、ニコニコしながら食事を再開する…一口食べて、パッと目が輝くと「美味しいです!」と俺に向かって微笑んだ。
マナーもなってない、口端にソースがついた顔は淑女としては0点の顔だったけど
俺の主様としては
100点をあげてぇなと思ってしまった。