顔合わせが終わり、再び部屋に戻ってきた。
やはり皆、私の事などは忘れている。
あの時知能天使が言っていた通り、皆は”初対面”の人としか私の事は思っていないだろう。不幸中の幸いであるのは、私が”主様”であること。
それ以外はもう、全て失ってしまったに等しい。
「…?主様?どうかしましたか…?、口から血が…」
無意識にぎゅっと歯を食いしばっていたようで、口から血が出ていたようだ。
「?…あぁ、ごめんねムー。私の事は気にしないで大丈夫だよ、少し考え事していただけだから。」
安堵させるようにムーの柔らかい毛並みを撫でる。ムーは気持ち良さそうに目を細めた。
「ムーは相変わらず撫でられるの好きだね。」
ムーにも届かないぐらいの声量で呟いた。大人しく撫でられているムーの姿は、切羽詰まった私に癒しをくれる気がする。
「えへへ…♪主様に撫でられると落ち着くんです♪」
罪悪感も何も無い純粋無垢な可愛らしい反応。
なのに、この笑顔でさえもふとした瞬間に私の心の傷を容赦なく抉る刃物となる。
「そっかそっか…、そう言って貰えるの嬉しい。ムー、ありがとうね。」
「えへへ…♪」
にこりと笑うムーの顔。
久しぶり、ではなく、”はじめまして”と返してくれた16人と一匹の執事達。
いつまで私の精神が持つだろうか。
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