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―side晴美―
晴馬が誘拐されて3日が経った
昼間康夫が家にいるのは違和感しかない、私達の晴馬の誘拐事件は彼の会社でも今や有名になっていて、報道陣にも公開捜査に突入するのも時間の問題だ、そして康夫の上司は事件が解決するまで有休をくれているが、康夫はこの家でどう過ごせばいいのか分からない様だ
私はじっとしていられないので、シンクを磨き上げたり、この家を買ってから一度もしていない玄関を磨いたり、子供の幼稚園のスモッグのボタン付けをしてりして時間を過ごした、実際家にいてやることは沢山あった
しかし康夫は家の中をウロウロし窓の外を眺め、リビングで警察官の監視の元、スマートフォンをいじった
いつもなら、康夫はランニングをし、休日はカフェでお茶をしたりゴルフをする、私も三日に一度はなんらかの写真を撮ってインスタに投稿していたのに今や私達は全て監視されている
ご近所さんが外にいる記者達と我が家の噂話をしている、子供が誘拐されるぐらい誰かに恨まれているのだと言っている
夕べ、康夫と私は同じベッドで眠ったが、まるで見知らぬ他人のようにただ同じ場所で寝転び、長い開いた天井をじっと睨んでいた
そして4日目、葉山捜査官と細川捜査官が私と康夫別々に事情聴取と取りたいと言った
「ご主人は晴馬ちゃんを望んでいましたか?」
細川捜査官と二人っきりで・・・私はベッドに座り、彼女は折り畳み式の椅子に向かい合っている
シン・・・とした沈黙が部屋に落ちた
「・・・最初は戸惑っていましたが、やがて喜ぶようになりました」
「あなたとご主人の仲はどうですか?」
「・・・時々喧嘩はしますが、晴馬が生まれてからはとても仲は良かったです」
「あなたはご主人に内緒でクレジットローンやキャッシュローンは抱えていますか?」
「家のローン以外は・・・特に借金はありません」
「あなたはSNSや匿名の裏掲示板などで誰かの悪口を書いたり、人を貶める投稿をした事がありますか?」
「いいえ・・・悪口を書かれたことはありますが、自分からは絶対そんな卑怯な事はしたことありません」
「ご主人はインターネットでオンラインのアダルトサイト・・・またはクレジットカードでアダルトコミックなどを購入して観ていますか?」
「いいえ・・・一度も・・・そのようなものは見ていないと思います・・・」
「ご主人のパソコンとスマートフォンを調べさせて頂く事になります、あなたのものも」
「私は観られても大丈夫です」
そう言いながらも、1年前に和樹とやりとりしたメッセージは全て削除済みのはずだ、あの雨の夜・・・泣きながら和樹のマンションに今から行きたいと書いたメッセージ・・・そして二人は・・・
考えるのをやめるのよ!私は嘘が下手だ!細川捜査官がじっと私を見つめている
まるでX線で私の考えを透視されているようだ
「あなたは伊藤真希にご主人に秘密にしている事や愚痴とも言える事を話しましたか?なにか容疑者の逆鱗に触れるようなこと・・・友人の子供を思わず攫いたくなるような事を」
次第に私の心臓がドキドキしだす、もしかしたら真希ちゃんは私が晴馬が康夫の子じゃないかもしれないと言ったからあの子を攫ったの?二人の子供じゃないからどうなってもいいと?
不安の波がどんどん広がっていく
さらに細川捜査官が確信をついてくる
「晴馬ちゃんはご主人の子供ですか?」
「今なんとおっしゃいました?」
細川捜査官の全神経が私に向けられる・・・一瞬の間・・・
心臓が一回ひっくり返った
「な・・・何を言うのかと思えば・・・晴馬は正真正銘主人の子供です」
「晴馬ちゃんの命がかかっているんですよ」
突き刺すような眼鏡の奥の彼女の視線に耐えられなくなる・・・
ここは怒った方がいいのかもしれない、私は堅苦しく言う
「し・・・失礼ですよ!失礼だわ!」
細川捜査官はコクンと頷いたが私に謝らなかった、ほつれた髪を耳にかけ、なにやら手帳に書き込んでいる、そして一言私に言った
「もし嘘をついているなら、必ずその代償を誰かが払うことになるでしょう」