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「歩くんって、バイトなにしてるの?」
「洋菓子店のウエイター。一部飲食できるスペースがあってさ、そこがメイン。時々厨房とか販売も手伝うけど」
人通りの多い道を抜けて、私と歩くんはのんびりと隣に並びながら足を進める。
「家に負担かけたくないっつーのと、早く家出たいからさ。貯めないと」
「そう、なんだ」
〝家を出たい〟それは九條の家となにか関係しているのだろうか。
「ゲームの願いって、家を出ることと関係あるの?」
「願いとは違うな。これは自分の力でするべきだし」
「じゃあ、歩くんの願いって……?」
歩くんも実里くんのことが願いだったりするのかな。
「願いを自分の家のことにしたとして、九條の力借りても親父は喜ばねぇだろうし。むしろ恥をかかせるなとか言われそうだな」
「喜ばない?」
「母親は家に執着してるけど。親父は九條の家が嫌いなんだよ。それに俺の今叶えたいって思ってることは……有り難迷惑かもしれねぇし」
「家を出たいのはお父さんのことと関係あるの?」
「や……そっちじゃねぇんだ」
歩くんの横顔が曇り、悲しそうな笑みをこぼした。私の話を聞いてくれて支えてくれた歩くんの力になりたい。だけど、私がどこまで踏み込んでいいのかわからない。
「俺はこんな見た目でも男だから……」
消えそうなくらい小さなその言葉が風に乗って私の耳に届いた時には、もう私の家の前についていた。
「なぁ……泉に何言われた?」
喫茶店の光景を見られていた。そのことを悟り、息をのむ。
歩くんは武蔵先輩に呼ばれたと言っていた。もしも武蔵先輩が今日のことを知っていたのだとしたら、話したのは泉くんだ。
でも、一体なんの為に?
海の紅月くらげさん