月陽と夜桜はお互い無言のまま寄り添って月陽のマンションに辿り着く。
「へぇ、月陽ここに住んでんだ」
物珍しそうにキョロキョロ見回す夜桜は、見た目にそぐわない子供らしさが垣間見えて夜桜の素はこっちなんだろうなと思う。
思えば学校でいつもニコニコしてても今みたいなキラキラした顔は見たこと無かったかもしれない。
単純に接点が少なすぎて知らないだけかもしれないが、気が向いたら聞いてみよう。
「……私は濡れてるから風呂入る。適当に座ってて」
そう言ってカラーボックスから着替えとバスタオルを手に取って風呂場に直行する。
「ワカッタヨ」
嫌な予感しかしない返事が帰ってきたけど他人の家で下手な事はしないだろうと思うので放っておく。
誰か自分以外が家にいるなんて初めてで気恥しくなってきた。
脱衣場から顔だけ覗いて、絶句する。
私のベットに顔を填め深く深呼吸していた。
「あの、あのさ、それ辞めてくれる?」
まさか見られるとは思っていなかったらしくビクリと飛び起きた夜桜が、顔を赤めて口を半開きにしている。
「えっち」
「いや、お前だろ!へ、変態か!?」
「違う、早まるな。誰にでもやる訳では無い」
「あ、当たり前だからな!?」
夜桜が飛びっきりのキメ顔を作ってこう言った。
「月陽だけだ」
「ギルティ!!!大人しくしとけ!」
かなり気が重いけど、気まずさは無くなっていた。
月陽は憂鬱な雨を含んだ衣服を脱ぎ洗濯機に入れる。
浴槽にお湯を沸かして入りたい気は山々だが、それを待っていると風邪をひきそうだ。
シャワーを浴び終わったら風呂に入れるようにしよう。
夜桜なんて知らない。
シャワーを浴びれば今さっきの事を思い出す。
「なんなんだ。なんで、………はぁ、人の心が読めたら楽なのに」
「さっき言ったじゃん。嬉しかったって」
「うわあああ!!!」
「月陽さ、やっぱ綺麗だよね。天使みたい」
「馬鹿言ってないでで、で、出てけ!」
「全裸で放り出すの?着替え洗濯回しちゃった❤︎」
「はぁ?」
はぁ?
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