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テラーノベル(Teller Novel)
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翌日はドリーム一号のハンドルを森さんが握り、ガイドにツヨシがついた。翌週、土曜は同じ構成で一号が走った。

日曜、つまり今日は森さんが一号、ツヨシが二号をそれぞれワンマンで担当した。森さんとツヨシが帰ってきたとき、健太は寝巻き代わりのトレパンに着替え終わったところだった。

彼は二人を自分の部屋に招き入れると、床に胡坐をかいた。二人も床に座った。森さんは無造作にジャケットから札束を取り出して数え、それを三等分した。健太は前回、この収入でブレーキパットを交換した。次はカーラジオを買おうと思っている。すし屋のバイトで生計を立てている森さんにとっても、仕送りで生活しているツヨシにとっても、臨時収入は助かっているはずだ。

ツヨシは尻ポケットに札束を突っ込むと、宿題をやると言って自分の部屋に消えた。残った森さんは健太のベッドに腰掛け、脛を掻いている。

「ケンタ君、そのうち自動車保険をドリーム・トラベルで買わないか」

健太はうなずいた。実は彼の車は保険に加入していない。今の生活では加入するほどのゆとりがないから、初めっから入る考えすらなかった。森さんも、こう言い出す以上は入っていないんだろう。ということは、森さんのルームメイトも入っていないんだろう。

健太はちょっと待っててといって台所へ行き、冷蔵庫からビールのダースケースと、食べかけのつまみの入った箱を部屋に運んだ。

「このチーズ、ちょっと硬くないか」と森さんは言った。ちょっと古くなってるかもしれないと健太は答えた。

缶の冷たさが手のひらに伝わってくる。手を離すと、聞きなれない無名のラベルが現れた。書かれているのに無名というのはおかしな話だが、知れ渡ってくると有名といわれるのも、その理屈だけで考えればおかしな話だ。

おかしな話をしているのは、きっと頭が回ってきた証拠だ。森さんの顔も赤い。健太は、この際収益を溜めて二号・三号を買い換えようと言った。

「なら、大型のセダンかクーペがいい」森さんは一旦ゲップをして続けた「それに、ガソリン代も経費で落とそう」

健太は森さんと握手した。

気がつくと、健太はベッドに大の字になっていた。森さんの姿はすでになかった。アルコールの臭いだけが残っている。白い天井には茶色い雨漏りのシミが、天の川のように広がっている。

そのうち、ツヨシとプール付のアパートへ引っ越すのもいい。帰ってきたミンの目玉は、二個とも飛び出すに違いない。そこまで行く頃にはコルベットの新車を買うのも夢じゃないだろうし、うまく経営していけばいずれ豪邸に住めるようになるかもしれない。

ハーバー共和国 (Ⅱ)

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