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――音で、目が覚めた。
ガンッ!!
鈍い衝撃音。
石が砕けるような、重い振動。
「……っ」
目を開ける。
一瞬で、眠気が飛ぶ。
まただ。
この音は――
「ルナティック……!」
体が先に動く。
ベッドから転がるように起き上がり、
ショットガンを掴む。
扉の外から、叫びにも似た異音。
何かが引き裂かれる音。
「チッ……!」
迷う暇はない。
扉を蹴り開ける。
廊下に出た瞬間――
「――っ!?」
いた。
異形。
人だった面影を残しながら、
歪み、裂け、膨れ上がった肉。
目が合う。
一瞬の静止。
次の瞬間――
「グァアアアッ!!」
突っ込んでくる。
「っ!」
引き金を引く。
轟音。
至近距離での一撃。
頭部が弾け飛び、壁に叩きつけられる。
だが。
「……一体じゃねぇな」
奥の闇が、蠢く。
複数。
数が多い。
ここは――安全じゃない。
「ふざけんな……城の中まで入ってきてんのかよ」
リロードしながら、後退する。
体力は万全じゃない。
囲まれたら終わる。
そのとき。
――風が、走った。
「下がれ」
低い声。
次の瞬間。
影が、ルナティックの群れを裂いた。
「……っ!」
見えなかった。
ただ、次々と――
裂ける。
切断される。
潰れる。
一瞬で、数体が崩れ落ちる。
血が飛ぶ。
肉が散る。
そして。
その中心に、立っていた。
ノスフェラトゥ。
「……遅ぇよ」
思わず、吐き捨てる。
ノスフェラトゥは振り返らない。
ただ一言。
「勝手に出るな」
冷たい声。
だが、その足は――
確実に、彼の前に立っていた。
守る位置。
「……は?」
一瞬、理解が遅れる。
その隙を狙うように。
背後から、もう一体。
「後ろだ!」
叫ぶ。
だが。
振り返るより早く。
ノスフェラトゥの腕が、後方へ伸びる。
――掴む。
ルナティックの顔面を。
そのまま。
「邪魔だ」
グシャッ、と。
握り潰す。
沈黙。
血が滴る。
圧倒的だった。
「……なんだよ、それ」
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思わず、笑いが漏れる。
「反則だろ」
ノスフェラトゥは、ゆっくり手を振る。
血を払う。
「雑魚だ」
淡々と。
だが。
その直後。
わずかに、動きが止まる。
「……?」
気づく。
ノスフェラトゥの呼吸が、ほんの少しだけ荒い。
そして。
血の匂い。
さっきまでより、濃い。
「……おい」
赤い瞳が、揺れる。
視線が、こちらに向く。
さっきの風呂場と――同じ目。
「……っ」
一瞬、背筋が冷える。
だが。
次の瞬間。
ノスフェラトゥは、顔を逸らした。
「……戻れ」
低く、押し殺した声。
「部屋にいろ」
「は?」
「……命令だ」
短く。
だが、その声は――
明らかに“抑えている”。
「……」
一瞬、迷う。
だが。
さっきの戦いを見た後だ。
逆らうのは、得策じゃない。
「……分かったよ」
舌打ちしながら、後退する。
扉の前まで戻る。
最後に、振り返る。
ノスフェラトゥは、まだそこに立っていた。
ルナティックの死体の中で。
ひとり。
「……助けられた、か」
小さく、呟く。
そして。
扉を閉める。
廊下。
静寂。
残るのは、血の匂いだけ。
ノスフェラトゥは、ゆっくりと目を閉じる。
「……危ないな」
低く、呟く。
自分に向けて。
あのまま、もう一歩踏み込んでいたら。
――敵ではなく、“彼”に牙を向けていた。
「……」
拳を握る。
わずかに、震えている。
「……まだだ」
誰に言うでもなく。
ただ、抑え込むように。
赤い瞳が、静かに細められた。