なんてことのない、普通の日常だった。
この日は休日で、だらだら昼まで二度寝したからか脳がぐわぐわする。
『ピンポーン』
インターホンの音ですっと視界がクリアになった。
「はーい」
何か頼んだっけ。まだ少しぼやけた頭で記憶をたどりながら、玄関を開けた。
「こんにちは」
うわ、イケメンだ。
声までイケメンだ。
バカみたいな単純な感想しか出てこない。薄目の二重にシャープな鼻筋、芸術的な整った顔立ちからは妖艶さも感じる。
「…こん、にちは」
「はじめまして。隣の部屋に越してきた松村北斗です」
「はじめまして。私は□□〇〇です。よろしくお願いします」
「これ、良ければどうぞ」
箱を受け取り、手に重厚感が伝わる。シンプルな包装でいかにも高級そうなお菓子だ。
「ありがとうございます」
目線を上げると、閉じかけた扉の隙間からふわりと微笑んだ顔が見えた。
扉の鈍い音が響いたのを合図に静けさが広がった。放心状態で数秒立ち尽くす。
不覚にもときめいてしまった。イケメンを見たらキュンとすることなんて誰にでもある、不可抗力だ。私彼氏いるし、アイドルをかっこいい!って言うのと同じ。何の問題もない。
松村北斗さん、かっこよかったな。貰ったお菓子を机に置いて、笑みを零した。
___この日から私の日常が少しずつ崩れていくことになる。
コメント
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続き待ってます( *´꒳`* )