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瀬戸は覚悟を決めた顔をし、ガーディも瀬戸を守るように前で威嚇する。
「大丈夫なん、あの人ら」
「大丈夫、伊達に3年間風紀委員として連れ添ってない。連携プレーはお得意様や」
「チーノは参加せぇへんの」
「アホか。離れていても心は繋がっとる。ここから見守るのが俺の仕事や」
「自信満々に言うとこちゃうで」
少し離れたところで雪乃たちを見守るチーノとショッピ。
その横で、佐々木は拳を握りしめた。
「ほら、お前の目当てのものはここにあるぞ」
雪乃がお札を掲げる。
ミカルゲは雄叫びをあげサイコキネシスを解き、雪乃に襲いかかる。
こっちがヘイトを集めてる間に、委員長に目配せする。
しかし、
「キルリア!チャームボイス!」
雪乃の前に割り込んだのは、1人の後輩。
佐々木ルカだった。
「キルル!」
佐々木のキルリアが技を繰り出すが、ミカルゲはものともせず。
キルリアは吹き飛ばされた。
「キルリア!!!」
佐々木の悲痛な叫び声に、雪乃は佐々木の前に出る。
「あ、危ない佐々木!ゆっきー!」
チーノの叫びにハッとしミカルゲの方に向き直った時には遅かった。
佐々木を庇うように前に出た雪乃に、ミカルゲのシャドーボールが襲いかかる。
「ーーーチミィ!”まもる”!!」
シャドーボールに飲み込まれるかと思った瞬間、チーノのモンスターボールからチラーミィが飛び出し雪乃の前にバリアを貼った。
バリアに弾かれるシャドーボール。
「ありがとうチミィくん」
「チラァ」
ニコリと笑うチラーミィに癒されつつ、「ありがとうチーノ!」とチーノにもお礼を言う。
「ま、間に合ってよかったわ…」
間一髪、というところでチーノはホッと胸を撫で下ろす。
隣でショッピが「やるやん」と呟く。
「せ、先輩…」
佐々木が雪乃の後ろから弱々しい声を出す。
雪乃はスッと手を上げ続く言葉を牽制する。
「見ててルカ。卒業する前に貴方に伝えたかったこと、今ここで見せるから」
前を見たまま放たれた真っ直ぐで力強い言葉。
その凜とした姿を、佐々木は目に焼き付ける。
「*ヨコセェェェェェ!!!!*」
シャドーボールを溜めながら雪乃に襲いかかる美希。
「ゆっきー、多分ミカルゲはもう二度と封印されんようにそのお札を破壊するつもりや」
「なるほど。破壊が目的ね」
チーノの考察に納得する。
まずこのお札を消してから、この世で再び悪さをするつもりなのだろう。
「けど、そうはさせない」
目の前に迫り来る友人に、雪乃は手をいっぱいに広げ無防備に待ち受ける。
美希、すぐに解放してあげるからね。
「草凪さん!」
瀬戸が叫ぶ。瞬間、雪乃は唱えた。
すると美希は再びその場で動かなくなった。
いつの間にか美希の背後に回ったエーフィのマジカルシャインによって。
「おい、逃げようとしとるぞ!!」
チーノが叫ぶ。
ミカルゲはもうこれ以上無理だと判断したのか、美希の身体を捨てようとしていた。
「…グゲ、グゲゲ?」
しかしミカルゲは逃げられなかった。
どうしてだとミカルゲは長く伸びた自分の影に目を落とす。
「ーーー“かげふみ”」
ミカルゲの影を踏んでいたのは、瀬戸のポケモンソーナンスだった。
「ナイス委員長!」
雪乃はグッと親指を立てる。
良かった、と少しホッとする瀬戸。
「もう逃げられないよ、ミカルゲ」
少しずつ近寄る雪乃。
焦るミカルゲ。
雪乃はスッとお札を構えた。
しかし、ヒュンッと風が空を裂き、お札が半分に切れた。
身体を拘束されながら、ミカルゲが最後の抵抗で”つじぎり”を放ったのだ。
油断した、と雪乃は一歩下がりミカルゲを睨んだ。
ケタケタとミカルゲは楽しそうに嗤った。
念願叶ったぞ、と。
その場の誰しもが動揺した。
これではミカルゲを封印出来ない。
万策尽きたか、と思った時、
シュンッ
雪乃の後方から、ハイパーボールが飛んできた。それは綺麗に放物線を描き、ミカルゲに当たった。
シュルル、とボールに入るミカルゲ。
コロコロと3回転がり、カチャッとボールに収まった。
「つ、捕まった…」
後ろを振り返ると、佐々木が少し伏せ目がちに立ち竦んでいた。
「ーーーでかしたルカ!!ナイス判断!!」
雪乃は佐々木の元に駆け寄り頭を撫でくりまわした。
驚く佐々木。
「ナイスや佐々木!!ようやった!!」
「佐々木くん、ありがとう!助かったよ!」
チーノや瀬戸の言葉に、言葉を詰まらせる佐々木。
「美希!」
雪乃はすぐに踵を返し地面に倒れた美希の元に駆け寄る。
「美希、美希!」
名前を呼ぶと美希は薄っすら目を開け雪乃を視認した。
「…なに、そのブサイクな顔」
「えぇ!?今言うことそれ!?」
掠れるような声で言われた言葉に衝撃を隠せない。
そんな雪乃を見て美希はフフッと微笑んだ。
「…ありがとう、助けてくれて」
美希の優しい微笑みに、雪乃も微笑み返す。
「無事でよかった」