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彼は萌音に向かって笑顔を見せる。
「もうその名前で呼ぶ人はいませんがね。お元気そうで何よりです」
「あの……どうしてここに……?」
「実はこの近くの結婚式場を任されているんです。しばらく仕事で日本を離れていたんですが、帰ってきたらドレスのお店がオープンしたと噂を聞きましてね。気になって調べてみたらあなたの名前を見つけて、もしかしたらと思って来てみたんです。というか来て良かった! また池上さんと再会出来ましたからね」
萌音はその時になって門越しに話をしていたことに気付き、慌てて鍵を開ける。
「あっ、ご、ごめんなさい! 良かったら中に入りませんか?」
「挨拶をしようと思っただけだったのでお気になさらず。急でしたし、また今度にしましょう。というか、もしよろしければ今夜一緒に食事とかどうですか? うちの式場、農園レストランも経営してるです」
農園という言葉を聞いて、カフェでの会話を思い出す。確か農業にも興味を持ってるって言ってたっけ。そのことだろうか。
「ぜ、是非伺いたいです!」
「よし、決まり。じゃあ夕方迎えに来ますね」
「わかりました!」
手を振って歩き去る姿を見ながら、萌音は懐かしいときめきを感じていた。
「あら、随分と親しげでしたがどなたです?」
背後から華子の声がして、萌音は驚いて飛び上がる。
「あっ、大学時代の行きつけのお店の店長さんだったの! フランスに行く時も背中を押してくれて……だからずっとお礼が言いたかったんだけど、まさかこんな所で再会出来ると思ってなかったからびっくりしちゃった」
モジモジしながら顔を真っ赤に染めている萌音を見て、華子は何かを察したようにニンマリと笑う。
「それだけですか?」
「えっ……!」
「あの人、萌音さんのいい人なんじゃないかなぁと思っただけです。違いますか?」
その瞬間、萌音は両手で顔を覆う。そして頭の中に先程の店長の姿を思い起こした。なんだかあの頃より大人の色気が漂って、更に魅力的になっていた。やっぱりカッコいい……。
「で、でも! もしかしたら結婚してるかもしれないし!」
「既婚者が食事に誘うんですか? それが事実なら最低な男ですが、指輪もしてなかったですしね」
「それに私、婚約者が……」
「それはそれ、これはこれです。会うだけはタダですからね! とりあえず今夜確認しないと!」
「うっ、そ、そうよね!」
「そうです。それから身支度もきちんとしましょうね」
華子にそう言われ、萌音は改めて今の自分の姿を確認する。ほぼ部屋着の自分に項垂れ、門に倒れかかった。
「やだ私……こんな格好で店長と喋っちゃった……恥ずかしい! というか、店長幻滅したりしてないかしら⁈」
「してたら食事には誘わないと思いますよ」
「そ、そうよね! よし、久しぶりにちゃんとした服を着ないと!」
想定外の事件勃発だわ……ドキドキが止まらなくなってる。