※🦄🌿と沼🎧だよ
※CPっぽくないよ(なんならCPじゃないよ)
※若干🖋と🎧が仲良い(?)よ
🌿綺麗な沼にはなんとやら
その日アクシズは世界一美しいとされる森の泉に訪れていた。作曲の為のいいインスピレーションが湧くのでは、と考えて思いつきで来てみたのだ。キラキラと空を反射して水色に光る泉を眺めていると、確かに何か浮かんできそうなものだった。じっと見ていると、なんとなくその水に触れてみたくなって、両手で手でその水をすくってみる。自分の白い手からどんどん零れ落ちていく透明な水。同じ水の筈なのに、水道水とも海の水ともやはり違う何かを感じた。
「たまには外でのんびりするのもいいな・・・」
そうしてしばらく水を手ですくって楽しんでいると、後ろからガサリと音がした。エネミーかと思い、愛用のアーメンブレイカーを構えて勢いよく音のした方を振り返った。するとそこには・・・
「え?ユ、ユニコーン・・・?」
若草色の綺麗な一本角を持った、白く美しいユニコーンがいた。その体は細く引き締まっていて、その細い体には葉と蔦の模様が入っていた。
「そ、そういえば聞いたことあるぞ・・・この世界には”幻獣”と呼ばれる存在がいるって・・・!」
”幻獣”。この世界にいる生き物達のようでそうではない、神話生物のような見た目をした生き物達のこと。存在していると言われているが、本当か否かは定かではない。その為幻獣達は、空想の世界の存在だと言われている。しかし、その幻獣が今目の前にいる。たったそれだけのことなのに、アクシズの脳はパンク寸前だった。
「ユニコーンって・・・あの?あの・・・ユニコーン・・・?え、嘘だろ??」
アクシズが状況を理解しようとしている間にも、そのユニコーンはじりじりと距離を詰めてくる。近くで見ると、1.5mほどはありそうな大きさをしており、自分達からすれば充分大きいサイズだが、一般的に見れば小さいサイズなのだろう。
アクシズの目の前まで来たユニコーンはじっとアクシズを見つめている。後ろは泉、目の前はユニコーン。背水の陣、絶体絶命だった。
「な、なんだよ・・・?俺別にお前達が好きな乙女じゃないぞ?」
「別に?処女であれば誰でもいーんだよ私らは。」
「そ、そうなのか・・・・・・・・・じゃなくて!!え!?喋った!?」
いきなり喋り始めたユニコーンに度肝を抜かれて、後ろの泉に落ちそうになるアクシズ。ぐらりと視界が揺れ、「あ、俺死んだな」と悟り、走馬灯のように今までの記憶が溢れ出す。その時、ふわりと何かに包まれるような感覚がした。パシャンと指先が水に触れるような感じはしたが、何時までたっても想像していた衝撃はこない。恐る恐る辺りの様子を探ってみると、先程のユニコーンによく似た沼が自分の体を支えていることに気が付いた。
「そんなにビビることか?おい。」
「え?ぬ、沼族・・・?さっきのユニコーンは・・・?」
「それ、私だよ。」
「マ、マジ・・・?」
「大マジ」
くいっと優雅に自分の体を抱き起こしてくれるその”元”ユニコーンのその沼。緑の瞳は怪しく光り、頭の上の馬耳はピコピコと揺れ動いていた。
「そーいえば名前言ってなかったな。私は”エクレア”。この森に住んでるユニコーンさ。なんだかお前が物珍しくて近付いた。ただそれだけ。」
「お、おぉふ・・・俺は”アクシズ”・・・。作曲家をしていて、最近スランプ気味だからいいインスピレーション湧かねぇかな〜・・・と思ってここに来た・・・」
「ふ〜ん。作曲家ねぇ・・・」
自分を華麗に助けたユニコーンもといその沼は、自分のことを『エクレア』と名乗った。アクシズも自分の名を名乗れば、エクレアはその大きな瞳を細めてアクシズを舐めるように上から下へと隅々まで観察していた。
「で、お前はどんな曲作ってんの?」
「あ、あぁ、こういう曲なんだが・・・」
アクシズが自身の武器と愛用のヘッドホンを繋いでエクレアに渡す。エクレアはくるくると指を回して馬の耳を消し、自然にヘッドホンを装着した。
「その耳消せるのか・・・」
「消すというか、隠すの方が正解だな」
トントンと指でリズムを取りながらアクシズの作った曲を聞いているエクレア。よく見ると若干頬が緩んでおり、どうやらいやなタイプの音楽ではないようだ。
「んー、いいんじゃねぇの?」
「ホ、ホントか!?いや〜、意外と自信作だったからダメ出し食らってたら俺凹んでたわ・・・」
「メンタル弱すぎだろお前w」
ケラケラと笑いながらヘッドホンを外し、それをアクシズへと返す。アクシズは受け取ったヘッドホンの接続を武器から外して何処かに仕舞いこんでいた。エクレアはアクシズの作業工程を見ながら何処からか取り出した煙管を咥えていた。
「あのー・・・エクレアさん?その、今咥えてるそれなんですかね??」
「ん?ああ、これはヤクだ!!この森の片隅に生えていてなぁ!私好みに育て上げているんだよ!!お前も一本どうだ?飛ぶぞ?」
「遠慮しておきます・・・」
アクシズに煙管の煙を吹きかけて勧誘してみるも、手で煙を払いながら拒まれてしまう。エクレアはチッと小さく舌打ちを響かせて煙管を咥え直した。
「てかユニコーンって、毒系効かないんじゃないっけ?」
「おー、良く知ってんなぁ!私の場合はな、ヤク系はもうほぼ効かないが毒は普通に食らんだ。だからこそ!この私の抗体をも破れるとんでもないヤクを研究中なんだ!!」
「へ、へぇ・・・」
アクシズは若干引きぎみでエクレアの話を聞いている。その研究力には関心するものがあるが、それがヤクの研究となるとすんなりとは受け入れがたいものがあるだろう。当たり前だ。
「あー、そうだ。そこの水。当たり前だが飲むんじゃないぞ?後潜るのもあまりおすすめしない。」
「?どうしてだ?」
アクシズがそう尋ねれば、エクレアは煙管の先を泉の方へ向けながら話を続けた。
「泉や池、湖なんかの水は循環が無いから雑菌が繁殖してるからな。飲むんだったら川の水がいい。そしてここの泉はな、とんっっでもなく深いからな。下まで行ったらまず上がってこれないぞ。 」
「うお・・・やべぇな・・・」
「陥没穴みたいなもんだしな。なんなら一番下の方に洞窟のオマケ付きだ。」
「なにがどうなったらそんなことになるんだよ・・・」
アクシズは改めて泉の底を除きこんで身震いする。綺麗な花には棘があるとはいうが、まさにこういうことを指す言葉なのだろう。
「それはそうと俺と会った時、最初に『処女であれば誰でもいい』って言ってたよな・・・?これ、俺が処女じゃなかったらどうなってたんだ・・・?」
「そりゃあ、突き殺してたさ。」
「怖・・・」
エクレアはふふっと笑ってはいるが、その瞳の奥はまったくもって笑っておらず、本気なのだと伝わった。アクシズはその視線から逃れたくて、そっと視線を逸らした。
「ま、私は帰るわ。くれぐれもその処女失うんじゃねぇぞ?次来た時に喪失してたら・・・どうしてやろうか・・・?」
「ひぇっ・・・」
「ハッ、冗談だよ。私はそこまで処女に拘りは無いしな。」
喉元をすぅっとなぞられ、背筋にゾワリと冷たいものが走る。この瞬間、本当に命の危機を感じた。当の本人のエクレアは「冗談だ」と笑って元のユニコーンの姿へと戻った。
「じゃあな!ウイエによろしく言っとけよ〜!」
「え!?お前なんでウイエのこと知って・・・!?」
アクシズの質問にも答えず、エクレアは颯爽と走り去ってしまった。思わず追いかけようとエクレアが去った方向の茂みを抜けると、森の入口に出てしまったようだ。あの泉とここの入口は勿論、 繋がって居なかった筈だし、かなり距離があった筈。
「なんだったんだ・・・?」
アクシズは首を傾げながらも帰路に着くことにした。森の外は日が落ちかけており、空が橙色に染まり始めていた。遠くから聞こえるヒグラシの鳴き声に耳を傾けながらアクシズは歩みを速めた。
この後、ウイエが化け狐だと知るのはまた別のお話。
__𝐹𝑖𝑛.
コメント
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ぴゃーーー!!良き!!!!! やべぇっす!世界観好きすぎるぅ…!!!