千夏です!!
前回の続きからですね!
それではどうぞ!!
桃視点
コンコン。
赤「ないくん、起きてる?」
ぼんやり目をあけると、いつもの天井。
だけど昨日より、少しだけ色が明るい気がした。
桃「……起きてる。というか、いま起きた」
扉がわずかに開き、りうらが顔をのぞかせる。
赤「じゃあさ。今日は散歩、行けそう?」
布団の中で、心臓がどくんと鳴った。
行けるかどうかなんて、まだわからない。
だけど――行ってみたい気持ちは、昨日より大きかった。
桃「……ちょっと待って」
布団から半身を起こす。
頭がふらっとした。昨日よりはマシだけど、まだ重い。
赤「無理そう?」
桃「いや……行く」
その言葉を言えた自分に少し驚く。
りうらは、嬉しそうに笑った。
赤「じゃあ着替えてきて。待ってるから」
扉が閉じ、部屋に静寂が戻る。
俺は深く息を吸って、そっと布団から足を出した。
一歩、床に。
それだけで、世界に近づいた気がした。
赤視点
ないくんが玄関に姿を見せた時、思わず声が漏れた。
赤「お、ほんとに来た……!」
桃「うるさいな…俺だってやる時はやるよ」
寝癖が残ってるし、目の下のクマも濃い。
けど、俺からしたらそんなのどうでもいい。
“外に出ようとしてくれた”それだけで十分だった。
赤「じゃ、行こっか」
桃「……うん」
ふたりで歩き始める。
最初はゆっくり、ほんとにゆっくり。
ないくんの足取りは不安定だけど、前に進んでいた。
桃「風、冷たい……」
赤「うん。でも気持ちよくない?」
桃「……悪くない、かも」
それを聞いて、胸があったかくなった。
ないくんが外の空気を“悪くない”って言うなんて。
それだけで救われる。
道端の花を見て、ないくんがぽつりとつぶやく。
桃「……りうらはすごいよね」
赤「何が?」
桃「ちゃんと学校行って、友達いて、家でも完璧で……」
赤「あのさ」
歩くのを止め、ないくんの前に立つ。
赤「俺、完璧じゃないよ。学校で友達と喋ってても、ないくんの顔がずっと浮かんでる。 帰ってきても、部屋の前で声かけるの何回も迷うし。 ないくんが起きてなかったら“また無理だったのかな”って落ち込むし」
一瞬、ないくんの目が揺れた。
赤「俺だって、ないくんがつらいとしんどいんだよ。 でも、ないくんが俺の前にいるだけで……ちょっと安心する」
ないくんは黙ったまま、ほんの少しだけ視線を落とした。
桃「……ごめん」
赤「謝んないでよ、w」
俺の声が少しだけ上ずる。
すると、ないくんがふっと笑った。
桃「うん、わかった。……ありがと」
その笑顔を見て、今日の散歩の意味が全部わかった気がした。
桃視点
散歩から帰ると、体はぐったりしていた。
でも、心の奥は軽かった。
玄関で靴を脱ぎながら、りうらが言う。
赤「ないくん。今日、起きられたじゃん。すごいよ」
桃「……まぁ、たまたまだよ」
赤「たまたまでもいい。明日も無理なら無理でいい。
でも、また散歩行けそうな日があったら……一緒に行こ?」
桃「……考えとく」
赤「考えるだけでいい」
りうらは笑った。
その笑顔を見て、胸がちくっと痛くなる。
桃「ねぇ…りうら。」
赤「ん?」
桃「俺……もうちょっとだけ、生きたいって思った」
りうらの目が、ほんの少し見開かれた。
赤「……うん。よかった。」
桃「りうらのおかげでね」
赤「ないくんが頑張ったんだよ」
その言葉に、救われたのは俺のほうだった。
明日も天井を見上げるだけかもしれない。
また布団から出られない日が来るかもしれない。
だけど、りうらがいてくれるなら。
俺はたぶん、大丈夫だ。
そんな、小さな確信が生まれた日だった。
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コメント
1件
うわ、赤さん優し 桃ちゃん偉すぎ😖