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第二十一章
現実
―白虎の代償―
水道から流れる水音だけが、静かな空間に響いていた。
琥珀は服に付いたアイスを洗い流しながら、小さく息を吐く。
「……やっぱり、おかしい」
誰にも聞こえないように小さな声で琥珀は確認するかのように呟いた
「……本当に、味がしない」
「気付きましたか」
「!!羅刹くんか…びっくりしたなぁ…それより…きづきましたか、って…」
不安気に瞳が揺れる…だが琥珀はそれでも羅刹を見つめた
「白虎の巫女さまは本日、白虎のチカラを使われ常人以上のチカラを発揮した…ですから疲れたのですよ」
羅刹は穏やかに微笑むと、ゆっくりと屈み込み、アイスで汚れた琥珀の服を丁寧に洗い始めた。
「!!っ、じ、自分でやるよ羅刹くん!」
「いいえ。白虎の巫女さまは、本日は大変、疲れていらっしゃいます。それに、これは僕の仕事ですよ」
「……っじゃ、洗ってもらおーっと……羅刹くん。白虎のチカラを使う時に白虎が何かを言いかけたのを、あたし遮ったの」
羅刹は『はい』と小さく答え黙って服を洗い続けた
「……神父さまが言ってたでしょ?チカラを使えば五感の1つが消えるって…それで夕飯を食べた時に味が薄くて…ピリ辛が少しも辛くなくて…あたし食べるのが大好きだから…味覚に影響が出たんじゃないか、って…」
一瞬、羅刹の手が止まった…だが、すぐ何事もなかったように手を動かし始めた
「だから、っいま…羅刹くんが疲れただけ、って…い、ってくれて…っ」
「……!!っ白虎の巫女さま…」
――ぽた、っ…
琥珀の瞳から零れ落ちた一雫が、羅刹の手の甲を濡らした。
羅刹は静かに手を洗うと、ゆっくり立ち上がった。
そして懐から取り出したハンカチで、そっと琥珀の目元を拭う。
「白虎の巫女さま…一度、神殿に戻りましょう。明日、巫女さま方にも、お話をしますが僕を含め巫女さま方も知らないこと、知りたいことが多々おありでしょうから」
「羅刹くん…わかった。ありがとう。先に行くね」
琥珀はいつもの笑顔を浮かべ、食堂へ戻っていった。
琥珀の姿が見えなくなるまで、羅刹はその場を動かなかった。
濡れた手を見つめ、静かに目を伏せる。
「……やはり、始まりましたか」
その小さな呟きは、水道の流れる音に溶け、誰の耳にも届くことはなかった。
コメント
1件
うわ…琥珀ちゃん、気付いちゃったんだね…「味覚が消えた」って、あの白虎の力の代償がもう始まってるの、辛すぎるよ😢 食べることが大好きな子が、自分の好きな味を感じられなくなるって、本当に怖いことだと思う。羅刹くんの優しい嘘も、気付いてるふりして受け入れる琥珀ちゃんの強さも、胸がぎゅってなった… 最後の「始まりましたか」って羅刹くんの独白、何か知ってるんだろうな…続きが気になるよ。輪廻さん、今日も丁寧な心理描写で引き込まれました🖤