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「元宮さん! おはようございます!」
「お、蜷川おはよう! 今日よろしくな?」
「はい! もちろんです!」
朝の空気の中、満面の爽やかな笑顔で蜷川が走ってきた。
昨日、社内で偶然会った際になんとなく伝えてはいたが、夜に正式にお願いの連絡を入れたら、ものの数秒で快諾の返信がきた。
こっちは結構な面倒ごとを頼んでいる自覚があるのに、なんでそんなに嬉しそうなんや。ありがたいことには変わりないねんけど。
「冷蔵庫にとりあえず使えそうな食材詰め込んでるから、なんでも自由に使って。もし面倒くさかったら、必殺のアンパンマンカレーがあるからな? あいつら、結局あれが一番喜ぶねん」
「うわ、懐かしい! アンパンマンカレー、俺も久々に食べたいです」
「いっぱい買い溜めしてるし、何個でも食べてええよ。……言うても、うちは昨日もカレーやったからな。二人は嫌がるかもしれんけど」
「大丈夫です。アンパンマンカレーなら三日連続でもいけるんで!」
まぁ、つい最近まで子供やった蜷川が言うなら間違いないやろ。
「今日も仕事早めに終わらせます!」と張り切って駆けていく姿を見送りながら、ほんまにいつ会っても爽やかな嵐みたいな奴やな、と気持ちが穏やかになった。
「ふわぁ……おはよ、もとちゃん」
「うわ、爽やかな蜷川の後に会うと、よりおっさん感強いな、秀太」
「アホか。これでも綺麗なおっさんランク上位やぞ」
ははは、と二人で笑い合いながら部署に向かう。
そうや。営業への異動願いを出したものの、秀太と一緒に働けなくなるのは、それはそれで寂しいな……なんて考えていると秀太が口を開いた。
「もとちゃん。あれ、話しつけといたから」
「へ?」
「営業の異動届。昨日たまたま飲みの席で社長に会ってな。下に言うてちんたら待ってるより、トップに掛け合うのが一番早いと思てな。引き継ぎができ次第、異動できると思うわ」
「……うわ、口悪いけど、ほんま頼りになるわ」
「お前の為じゃないで? 弦くんと洸くん……あと、蜷川の為や」
「ふふっ、ありがとうな」
照れ隠しに頭を掻く秀太の肩を軽く叩いて、感謝を伝える。
ほんま、俺の周りはええ人ばっかりや。いつかみんなに、この恩を返せたらええんやけど。
「で、子守の方は上手いこといってんの?」
「もちろん。幼稚園の新先生はプロやし、料理も家事も完璧やからな。蜷川には今日、初のワンオペ出勤を頼んでる。前に俺がいる時に子供らに会わせたんやけど、馴染みすぎてて全く問題なかったわ」
「ほんま、蜷川はすごいよな。絶対あいつは出世するな」
「俺、数年後は多分、蜷川の部下やな」
「……永遠に悲しすぎる運命背負ってんな、もとちゃん」
苦笑いしながら秀太の背中を軽く小突き、俺たちは賑やかなオフィスへと足を踏み入れた。
営業への異動が決まれば、今のこの事務作業の山とお別れだ。引き継ぎを完璧にするためにも、今日という一日を無駄にはできない。
新と蜷川、そして、秀太がこじ開けてくれた新しい道。
いくつもの優しさに支えられながら、俺の新しい一日が、始まる。
るる太📱⚡🐼
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