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酒を求めてゾンビ化した飲んだくれ共を振り切って神社に戻る。
匂いが移っていたのか帰ってきた時に神主さんに飲酒を疑われたが、僕は無実です。
さて、次はキラービーとの契約だが。
蜂娘とか贅沢はもう言わないから、厄ネタなしで、お財布の負担が軽いのならもうそれでいいから……
そんなことを考えながら契約の場に臨むと、
ブブブブブブブブブブブブブブブブブ
ブブブブブブブブブブブブブブブブブ
蜂蜂蜂
蜂俺蜂
蜂蜂蜂
ブブブブブブブブブブブブブブブブブ
ブブブブブブブブブブブブブブブブブ
さらには上空にも蓋をするように、
蜂蜂蜂
蜂蜂蜂
蜂蜂蜂
空が3割、蜂7割である。
皆大好き包囲殲滅陣の完成形かな?
だが俺も霊長類の端くれとして、蟲に怯え竦む等という情けない様は見せられない。
念の為装備してき防具に隙間が無いか再確認し、キラービーの群れを睥睨すると、
息を吸い込み、
「ハチミツください!!!!!!」
ブブブブブブブブブブブブブブブブブ!!!!!
ギチィッ!ギチギチギチギチギチギチギチィ!!!
「……ハ、ハチミツクダサイ……」
次の瞬間、上空の群れが一斉に俺に襲い掛かってきた。
槍のような針の雨を死なぬ気で全力で躱す。(脳内BGM:怒首領蜂のアレ)
上からの弾幕を乗り切ったと思ったら、今度は前後左右から来やがったので脳内BGMをアンダー〇イルのラスボス戦に切り替えて、
気合でマトリックス避けをする。手に入れた時はいらない子扱いだった《剛幹+1》くんがここに来て大活躍である。
体幹が崩れにくくなるという事がこんなにも大切なことだとは知らなかったよ……
ただ、願わくばもう少しMP効率が良いとだね。
避け切れない針は手で弾き、ズボンを地面に縫い留めていた奴の針は折れない様に気を付けて抜いて、回避中に目星をつけていた一匹に向かって接近を試みる。
接近に気付いたヤツは慌ててキラーナイトビーを盾に逃げ出そうとするが、残念ながらこちらの方が1手早い。
「セキロー!」
「ガウッ!」
「俺の背中に乗せて連れ込んでいたセキローが擬態を解いて全力疾走を開始して、キラーナイトビーを飛び越える。
セキローを追おうとするキラーナイトビーの背中に投網を投げつけ、追撃を阻害できた俺がセキローの向かった方を見ると、
ワォ~ン
ターゲットの蜂を足で抑え、勝利の遠吠えをするセキローと、足元でジタバタ藻掻く女王蜂の姿だった。
セキローに近づき、
「お疲れさん、セキロー。お手柄だね」
「バウッ、バウ」
ギチィッ!ギチギチギチギチギチギチギチィ!!!
「手荒な真似をしてすみませんね。でも、話を最後まで聞かずに先に襲って来たのはそっちだから」
ギギギギギギギ……
鳴き声が大人しくなり、目から攻撃色が消えていく。同時にまだこちらを襲おうと包囲陣形を再構築しようとしていたキラービー達も徐々に散開していった。
それを見てキラーナイトビーの投網を外すと、彼らはすぐさま女王蜂の元に駆け付けた。
さて、ようやく交渉開始だ。
「初めまして、女王陛下。私、人間の冒険者でサマナーをしております小野麗尾 守と申します。本日はキラービーの皆様方と契約を結びたく、こちらに押しかけさせていただきました」
最近分かってきたが、この契約は基本人間側からの押し売りに近いのだろう。モンスター側からは何か事情が無い限り特に結ぶ理由はないんじゃないかと思う。普通の契約ではMPを渡しているが、モンスターがMPを欲しがる理由ははっきりしていないし。そのあたりは今度エインセル辺りに聞いてみるか。
何はともあれ、契約だ。騙し打ちは論外で、まずは双方納得できる形で契約を結ばねば。とはいえ、流石にアル中共とは違って蜂の需要は読み切れない。ここは素直に、
「私の希望はキラービーの皆さん航空戦力として活躍してもらう事と、皆さんが作れる蜂蜜を分けて頂ければと思っているのですが……「ギチギチギチギチギチ」とんでもない!全部寄こせという事ではないです!皆さんが作る分から、定期的にほんのこの瓶一つ分分けていただければという話です!「ギギギギギ」え?花ですか?花が欲しい。なるほど。分かりました。ではすぐ確実に用意、とはいきませんのでこちらの契約は花の用意の目途が出来て、そちらがご満足出来るようでしたら改めて契約という事で如何でしょうか?
「ギギギギギ」はい、普通の召喚契約はこちらに。こちらは本日ご契約いただけると。ありがとうございます」
契約した瞬間、ドワーフ達の時と同じように、カードが何故か目の前に出てきたかと思うと、目算5メートル位まで浮かんだかと思うと一瞬閃光弾の様に光り輝いた。落ちてきたカードを受け取ると、そこにはどこかの森を飛んでいる蜂のカードが、花畑で熊の様な獣に群れで襲い掛かる蜂の絵のカードに切り替わっていた。
あれ?熊?戦闘力高くね?なんで俺生きてるの?
キラービーのドロップ品のキラービーハニーの流通価格が良いお値段していたから金策に確保したかっただけなんだが。
突如急激に体感温度が下がったので暖を求めて隣に在った毛皮の塊にしがみ付いたら頭をマルカジリされたんだが。
被っていたヘルメットに歯形付いていたんだが。
ヘルメットが無ければ即死だった……