一覧ページ

めんどくさがりの魔法学校！

第1話 - 第1話

1,045

2023年01月05日

#ワイテルズ

#我々だ

#ら運営

Chara@Mammy🦄👊

乗合馬車（のりあいばしゃ）を乗り継いで進むこと数日。少女＿＿菜乃葉（なのは）はようやく目的地に到着しつつあった。

魔法を使えばもっと速く移動する事も出来たのだが、彼女は目立つことが大嫌い。光魔法などで高速移動したら目立つので、あえて庶民（しょみん）らしい手段で移動した結果、それなりに時間がかかってしまった。

しかし、時間をかけて辿り着いた甲斐（かい）はあった。最後の丘を越えた瞬間、菜乃葉の目に飛び込んできたのは予想外の絶景だった。

菜乃葉

「これがハリコルオン魔法学校…」

「ああ、君も新入生かい？　初めて見た子は、みんな驚くんだよ」

ケラケラと笑う馬車の御者（ぎょしゃ）の言葉も、菜乃葉の耳にはもうあまり入っていなかった。

菜乃葉

「……すごい」

菜乃葉の眼前（がんぜん）には、見渡す限りの広大な湖が広がっていた。しかし、彼女の視線は湖の中心部に釘付けにされている。

そこにあるのは、光輝く半球に覆われた巨大な城。その城が菜乃葉がこれから入学する、ハリコルオン魔法学校の校舎だった。城を覆っている光の半球ドームは、外部からの攻撃や侵入者を防ぐ結界らしい。菜乃葉も光魔法の所持者（しょじしゃ）としては存在を知っていたが、実際に目にすると、その幻想的な輝きに目を奪われた。

「そうだ、君も新入生なら知ってるかな？　どうも今年は、例年より新入生が多いって噂だよ」

菜乃葉

「そうなんですか？」

「他国からの人間や色んな地方から来ている人が多いんだってよ」

菜乃葉

「……へぇ」

ハリコルオン魔法学校の入学年齢は、厳密（げんみつ）に15歳と決まっているわけではない。そもそも何歳で魔法適正（まほうてきせい）が見出されるかは、運や個人差が大きい。その上、家庭の事情や、今回のように世界情勢（せかいじょうせい）の影響で入学する時期をズラす例もある。数歳前後（すうさいぜんご）する程度なら、特に珍しい事ではない。

「しかも、今年は有望な新入生が何人かいるらしい。魔王を倒した英雄様みたいな大魔法使い様が、その中から出てくるかも知れないな？　精々負けないように、少女も頑張らないとな！」

菜乃葉

「はっ、ははは。はいそうですねガンバリマース……」

菜乃葉は内心「めんどくせぇ…。」としか考えておらず、面倒くさくなって適当な返事を返した。

「ここまで来れば、あとは湖を渡って学校に入るだけだ。渡しの船は、その辺を探せばすぐ見つかるはずだが……必要なら舟まで案内しようか？」

菜乃葉

「いえ、ここまでで大丈夫です。あとは自分でなんとかしますから」

「そうかい？　じゃあ、道中お気をつけて。学校、頑張んなよー！」

菜乃葉

「どうもありがとうございましたー」

気の良い御者と別れの言葉を交わし、菜乃葉は馬車が去って行くのを手を振って見送った。すっかり馬車の影が見えなくなると、彼女は湖の岸辺沿い（かいがんぞい）をのんびりと歩き始める。

菜乃葉