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1.出会い
🖤×💚
❤️×💙
「カフェにでも入ろっか…」
「はぁ…だね、」
両手に大荷物を抱えた状態で、舘さんは答えた。
午前中に調子に乗って買い込んだツテが回ってきたな、なんて話しながら歩き回っているけど、 俺もそろそろ足が限界。
が、生憎現在の時刻は午後13時。
どこの店舗も混みあっている。
「ねえ目黒、あそこは?」
「ん?ああ、!」
やっと希望の光を見つけたのは、道を徘徊すること約15分が経過した頃だった。
もう外席でもいいから、と立ち寄ったカフェは、奇妙なことに店内もガラ空きであった。
これは場所が悪いな、と舘さんが笑う。
思い返してみれば、結構な路地を進んできた気がする。
とうとう道の開けたところにあったのが、ここだ。
「、は?あ、いらっしゃいませー…」
「こんにちはー」
「ごきげんよう」
「舘さんお願いだから普通に挨拶して」
こちらも戸惑ったような声をあげ、足を止めた店員。
目深くキャップを被っている彼は、パタパタと店奥に消えていった。
そんなに客が珍しいのか、と思ったが、見た目通り客席はガラ空きであった。
「えぇ?!本当だ…」
「だろ?びっくりだよな…」
「…あの、?」
「、すみませ、ご案内します…!」
奥から出てきた店員も、物珍しそうに俺を見つめた。
視線を感じて居心地いいとは言えないものの、俺らの疲れきった足は、席から立ち上がることを許さなかった。
「何見てんの」
「え?」
「あの人でしょ、あの最初に出てきた店員さん」
「…まぁ、いやでもそんなに見ては…」
「嘘つけ、今だって俺の方見て話してないじゃん」
顔をほんのり紅くした舘さんがくるっと振り返った、
気がした。
「な、お前だって俺の方見てねぇじゃねぇか、!」
「え?いやそんな…」
「言われたら向けよこっち」
「…」
「あれだろ?俺の見てた人の次に出てきた人」
「ん」
正直に言おう。
タイプだ。
めっちゃ可愛い。多分、舘さんも同じなのだろう。
振り返ると、視線は彼を追いかけていた。
「店員さーん」
「はーい」
「注文お願いします」
「何にいたしますか?」
俺は自分が目で追っていた店員さん。
心の中でガッツポーズをし、ふっと振り返ると、 舘さんはまだ他の店員を目で追っており、不服そうにしている。
「なんだよ、こっちの人のが可愛いだろうが」
「いーやあっちの人の方が可愛いね」
「…あの…?」
「あーすみません、えっと、このパンケーキとコーヒーをお願いします」
「承知しました、お連れ様は…?」
「ぁ、俺は…」
「私が伺います」
あまり顔に出ないタイプの舘さんだけど、顔がパァっと明るくなったのを感じた。
「ありがとう、翔太」
「ん、阿部ちゃんは調理お願い」
ニコッと最初の店員に笑いかけ、こちらにもペコッと一礼して去っていった。
礼儀正しくて、可愛い。
なんて思ったのは、内緒。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
客のない理由が分からない程、安心する優しい味で絶品だった。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様です」
「ありがとうございました」
「俺ずっと店員さんのこと可愛いなって思ってて」
「えぇ…っ、急になん、ですか、/」
とんでもない爆弾を落としていった舘さん。
負けじと俺も言った。
「俺もです」
「言われてるよ、なべ、笑」
「ぁいや、俺は貴方に…」
「え?…へぁ、/」
紅潮し視線を逸らした2人の前にお金を置き、軽く会釈して退店した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「舘さん」
「ん?」
「あの人、翔太さんっていうらしいよ」
「、ふぅん、目黒が見てた人は亮平さんっていうらしいよ?」
「え、ぁ、ふーん…」
「なにその反応」
「そっちこそ」
「「興味あるくせに!」」
言い合いながら、俺らは路地を抜けた。
「「連絡先聞いときゃよかった…」」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねぇ翔太」
「ん?」
「…あの人たちイケメンだったね」
「まぁ、な」
コメント
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