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『再会 〜アザミ〜』
車を降りると目の前に立派な建物があった。
「凄い。舞踏館みたいなところですね。赤と白のレンガ造りが立派です」
空の青さが建物をより引き立てていて、一枚の絵画のような厳かな雰囲気だった。
ここで会議をする杜若様は凄いなと、改めて実感する。
周囲は商社や銀行など、企業の業務施設が集まった落ち着いた地区。
帝都に住んでいてこのような場所は初めてで、世間に疎いと思ってしまった。
圧巻の建物を見上げていると、葵様が隣とくすっと微笑まれた。
「ふふっ。初めて見たらこんな場所、驚いて当然ですよ。僕も中で迷子になり掛けましたから。さてと、そろそろ十五時になります。僕達は中庭で待っていましょうか」
「こんな立派な建物、私が入っても良いのですか?」
「環様は杜若家の立派な関係者ですから、大丈夫ですよ。碧が後程、杜若様を連れて来てくれるまで、のんびりと庭で散歩でもしていましょう」
さぁと葵様が前を行くので、はぐれないように後をついていくのだった。
公会堂の広い扉の左右に佇む守衛の方達を、葵様は軽い会釈で問題なく中へと入った。
中に入るとそこは、モザイクタイルが美しいホールが広がり、その下を真っ直ぐ進むと、すぐに庭に出たのだった。
そこは日本庭園とは違って、整えられた木々があるのではなく、
植物が自然に茂り、花や緑の組み合わせで奥行きのある立体的な空間が広がっていた。
日本庭園とはまた趣が違う、自然の素材を活かしたという感じがした。
さらに洒落た噴水が設置されており、絶え間なく続く水の音が心地よい。
清々しい風が私の頬を撫でて、お庭を見つめてしまう。
「凄く綺麗なところですね」
「いやぁ、ここはいつ見ても見応えありますね」
「薔薇まで咲いていて、とってもハイカラです……! 杜若家にある敷地内の花壇も愛らしくて素敵ですけど、ここは異国情緒があります」
さっと、前に一歩踏み出せば草履の下に柔らかな土の気配を感じる。
そのまま、くるっと回って葵様に喋り続ける。
「ここで杜若様が差し入れを食べてくれたら、もっとおいなりさんが美味しくなってしまいそうですね」
包みをぐっと胸に抱くと、葵様がぱっと上を向いた。
「可愛いらしい方だ。杜若様が羨ましい」
「え?」
「なんでもないです。さて、杜若様の代わりなんて大それたことは出来ませんが、植物の案内ぐらいは出来るので少し歩きましょうか」
「はい。よろしくお願いします」
そうして、葵様としばらく素敵なお庭を散歩することになった。
もう少ししたら杜若様に会えると思っていると、足取りも軽やかになるばかり。