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琳埜
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夜。
玄関のドアが、静かに開いた。
「……」
ソファでスマホをいじっていた葛葉は、顔を上げる。
「ローレン?」
返事がない。
コートも脱がずに、玄関で立ち尽くしているローレン。
「……おい」
近づくと、俯いたままのローレンの肩が小さく震えていた。
「……どうした」
『……失敗した』
「は?」
『……仕事で……』
靴も脱がず、その場にしゃがみこむ。
『……最悪……』
声が震えている。
「ちょ、床冷てぇだろ」
葛葉はローレンの腕を掴んで、無理やりリビングに連れていく。
「座りな」
『……』
「何があったの」
『……俺のミスで……』
『……収録とか、全部止まって……』
『……みんなに迷惑かけた、……』
ポロッと、涙が落ちる。
「……それだけか?」
『……それだけって言うなよ……』
『……俺……向いてないのかもしれない、泣き……』
葛葉は溜息をついて、ローレンの前にしゃがんだ。
「お前さ」
『……なに……』
「失敗しねぇ奴、見たことあんの?」
『……』
「俺なんか毎日ミスってるけど?」
『……それと一緒にするな……』
「一緒だろ」
ローレンの頬を、ぐいっと上げる。
「顔、ぐちゃぐちゃ」
『……見るな……』
「泣くくらい真面目にやったってことだろ」
『……』
「適当にやって失敗したなら問題だけどさ」
「お前、ちゃんと考えてやってただろ」
『……うん……』
「なら、今日はもう終わり」
『……でも……』
「でもじゃねぇ」
葛葉は立ち上がって、ローレンの頭をぽんと押した。
「飯、食え」
『……食欲ない……』
「じゃあスープ」
『……子供扱いすんな……』
「今のローレンは子供」
『……くっさん……』
「何だよ」
『……俺……悔しい、っ……』
「うん」
『……っ、情けない……』
「うん」
『……でも……』
ローレンは急に立ち上がって、葛葉の服を掴んだ。
『……一人でいたら……無理だった……』
声が完全に泣いている。
「……」
葛葉は少し驚いてから、ローレンの背中に腕を回した。
「……帰ってきて正解だろ」
『……うん……』
「ここは、お前が失敗してもいい場所」
『……』
「仕事でダメでも」
「俺んとこでは、ローレンはローレン」
『……ずるいこと言うな……』
「何が」
『……泣くに決まってるだろ……』
ローレンは、ぎゅっと葛葉に抱きつく。
『……ごめん……』
「何に対して」
『……弱くて……』
「バーカ」
『……』
「弱い時に帰ってくる場所がある方が、強いんだよ」
『……くっさん……』
「今日はもう風呂入って、飯食って、寝ろ」
『……一緒に……いて……』
「当たり前だろ」
『……離れんな……』
「離れねぇよ」
ローレンは、葛葉の服に顔を埋めて、しばらく泣いた。
その間、葛葉は何も言わず、背中を撫でていた。
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