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第0話 プロローグ
ガタゴトと揺れる電車内。今は春だが夏のように暑いだからだろうか。
妙に効きすぎている冷房に寒さすら感じる。けれど。
そんな悠長なこと言ってる間に熱気で車内が包まれる。
朝の通勤時間帯なのだ。満員電車になったのも当然と言える。大体は押し潰されそうになりつつも乗ったら乗ったで自分の降りる駅までスマートフォンの画面とにらめっこしている人が殆どである。
そんな中一人、スマホもみずにただちらちらと周りを見ている女子高校生が居た。
そうすると狙いを定めたかのように近くのサラリーマンの手を掴んだ。
「この人!!痴漢です~!!!」
周りの視線は瞬時に自身のスマホから声がした方にと変わった。
実際、女子高校生が手を掴んだ人は痴漢なんてやっていないのだ。
手を掴まれたサラリーマンは必死に冤罪だと伝えようとするが場の状況を考えれば弁解は無理だ。
その予想道りサラリーマンを誹謗するような声が上がってくる。
ここは1つ私が出てもいいのかもしれない。同じ女子高校生だし。と呑気に考えて居たら
私が座っている席の隣の男子高校生が発した。
「いや。その人はやっていないでござるよ。」
先程まで騒がしかった電車内もその一言で静まり返った。女子高校生も焦ったのだろうか。
「え、ほんとにやられたんですよぉ!!」
と大きな声で主張した。無論やられてなどいないが。
「いや。拙者は先程まで拝見していたがそのような卑猥な事はしてなかったように思える。」
「もしお主がどうしてもそう思うなら風呂敷等が当たったのでは無いでござるか?」
「い、いやでもぉ…」
女子高校生はまだめげてないようだ。
暫く静まり何を思ったのだろうか。
不気味な笑みを浮かべた。
「ほ、ほんとにやられたんですぅ…」
「あ、あのぉ……もしかしてお兄さん達仲間ですかぁ?」
グル。か、よく考えたものだ。
1度そういう話題に触れてしまったら最後。野次馬が目を付ける。
「確かに見てたなんて誰でも言えるしな。」
「証拠あるんですかぁー??」
女子高校生が勝ったというような笑みを浮かべる。誰もそんな女子高校生の状態に気付かないのだ。
やはり面白半分で手を突っ込んでいるのだろう。
男子高校生は少し困り顔で何かを考えている。
「誠に拝見してたのでござるがなぁ。。」
「あ、あの!!!本当に俺やってないです!!」
冤罪を吹っかけられたサラリーマンが言う。よく言った。この場面で発するというのは相当な勇気がいるだろう。
仕方がない善が悪に負けるのは私も見ていて不満だ。
サッと手を挙げ呼吸を整えなるべく遠くまで聞こえる透き通った声で発言する。
「私も見ていました。その人は断じて痴漢等はやっておりません。」
よし言えた。と自分を肯定する。流石に冤罪を吹っかけた女子高校生も同じ女子高校生に言われたら強く出れないだろう。
「……お兄さんが言った通り鞄とかが当たったのかもしれません。。」
少し不服そうな顔でようやく諦めた。
その女子高校生は次の駅で降りていった。
一騒動があったあとまた電車に揺られながら終点の駅まで待つ。あと約2時間ってところだ。不思議なことに隣の男子高校生も、冤罪を吹っ掛けられたサラリーマンも中々降りない。
そんな事を考えながらあと2時間。少し寝てもいいかと思い始めると最後。急にうとうとし始める。まぁそりゃそうだ。最近家業が忙しく、丸3日寝てないのだ。そう思うと私の意識はそこで途切れた。
「お主、お主。終点でござるよ。」
そんな声に起こされると私はいつの間にか男子高校生の肩に乗って寝ていたことが判明した。
「す、すみません!!」
流石に見ず知らずの異性に急に頭をあずけられるのは流石に痴漢より酷いのでは……と思いながら必死に謝罪をする。
「まあとりあえず。降りた方が良いでござる。」
少しエスコートされながら電車を降りる。降りたところに先程の冤罪を吹っかけられていたサラリーマンが居たのだ。
奇遇だなと思いつつ。男子高校生に精一杯の謝罪をする。そうすると
「そこまで必死に謝らなくても良いでござるよ。」
優しい声でそっと呟いた。
「それより先程の助太刀。感謝致す。!」
にぱっと笑いこちらを見る。
「あ、あの ……!」
「さ、先程は冤罪を弁解してくださりありがとうございました!!」
ほんとに冤罪をふっかけられただけなのだろう。人の良さが伝わってくる。
「いいのでござるよ。拙者はあくまで当然のことをしただけな故。」
「律儀でござるな。」
その声色からも本心で言っているということがわかる。
「私なんか一言言っただけですし……」
と本当の事を発する。
「一言だけでも貴方が発しなければそちらの方もグルとして認識されていたんです……!!」
必死そうに声を上げる。
「女性の貴方が言ってくれたことで完全な弁解ができました!ありがとうございます……!」
本当に泣きそうな目でこちらを見てくるものだから少し反応に困った。
それを察したのか男子高校生は
「まぁとりあゑず。一件落着でござるな!」
この時は知るよしもなかった。まさか痴漢の冤罪を助けたのがきっかけで、赤い糸に結ばれた人と出逢うなんて思っていなかった。