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第2話「借りた200円と、 少しずつ近づく距離」
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放課後、下駄箱の前で財布を開く。中には、小銭。ちゃんと200円。
○○(…今日、返しに行く)
あの日、駅で助けてくれた二口先輩。
一瞬だけだったけど、助けられたって記憶はちゃんとある。
そして――地味に気になってる。
ってことで、
バレー部が練習してる体育館に向かった。
ガラガラっとドアを開けると、
体育館には部員たちがわちゃわちゃしてる声と、
バシッバシッとボールが弾ける音。
その中に、いた。
黒髪、眠そうな目、ダルそうな表情。
でも、ちゃんとレシーブ決めてる。
○○(…やっぱ、上手いんだ)
「……何か用?」
視線を感じたのか、彼がこっちに気づいて歩いてきた。
汗で前髪が少し額に貼りついてて、顔がよく見える。
「この前のお金、返しに来ました」
「……まじで返しに来たんだ。律儀だな」
「人として当たり前です」
「それもそうか」
200円を渡すと、彼はひょいっと受け取って、
ポケットに入れた。
「ってかさ」
「はい?」
「財布なくして、あんだけ堂々と“お金貸してください”って言えるやつ、初めて見たわ」
「……そこしか褒めるとこなかったんですか?」
「いや、わりとおもろかったけど」
「ありがとうございます……?」
なんだろう、この人。
言葉はちょっと引っかかるのに、
なぜか話しててイラっとしない。
というか、話してると妙に落ち着く。
「まあ、また困ったら金貸してやるよ。利子つきで」
「誰が借りますか」
「じゃあ貸さねーわ」
「はい、貸さなくて結構です」
ちょっとだけ、口の端がゆるむ。
先輩のほうも、ほんのすこしだけ、目元が緩んだ気がした。
「名前、○○だったよな?」
「はい」
「変なやつだけど、悪くはない」
「感想のクセ強すぎません?」
「褒めてんだよ」
「…それで褒めてるなら、言い方直した方がいいですよ」
そう言ったら、先輩がふっと笑った。
「ツッコミ、うまいな。なんか気楽に話せる」
え、今なんて言った?
(……気楽に話せる、って)
「じゃあ、またな。次会ったらジュースでも奢って」
「え、そこは先輩が奢る流れじゃ…」
「俺、後輩に奢らせる主義だから」
「最低」
そんな会話を最後に、私は体育館をあとにした。
階段を降りながら、
なぜか顔がちょっと熱い気がした。
○○(……なんでこんなに、顔覚えてんだろ)
あの駅のホームで出会ってから、
急に身近になった気がして、
知らなかった先輩の顔が、
少しずつ増えていく。
○○(まさか、また会いたいって、思うなんて)
最悪な出会いだったのに。
今はもう――
ちょっと、楽しみにしてる自分がいる。
続きどうなると思う⁉️コメントしてね💖💖
コメント
2件
上手すぎ いっそのこと小説家になってもいいと思います