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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第46話 澪視点〚守られている重さに気づく回〛
最近、
胸の奥が静かにざわつく。
理由は、分からない。
怖いことが起きたわけでもないし、
誰かに嫌なことを言われたわけでもない。
ただ——
いつも、海翔がいる。
気づけば。
廊下。
教室。
移動の列。
少し後ろ。
少し横。
視界の端に、
必ず。
(……まただ)
澪は、
立ち止まりそうになる自分を抑えて歩いた。
振り返れば、
きっと目が合う。
それが分かっているから、
振り返らない。
昼休み。
えまと話しながら、
澪は窓際に立っていた。
笑っているはずなのに、
心臓が、少しだけ重い。
(私……守られてる)
それは、
ありがたいことのはずだった。
前は。
怖かった。
不安だった。
一人でいるのが、
嫌だった。
だから、
海翔が近くにいると安心した。
でも今は。
(……なんで、こんなに息が詰まるんだろう)
澪は、
自分の胸に手を当てる。
心臓は、
何も見せない。
ただ、
重い。
放課後。
帰り支度をしていると、
担任と海翔が話しているのが見えた。
遠くて、
声は聞こえない。
でも。
海翔の背中が、
いつもより固い。
(……怒られたのかな)
そう思った瞬間、
胸が、きゅっと縮んだ。
——あ。
その時、
澪は気づいた。
(私)
(この人が怒られるの、嫌なんだ)
それは、
守られている側の感情じゃない。
守らせている側の感情だった。
海翔が戻ってくる。
目が合う。
「……どうした?」
いつも通りの声。
澪は、
首を振った。
「ううん、なんでもない」
嘘。
でも、
言葉にできない。
だって。
「ありがとう」って言えば、
この距離が正しくなる気がして。
「大丈夫」って言えば、
離れてしまいそうで。
どちらも、
怖かった。
帰り道。
並んで歩く。
距離は、
近すぎず、遠すぎず。
でも。
澪は思ってしまう。
(私が不安になるたびに)
(海翔は、
自分を削ってない?)
足音が、
少しずれる。
その瞬間、
胸が痛んだ。
(守られるって)
(こんなに、
重いんだ)
初めて、
そう思った。
でも——
離れたいわけじゃない。
ただ。
(このままじゃ、
いけない気がする)
理由は、
まだ分からない。
澪は、
空を見上げた。
冬の空は、
静かで、冷たい。
答えは、
何も降ってこなかった。
それでも。
心臓だけが、
はっきり言っていた。
——気づいてしまった、と。