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#高校生
第70話 「初戦突破」
2022年8月。
夏の甲子園。
一回戦。
柳城高校―北海学園高校。
朝から甲子園は満員だった。
センバツ王者。
春夏連覇を狙う柳城。
全国の注目が集まっていた。
試合前。
アルプススタンドには柳城の応援団。
そして。
舞の姿もあった。
大学の友人と一緒に駆け付けていた。
「頑張れー!」
試合開始。
北海学園は評判通りの好チームだった。
守備が固い。
ミスをしない。
柳城打線もなかなか得点できない。
三回終了。
0対0。
投手戦だった。
塁も落ち着いていた。
ランナーは出す。
しかし要所を締める。
五回。
試合が動く。
先頭の史陽がヒット。
送りバント。
一死二塁。
打席は佐伯。
センター前へ。
史陽がホームイン。
1対0。
柳城先制。
アルプススタンドが沸く。
しかし。
北海学園も簡単には終わらない。
七回。
二死三塁。
同点のチャンス。
打席は四番。
甲子園全体が静まる。
塁はゆっくり構える。
そして。
渾身のストレート。
空振り三振。
最大のピンチを切り抜けた。
その裏。
柳城は追加点を奪う。
史陽のタイムリー。
さらに犠牲フライ。
3対0。
試合の流れを引き寄せる。
九回。
最後の打者。
ショートゴロ。
史陽が捕る。
一塁へ送球。
アウト。
ゲームセット。
柳城高校3対0北海学園高校。
初戦突破。
選手たちが整列する。
だが。
派手なガッツポーズはない。
まだ一勝。
それだけだった。
試合後。
記者が塁に聞く。
「春夏連覇を意識していますか?」
塁は少し笑う。
どこか兄に似ていた。
「次の試合だけです」
その夜。
宿舎。
夕食後のミーティング。
福間監督が選手たちを見る。
「良い試合でした」
珍しく褒めた。
選手たちも少し笑う。
だが次の言葉は厳しかった。
「しかし」
空気が引き締まる。
「甲子園はここからです」
その通りだった。
初戦を勝ったチームは強くなる。
そして。
次の相手は。
優勝候補の一角。
東北代表。
宮城育英高校。
全国屈指の強豪だった。
塁と史陽は顔を見合わせる。
甲子園は甘くない。
そのことを誰より知っていた。
春夏連覇への道。
その前に立ちはだかる大きな壁。
宮城育英。
運命の一戦が近づいていた。
第70話 終
コメント
1件
第69話、一気に読み終えました!塁の落ち着いたマウンド捌きと、要所を締めるピッチングに胸が熱くなりました。特に七回裏、二死三塁で渾身のストレートで空振り三振を奪う場面は手に汗握りましたね。史陽のタイムリーや初戦突破後の「次の試合だけです」という塁の言葉も、勝ってなお冷静な姿勢が伝わってきてグッときました。福間監督の「甲子園はここからです」──この一言が、次の宮城育英戦への緊張感を高めてくれます。また続きが楽しみです!🌷