テラーノベル
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「だから、いらないって言ってる」
苛立ち混じりに言い捨てても、目の前の男は眉ひとつ動かさなかった。
黒いスーツ。
整いすぎた姿勢。
冷静という言葉を人にしたような顔。
そして――無駄に整った顔面。
……それが余計腹立つ。
「護衛ですので」
低く落ち着いた声。
淡々としていて、感情がまるで見えない。
勝利は思い切り顔をしかめた。
「監視役の間違いでしょ」
「違います」
即答。
しかも間髪入れず。
その反応が気に食わない。
「俺、一人で動けるし」
「ええ。ですが、狙われています」
「……」
そこだけは言い返せなかった。
勝利は裏社会を仕切る組織の後継者。
敵は多い。
嫌になるくらい多い。
けれど――
「だからって、知らない人と四六時中一緒とか無理」
「今日からですので、すぐ慣れます」
「慣れない」
「そうですか」
こいつ、全然焦らない。
どれだけ突っかかっても、感情を乱されない。
それが妙に腹立たしかった。
「……ていうか、名前」
男は少しだけ視線を下げた。
「聡です」
「へぇ」
短い。
愛想もない。
絶対面白くないタイプ。
「聡さん」
わざと嫌味っぽく呼ぶ。
「はい」
「帰って」
「無理です」
即答二回目。
「俺にも拒否権あるでしょ!?」
「ありません」
「最悪……」
聡はため息すらつかなかった。
代わりに、静かに言う。
「あなたは危機感が足りません」
「は?」
「今朝も護衛を撒こうとして裏口へ向かった」
勝利の肩が跳ねた。
「なんで知って――」
「予想です」
「……怖」
「あなたが考えそうなことなので」
完全に見透かされてる。
気に入らない。
めちゃくちゃ気に入らない。
勝利はソファから立ち上がった。
「じゃあ、今から外行く」
「おすすめしません」
「行く」
「南通りは避けてください」
「は?」
「待ち伏せされています」
さらっと言われた言葉に、勝利は固まる。
「……え?」
「三人。恐らく敵組織です」
「なんでそんなこと……」
「監視済みです」
まるで“今日の天気”でも話すような口調。
勝利は一瞬言葉を失った。
でも――すぐ顔を逸らす。
「……脅し?」
「確認しても構いません」
余裕そうな顔。
むかつく。
何もかも見えてます、みたいな態度。
「じゃあ別の道で行くし」
聡は一拍置いてから言った。
「東側にもいます」
「……」
「西側は二人」
「……」
「正面は論外です」
「…………」
逃げ道、全部塞がれてる。
いや、違う。
守られてる。
でもそれを認めるのがなんか悔しい。
勝利は不機嫌そうに舌打ちした。
「……じゃあ今日はやめる」
聡がほんの少しだけ目を細める。
「賢明です」
その瞬間。
――ほんの少しだけ。
口元が、笑った気がした。
「……今笑った?」
「気のせいです」
即答。
絶対笑った。
絶対。
でも、なんだろう。
少しだけ。
ほんの少しだけ――
怖いだけの人じゃないのかもしれない。
そう思った自分が、ちょっと悔しかった。
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コメント
1件
おお、第2話、すごくいい塩梅でしたね!勝利のイライラと聡の完全に余裕な対応の温度差がもう完璧で、読んでてニヤニヤしちゃいました。「脅し?」に対して「確認しても構いません」って返す余裕、かっこよすぎますよ。最後の“口元が笑った気がした”で勝利の認識がちょっと揺れるのもすごく好き。まだまだこれから関係性がどう変わっていくか、すごく気になります!次話も楽しみにしてますね🌷