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銀次「着いた。ここが俺の家から1番近い湯屋『桜町の湯』だ。」
栞「ここが『桜町の湯』。大きいなお風呂屋さんだなぁ」
銀次「入ろう。」
湯屋の中は広く沢山の人が訪れていた。ただ、皆着物を着ている。男性は頭を結ってちょんまげにしており、女性は時代劇でよく見る丸髷だった。
栞「え…?なんで皆時代劇みたいな格好してるんですか??」
銀次「時代劇?何言ってんだ?皆いつもの格好だけど。それ以外にどんな格好があるってんだ笑」
栞「いや、ハハ……。さすがにドッキリでしょ…。だって…そんな事流石に起きない…筈」
血の気が引く感覚がした。現実を受け入れられないまま、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
銀次「お…り……し…栞?!」
栞「?! 銀次さん…私…。」
銀次「何か思い詰めてるんならここの湯に浸かってみるといい。悩み事もその内無くなるさ」
栞「…はい」
もし銀次さんに未来から来たと言えば不審がられてしまう。それが怖くて言えない。
銀次さんとは別れ女湯に入り湯に浸かって考える。
(お母さん、きっと心配してるよね。今頃警察沙汰になってたらどうしよ)
?(どうしたの?)
今にも泣きそうな私に声を掛けてくれたのは私と同い歳くらいの女の子だった。
栞「ちょっと色々あって…」
?「そうなんだ…悩み事解決すると良いね」
女の子とは話していくうちに仲良くなった。名前は佳代と言うらしい。佳代は桜町で営んでいる団子屋の娘でとても元気で気さくな子だった。
佳代「今度うちの団子食べに来なよ!うちの団子は日本一美味いよ! 」
栞「行く!絶対行く!」
湯から上がり佳代と湯屋から出ると入口近くに銀次さんが待っていた。
栞「銀次さん!待たせてすみません」
銀次「いや、俺もさっき出たところだ」
佳代「銀次?え?!銀次もここに来てたの?!」
銀次「佳代じゃねぇか。お前本当ここ好きだよな」
栞「2人はお知り合いなんですか?」
銀次「ああ。俺は佳代の団子屋で働いてるんだ。」
(仕事のことはあまり話さ無いから知らなかったな)
佳代「栞、銀次と知り合いだったの?」
栞「実は色々あって今日家に泊めて貰うことに 」
佳代「そう。また悩み事があったらうちに来な!」
栞「うん!その時は団子も頂くよ」
佳代と離れ銀次さんとしばらく歩いていた。元の時代に戻れる方法が分からない今、私はついに決断する事にした。
栞「あの!銀次さん、私を銀次さんの家に置いて貰えないでしょうか!」
銀次「え?!」
栞「無理なお願いだとは承知してます。けど私に帰る場所なんてないから…家事も全部やります!だからお願いします!!」
銀次「お前分かって言ってんのか?男1人の家に女が住むことの重大さが!」
確かに普通に考えたら危ないことの様に思えるが今の私の状況は普通じゃない。今後のことを考えたらこうするしかなかった。
銀次「分かった」
私の熱量に負けたのか銀次さんはため息をついて了承してくれた。
銀次「ただ、家事は2人でやる。いいな?」
栞「はい!」
空には満天の星と満月が出ており家に着くまでの夜風がとても気持ちよかった。