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ようやく、プレートが出来上がったと連絡がきた。


すぐにガブリエルと共に、宮殿へ向かう。

ここに来るのは二度目だが、一度目は転移させられたりカリーヌを助けたりで、周りを見る余裕はなかった。

その為、宮殿の中の何処を歩いているのかさっぱり分からない。


普通は、申請が通ると各地にある教会で、国から届いたプレートに登録し授与を行うそうだ。

この国の全ての貴族や、魔力持ちの人間の登録を宮廷だけで行っていたら、宮殿はごった返してしまう。王族が住まう場所がそんなでは、大変な事態になるかもしれない。

だから、代わりに教会の司祭が行うのだ。


それならば、なぜ沙織たちはは宮殿にやって来たのか。


それは、地位が高く政治的にもやり手であるガブリエルが、養子縁組を行った……。それが、国王の興味を引いてしまった。ただ、それだけ。


そもそもガブリエルには、カリーヌとミシェルという、立派な娘と息子がいる。保留になってはいるが、カリーヌは王太子の婚約者だ。――そのカリーヌと同じ年の養女を取る。


公爵家にとって、その養女は価値のある人間ではないか……そう、勘繰られるのも至極当然なことかもしれない。

だからこそ、わざわざ国王自ら、直接プレート授与を行うと言い出したのだ。


(はぁ、なんて迷惑な……。確か、あの断罪現場に、居たよね……王様)


念のため、今日はステラに頼んで、見事なご令嬢風に仕上げてもらっている。白を基調としたドレスみたいなワンピース姿だ。

スカート部分はレースを沢山重ね、甘さもありつつ、エレガントな雰囲気。ウエスト部分はしっかり絞られており、ウエストを更に細く強調してくれている。


(そう……あの、ずんぐり黒尽くめとは真逆の格好)


宮殿内をだいぶ歩き、謁見の間に到着した。


国王に向かって、練習した通りのカーテシーと挨拶を行う。

ボロが出ては困るので、国王がガブリエルと話すのを聞きつつ、その隣でただニコニコして時が過ぎるのを待った。


そして、いよいよプレート登録を行う。


ドキドキしながら魔石で出来たプレートに触れる。

名刺サイズのカードはピカッと光り、シルバーの面には文字が次々と浮かび上がる。


(……へぇ、面白い! んん? 何……これ?)


【性別…女】【年齢…17】【属性…水・風・光】

【魔力量…※※※】【レベル…※※※】


性別、年齢、属性は三種類と判明した。


(だけど、魔力量とレベルの※印はいったい……)


理解出来ずに、最後の天職を見る。


【天職…光の乙女】


「……え……!?」


思わず声が出てしまった。慌てて口を押さえたが、国王とガブリエルに気づかれてしまう。


「ん? どうした、サオリ。プレートを見せてみなさい」


プレートを見た国王とガブリエルは瞠目した。


「ど、どういうことでしょう? ……その、※印と天職は……」


固唾を呑んで、返答を待つ。国王と目配せをしたガブリエルが説明してくれた。


「先ずは、属性に光が入っていること自体が珍しい。魔力量とレベルに関しては測定不能という事だ。そして、問題はその天職だ。それは、数十年……いや、百年に一人でるか出ないかの稀有なものだ」


「では、プレートの不具合……とか? 光の乙女って……例のスフィア男爵令嬢ではないのですか?」


「ああ、あの犯罪を犯した女か。あれは、属性に光はあったが魔力量もレベルも低く、天職は治癒師だ」


(――何、何、何? スフィアは光の乙女ではない!? じゃあ、ヒロインではなかったという事なの?)


つまり、スフィアはただの玉の輿狙い……。公爵令嬢を陥れて、その地位につきたくて犯罪紛いの画策しただけの男爵令嬢。


(ちょっと待って! そうなると、本当は優しい悪役令嬢の、カリーヌの死亡フラグ立てちゃうヒロインて……もしかして、私!? マジかあぁ。どうしよう……ヒロインなんて嫌な予感しかしないっ)


頭の中がパニックでグルグルしている。青くなった沙織を横目に、ガブリエルが追い討ちをかけた。


「魔石で出来ているプレートに、不具合は有り得ない。サオリ、魔力もレベルも規格外に多いということだよ。これは……喜ぶべき事だ」


(いや、そっちはどうでも良いんですよっ!)


問題は、天職だ。

もしも、ヒロインなら――。絶対に、カリーヌに不利になるフラグを、立てないようにしなきゃいけない。


「――サオリよ」


唐突に国王が名前を呼んだ。


「は、はいっ」


「……光の乙女である、其方に頼みがある」


(え?)


「どうか……息子を助けてほしい」


「陛下っ! それは……」慌ててガブリエルが口を挟むが、国王は首を横に振り、ガブリエルを制し黙らせた。


「息子って……アレクサンドル王太子殿下ですか?」


「いいや。もう一人、私には息子がいる」


(は? ……もう、何が何やらサッパリだよ)


「アレクサンドルの上に、もう一人王子が居たのだ。ただ――生まれてすぐに、ある呪いを受け、20歳まで生きることが出来ない。せめて、それまでは王家の柵に囚われず、自由にさせてやりたくてな。信頼のおける者に、養子に出したのだ」


「……呪い?」


「そうだ。光の乙女なら、その呪いが解ける筈なのだ。息子が助かる方法は……呪術者を殺すか、その呪いを発動させた祭壇を壊すか。――その、どちらかしかない」


(……だあぁぁ! 何かのイベントが始まっちゃったよぉ!! は? 殺す? ただのJKに、なに物騒な事頼むんだよぉ! それじゃ、祭壇破壊の一択しか無理でしょう!)


血の気の引いた私の肩を、心配そうにガブリエルが寄せた。


「陛下……それは、サオリには荷が重過ぎます。サオリはもう私の娘です」

「我とて……解っておる」


ガブリエルは、沙織を守ろうとしてくれる。

でも、国王へ逆らえば、アーレンハイム公爵家が大変な事になるかもしれない。


(公爵家に迷惑をかけるのは避けたい……)


どうせ始まってしまったイベントだ。クリアするしか道はない。


「……でも。それをしないと王子殿下が死んでしまうのですよね? 人を殺すのは私には無理ですが、祭壇を……壊すだけなら」


目を見開くガブリエル。


「やってくれるのかっ!!」と、国王は喜びを見せる。


「……はい。そのかわり、少し時間を下さい。学園で魔力の扱い方を学ばないと、私には使いこなせません」


そう言って、ガブリエルに頷いて見せた。


(イベント参戦は、カリーヌを陥れようとした人間を全て炙り出した後だ)


「その辺は、其方に任せる。息子の猶予は一年と半年だ」

「はい。それで……その、王子殿下はどちらに?」


「ああ、そうだった! 本人も知らぬ事ゆえ、秘密裏に動いてほしい」


――そして、その王子の名前を聞いた。

悪役令嬢は良い人でした

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