〜side叶〜
朝になる
スマホを開き、時間をもう一度見る
確かに朝にはなっている
だが夜が明けてない
暗闇に赤く登る月
隣でロウが動き出す
「おはよう。身体大丈夫そう?」
「叶さん‥‥おはようございます。大丈夫です、行けます」
「行けますって‥‥どこに?」
「仕事だけど‥‥」
やっぱり仕事に行こうとしてる
僕的には家から出したくない
もしまた身体に変化が出たりしたら大変だし、今日は僕も市のお偉い方達と話し合いがある
目の前では仕事に行く準備を着々と進めているロウが僕を見てる
「ローレンさん達の迷惑にならないように無理はしないから‥‥行っても良いでしょ?」
耳がしょげてる
その表現方法はズルすぎだ
「僕も会議終わったらすぐ署に顔出すから。何かあったらすぐ連絡してね」
「はい!分かってます」
尻尾を振りながら準備の続きを始める
別に耳や尻尾なんかなくたってロウの事はわかってるつもりだけど、ついつい可愛くて目で追ってしまう
ロウを署まで車で送ると市役所に向かった
会議を終わらせて市長に頼み、この件が収束するまで警察業務を手伝える事になった
署に着くとローレンが市長から連絡もらってると僕の机と書類が用意されていた
ローレンの部屋からぴょこっとロウが顔を出す
まだ外には行っていないようで安心した
他の署員の目に触れないようにローレンと仕事を部屋で一緒にしていたみたい
署員の中には家族のために家を出れない者
そもそもグロいものが苦手で出てこれない者
様々な理由で来れない者もいた
自分の命と大切な人の命が優先だとローレンが決め、大体3分の1くらいは出社していない
今日は僕の黒い大きめのパーカーを被り、耳と尻尾を誤魔化している
僕と一緒に街の厄介者を退治しに行くと言うので、装備をして車に乗り込む
「もう車のエンジン音に集まってる。どう?撃てそう?」
「はい、行けます」
少しスピードを緩めて獲物を集める
街の中に行けば行くほどよく集まって来る
素早く車を降り、片側に集めたゾンビ達を一掃する
その音にまたポツリポツリとこちら側に歩いて来るゾンビ達
「ドラマみたい‥‥けど、キリが無さすぎる」
ロウが銃の弾を装填して構える
何だか今日のロウは命中率が高い
「すごいね、向こうまでよく倒してる」
「何だかどこにいるか分かるんです。耳が良いみたいで‥‥」
「あぁ、なるほどね」
その耳だと周りの音を良く拾えるのか
それでもここにずっといては弾切れになってしまう
素早く後ろから来たものを撃ち返し、ロウへ車に乗るように指示を出した
返事が無い
慌てて助手席側に回り込む
「うっ‥‥げほっ‥‥」
「ロウ?どうした⁈」
「‥‥すいませんっ」
「車に乗ろう 」
ドアを開け、ロウを乗せる
そのまま急いで発進した
「大丈夫か?水飲んで」
「‥‥はい」
ペットボトルの水を飲み干し、呼吸を整えている
「なんか‥‥腐った匂いと生臭い臭いが鼻に付いて離れないみたいで‥‥」
「嗅覚も鋭くなってるのかもね」
「‥‥多分」
「一度署に戻って休もう」
「‥‥すいません」
「謝ることじゃ無いよ?弾の補充もしなきゃもう無いしさ」
署に戻り、ロウを無理矢理ベッドに寝かせる
「その間にローレンと話して来るよ。戻って来るまで寝てるんだよ!」
「‥‥はい」
きっとロウは長くは休んでいられない
僕は急いで用事を済ませて休憩室へ向かう
ほら‥‥
もう起きてなにかしてる
「まったく‥‥休めって言ってるのに」
「だって、こうしてる間にも家で困ってる市民の人たちがいるかもしれないし‥‥‥俺達がパトロールして歩いてたら、みんなも安心すると思うし‥‥」
青ざめた顔のロウの頬をそっと撫でる
「‥‥クゥーン‥‥」
不安気に鳴いているようで、そのままロウを抱き寄せた
この『世界統合』はいつまで続くんだ
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コメント
4件
作者様の作品がどれも魅力的で…通知が来る度にテンションが上がります(*^^*) 楽しみを作って頂きありがとうございます! ご無理なさらず(*^^*)
話のオチが見たい私とまだこのこやさん達を見てたい私が葛藤してますww 続きのお話待ってます!